サイト科院

ヘッダーイラスト

 

  1. ホーム  >
  2. 病理学  >
  3. 病気の原因(内因)

1.病気の原因

疾病の発生原因は大きく、内因と外因に分けて、説明されます。
内因とは遺伝、免疫、素因、精神活動といった固体内の異常が病因となるもの。
外因は病原微生物とか放射線、化学物質や環境から与えられる因子が病因となるものです。

内因・外因がおのおのの単独で病因になる場合と、内因と外因の組み合わせて疾病が発生する場合があります。多くは両者の組み合わせとしたほうがわかりやすい。

例えば、肺炎の場合、細菌の肺へのたんなる感染というより、全身の免疫能を含む抵抗力の減弱状態(内因)を基盤として、細菌(外因)が感染し成立したと考えるというものです。


2.内因

素因と体質

素因とは、あらかじめ疾病になりやすい内的状態をいいます。言い換えれば、抵抗力の減弱した状態ともいえます。素因は一般的素因と個人的素因に分けられます。

  • 一般的素因:年齢、性、人種、臓器など
  • 個人的素因:体質

  1. 年齢
      ある年齢層に罹患しやすい、またはある年齢層にしかみられない疾患があります。
    1. 周産期(妊娠22週~生後7日まで)、新生児(生後4週まで):
      妊娠異常(未熟児、巨大児など)や分娩損傷(頭蓋内出血、低酸素症など)によるもの、また呼吸障害(羊水吸引症候群、肺硝子膜症)や奇形が特徴的。
    2. 乳児期小児期:麻疹や水痘などの感染症が多い。先天性代謝異常症の発症も多くみられます。小児悪性腫瘍としては白血病などのほか、特有なものとして腎芽腫、肝芽腫、神経芽細胞腫などがあります。
    3. 成長期:腫瘍では骨関連の腫瘍(骨肉腫)などが多い。
    4. 壮年期:壮年期以降は生活習慣病(高血圧、動脈硬化症、糖尿病、癌など)が増加します。

  2. 男女間で疾患の頻度が異なるものが多い。これはホルモンの差、生活習慣(食事、アルコールなど)の違いによります。動脈硬化や高血圧は一般に男性のほうが多く、心筋梗塞、脳軟化症も男性に多い。癌では胃癌、肺癌、食道癌、肝癌など頻度の高い癌の多くは男性に多い。女性に多い癌としては、甲状腺癌や胆嚢癌が知られています。当然ながら子宮癌や乳癌は女性の癌です。自己免疫疾患〔全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群など〕は女性に多い。そのほか女性に多いものとしては、胆石症、鉄欠乏性貧血、骨粗鬆症などがあります。


  3. 人種

    疾病の地理的分布、発生頻度、死亡率などを検討し、病因を明らかにしていく研究を地理病理学とよびます。地域には近似した遺伝的背景を有する民族(人種)がおり、気候風土や生活様式を同じくしています。こうしたなかで疾患とその様相には共通したものがみられます。また医療水準といったものも影響を与えています。

    たとえば、開発途上国ではいまなお感染症の発生とそのための死亡率が高い。一方、日本や欧米といった医療先進国では、動脈硬化を背景とする心血管障害や悪性腫瘍の頻度が高い。心疾患障害を例にとれば、欧米では食生活の影響で心筋梗塞や脳梗塞が多いのに対して、日本では高血圧による脳出血が多かった。しかし近年欧米型になりつつあります。悪性腫瘍は、日本では胃が癌と子宮癌が多いが、欧米では大腸癌と乳癌が多い。


  4. 臓器

    臓器によって罹患する疾患が異なります。たとえば、同じ消化器の実質臓器である肝と膵では、炎症の実態はまったく異なります。肝の炎症はその多くは肝炎ウイルスが原因であり、肝炎ウイルスに感染すると病変は肝に生じますが、膵はおかされません。また経口感染する赤痢菌は大腸に病変(大腸炎)をつくりますが、小腸はおかされません。これらの差異は、病原体の臓器に対する親和性の違いが関与します。


  5. 体質

    人の形質の表現で、遺伝の影響を強く受けています。さらに環境によって受けた修飾を含み、形態のみならず生理学的、精神的機能に及びます。


遺伝

わたしたちがもっている身体的特徴および精神的特徴(形質とよばれる)は、両親から伝わったものです。すなわち、両親より引き継いだ遺伝子の発現によります。もし生殖細胞の遺伝子に優性の異常があれば、発現する形質は異常となります。異常な遺伝子は、家計内で過去の世代から受け継がれたものもあれば、生殖細胞のなかの突然変異によりはじめて出現したものもあります。また、遺伝子の存在している染色体に異常があれば同様な結果となります。遺伝子の異常あるいは染色体の異常のいずれの場合にも、それが次の世代へと引き継がれていきます。親から子へ引き継がれる場合もありますが、数世代を超えて出現することもあります。

体質または疾病になりやすい素因といったものも遺伝の影響が大きい。家計内に多発することをもって遺伝性疾患といわれていたものは、遺伝子の異常と染色体の異常に分けて考えます。


内分泌障害

内分泌系は、ホルモンとよばれる活性物質を細胞内で産生し、それを血中に放出して標的細胞や組織に作用し生体の機能を調節し、生体恒常性(ホメオスタシス)を維持するのに重要な役割を果たしています。内分泌臓器としては下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵〔膵島(ランゲルハンス、Langerhans島)〕、腎(傍糸球体装置)、卵巣(顆粒膜細胞、黄体細胞)、睾丸〔間細胞(ライディッヒ、Leydig細胞)〕、また消化管の神経内分泌などが知られています。さらに近年、心臓(心房性ナトリウム利尿ポリペプチド:ANP)が発見されました。

ホルモン分泌細胞の過形成や腫瘍によるホルモン過剰分泌による機能亢進と、逆に内分泌臓器の病変による機能低下はさまざまな病態、疾病を示します。


免疫

わたしたちは、免疫系によって種々の感染から守られています。生まれながらにして免疫不全(原発性免疫不全)の子どもや、ウイルス感染によってある種のリンパ球が破壊される後天性免疫不全症候群(エイズ:AIDS)の患者は、さまざまな病原体(ウイルス、細菌、カビ)に容易に感染してしまいます。

免疫学の研究は、ある種の感染症に罹患した人はその疾病に対して免疫ができます。すなわち、二度と同じ疾病にかからないといった経験から始まりました。はしか(麻疹)に一度かかった人は、はしかウイルスに抵抗力ができますが、他のウイルスには抵抗力はありません。このように免疫反応(応答)に特異性があるのも一つの特徴です。免疫反応は、侵入した病原体、あるいはそれが産生する毒物を破壊、除去することから始まります。この反応は、自己(self)の蛋白には反応せず、非自己(not self)に対してのみ起こります。免疫反応を誘発する物質を抗原(アレルゲン)とよびます。免疫系は、きわめて類似した抗原をも区別することができます。この自己と非自己との識別、これがもう一つの免疫反応の特徴です。

免疫反応は

  1. 液性免疫反応
  2. 細胞性免疫反応
に大別されます。
液性免疫反応は、B細胞の分化した形質細胞が産生する免疫グロブリン(抗体)という蛋白の反応です。免疫グロブリンは血中を循環し、その抗体を誘導した非自己抗原と特異的に結合します。

細胞性免疫反応は、非自己抗原を認識する特殊な細胞を生み出し、直接抗原を攻撃、排除します。免疫反応は感染防御、がん細胞に対する攻撃、炎症修復といった生体に有利な作用のみならず、アレルギー反応や移植の場合の拒絶反応といった生体に不利な作用にも関与しています。

内分泌異常症
臓器 ホルモン 機能 病名 症状など
下垂体 前葉 成長ホルモン(GH) 亢進 巨人症(成長期)
末端肥大症(成人)
指趾、頭蓋、下顎などの過形成
低下 成長ホルモン分泌不全性低身長症(下垂体性低身長症) 発育不全
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) 亢進 クッシング症候群
後葉 抗利尿ホルモン(ADH) 低下 尿崩症 多尿
甲状腺 甲状腺ホルモン
(サイロキシン)
亢進 バセドウ病
(クレーブス病)
心悸亢進、眼球突出、発汗亢進
低下 クレチン病 粘液水腫、活動低下
副甲状腺 副甲状腺ホルモン(PTH) 亢進 副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症、結石症、病的骨折
副腎皮質 アルドステロン 亢進 コーン症候群 筋力減退、高血圧、多尿、低カリウム血症
コルチゾン 亢進 クッシング症候群 満月様顔貌、高血圧、多毛
低下 アジソン病 色素沈着、脱力、傾眠、低血圧、性機能低下
副腎髄質 カテコールアミン 亢進 褐色細胞腫 高血圧
膵島 インスリン 低下 I型糖尿病 高血糖、糖尿、網膜症、腎障害

ストレス病

1)ストレスの定義

ストレス(stress)とは、本来は外力によって物体に生じる歪み(ひずみ)を意味する工学用語です。医学的には、外から刺激を加えられたときに生体に生じる反応(歪み)をストレスとよび、外からの刺激をストレッサーといいます。ストレッサーには物理的、化学的、生物学的、精神的なものがあり、試験、失恋、離婚、恐怖などは精神的かつ心理的なストレッサーです。外因として同じストレスを受けても、その人の素因や体質、あるいは調節(セルフコントロール)の状態によって、受けとめ方が変わります。外因と内因の相互作用が問題となります。


2)ストレスによる疾病

ストレスに対して人は対応(抵抗)しストレスを克服しますが、過度のストレスには対応できず、生体の恒常性がくずれ疾病に陥ります。これを一般的に心身症とよびます。代表的なものにストレス潰瘍があり、試験など過度のストレスにより胃や十二指腸に潰瘍ができ、腹痛や下血を生じます。ほかに過呼吸症候群、過敏性大腸症候群、インポテンス、頻尿、掻痒症などがあげられます。


3)心身症の学説

ストレスにおける心と身体の関係を説明する学説として、セリエ(Selye)のストレス学説と、キャノン(Cannon)の自律神経ー内分泌学説がよく知られています。

  1. ストレス学説:細菌感染、熱傷、寒冷、精神的緊張、手術などといったストレッサーに対して、下垂体前葉よりACTHが分泌され、その結果、副腎皮質よりステロイドホルモンが分泌され、さまざまな生体反応が起こります。全身適応症候群(general adaptation syndrome)とよばれ、ストレスに対応した生体反応と解釈されます。
    反応は第1期(警告反応期)、第2期(抵抗期)、第3期(疲憊期)に分けられます。

    • 第1期:ストレス作用に突然さらされ障害の徴候が現れ、それに対して積極的に防衛本能をたかめようとする時期で、最初の反応である血圧低下、体温低下、血糖値の低下などがステロイドホルモンの作用により改善されます。
    • 第2期:抵抗力がもっとも強化され安定した状態です。
    • 第3期:ストレスが持続すると適応反応が維持できなくなり、疲憊期となります。ここで身体の適応ができなくなり、疾病に陥ると考えられます。

  2. 自律神経ー内分泌学説:心理的ストレスが交感神経を介して緊急反応(emergency reaction)を呈し、自律神経-内分泌系のバランスがくずれて、心身症が起こります。すなわち、個体は内部環境の恒常性(ホメオスタシス)を保とうとしますが、その能力を超えるほど負担がかかりホメオスタシスが破綻すると、自律神経-内分泌系のバランスがくずれて心身症となります。