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  3. 代謝障害(退行性病変)

代謝障害(退行性病変)の定義

退行性病変(代謝障害)は、細胞、組織が種々の内因や外因より障害を受け、機能の失調や形態の変化をきたし、縮小、死へと進む病変です。
退行性病変(代謝障害)には、萎縮変性壊死といったものが含まれます。


萎縮

正常に発育した組織や臓器がなんらかの原因で小さくなることを萎縮(artophy)といいます。一方、臓器の発育に障害があり、所定の大きさに達していない状態を低形成(hypo-plasia)あるいは形成不全、分化・発育がないと無形成と呼びます。萎縮は老化でも起こるし、血流の減少によっても臓器は縮小します。

萎縮は、

  1. 構成する細胞の数の減少
  2. 構成する細胞の大きさが小さくなる
もしくは、その両方によって生じます。機能の低下や栄養供給が減少して細胞の同化作用が低下したとき、組織細胞は縮小して萎縮が生じます。また消耗性色素沈着を認める場合が少なくありません。代表的なものは黄褐色のリポフスチン(過酸化脂肪)の沈着です。心筋細胞、肝細胞、骨格筋などによくみられます。


萎縮の種類

  1. 生理的萎縮

    老人では身長の減少をはじめ、脳、心、肝、皮膚などが縮小し、老人性萎縮と呼ばれます。活動の低下とともに動脈硬化により血液供給が不十分となることが原因と考えられます。脳では重量が減少し、脳回は狭くなり脳溝は深くなります。心臓は重量が減少し、心筋細胞は細くなり、消耗色素であるリポフスチンが沈着します。肝臓も重量が減少、肝細胞にリポフスチンが沈着します。
    胸腺の大きさは、思春期に最大となり、加齢とともにしだいに萎縮して、老人では脂肪組織に置き換わります。これを退縮(involution)とよびますが、生理的萎縮の一種です。

  2. 貧血性萎縮

    動脈硬化症などによって、局所の循環障害が生じ、酸素・栄養不足によって代謝障害が起こり、細胞の大きさや数の減少が起こります。代表的な例が腎で、腎内の大小の動脈の硬化症により、動脈硬化性萎縮腎となります。
    圧迫性萎縮:臓器、組織の持続的な圧迫により、組織の機能が抑圧されたり、組織内の血管が圧迫されて循環障害をきたし萎縮を生じます。例として水腎症があげられます。尿管に結石や腫瘍があるとき、尿管は閉塞し尿は腎盂にうっ滞します。腎盂は著しく拡張し、そのため腎実質組織(ネフロン)は圧迫され、萎縮し、最終的には紙のようにひ薄化します。ほかに、腫瘍や動脈瘤などの圧迫による臓器萎縮があります。

  3. 廃用性萎縮

    臓器・組織が機能を果たせないために生じる萎縮で、無為性萎縮とも呼びます。長期間のギプス固定では使用しない運動筋は萎縮します。寝たきりの生活では、下肢が萎縮します。神経に障害があると支配している臓器・組織に萎縮が生じ、神経性萎縮といいます。内分泌の影響を大きく受けている臓器では内分泌機能が低下した場合、萎縮が生じ、内分泌性萎縮とよばれます。閉経後の女性の乳房、子宮、卵巣の萎縮、老人男性の精巣の萎縮はこれにあたります。

変性

変性の定義

細胞が外からの障害により、あるいは内的代謝の異常の結果、細胞内にある種の物質が過剰に増加したり、異常な物質が沈着したりして、細胞が正常と異なる形態を示すようになることを変性(degeneration)といいます。


変性の分類

1.蛋白質変性(protein degeneration

  1. 顆粒変性
    ●混濁腫脹(cloudy swelling)
    感染や中毒の際に臓器は腫脹します。実質臓器にみられ、臓器は腫脹し、割面は膨隆、混濁した灰白質を呈します。水腫様変性を伴うことが多い。急激な酸素欠乏など細胞呼吸の障害が関係すると考えられ、肝、腎、心などエネルギー代謝が活発な臓器にみられます。

    ●硝子滴変性(hyalin droplet degeneration
    細胞質内に大きな蛋白顆粒(硝子滴)が出現する変化です(例;脱水症などで高蛋白血症になったとき腎尿細管上皮、とくに近位尿細管にみられます)。また水銀中毒やネフローゼ症候群など顕著な蛋白尿を伴う腎疾患でもみられます。

  2. 空砲変性または水腫変性vacuolar or hydropic degenration
      細胞は水っぽく腫脹します。電解質平衡の破綻によります。過剰な水分の細胞内流入によると考えられています(例:高長の糖液を多量に輸液した場合、腎の近位尿細管上皮にみられるものがよく知られており、浸透圧性ネフローゼとよばれます)。

  3. 粘液変性mucoid degeneration
      粘液を産生する癌細胞が過剰に粘液を産生し、細胞が印環細胞癌の形態を示したり、細胞外に貯留したりします。

  4. 硝子〔様〕変性hyalin degeneration
      陳旧化した線維化組織(瘢痕)に代表される変化で、HE染色では強い好酸性に染まり、均質無構造にみえます(例:瘢痕組織、古くなった結核結節。また高血圧症での小動脈壁、多産後の子宮動脈にもしばしば硝子化が起きます)。

  5. アミロイド変性(類でんぷん変性、amyloidosis
      アミロイド蛋白が血管、組織の細胞間隙に沈着した状態をアミロイド症(amyloi-dosis)と呼びます。HE染色では、アミロイドは好酸性(淡紅色)に染まり、硝子様無構造にみえ、組織化学的にはコンゴ―(Congo)赤染色で赤橙色に染まり、偏光顕微鏡では緑色の重屈折性を示します。アミロイド症は次のように分類されます。

    ●全身性
    原発性:
    明らかな基礎疾患がないもので、遺伝性、家族性が示唆されています。

    続発性:
    慢性関節リウマチ、結核など慢性感染症、癌などに続発するもの。

    多発性骨髄腫によるもの
    好発部位は、心、肺、消化管、肝、腎、脾、甲状腺、舌などで、とくに小動脈や毛細血管壁に沈着しやすい。脾ではリンパ濾胞に沈着して、割面の印象からサゴ脾(sagospleen)とよばれ、高度になると広範に沈着しベーコン脾(bacon spleen)といわれます。高度の沈着により実質細胞は委縮し、さらに血管壁への沈着により循環障害が生じ、臓器機能が障害されます。

    ●局所性
      限局してアミロイド沈着が起こるもので、ときに腫瘤状となります。


  6. フィブリノイド変性(類線維素性変性、fibrinoid degeneration
    フィブリノイド壊死ともよばれ、通常、血管壁に生じます。HE染色では血管壁は膨化し好酸性にべったり染まり、内膜、中膜の区別はみえなくなります。
      (例)
    1. 高血圧とくに悪性高血圧症の場合、急激な血圧の上昇により血漿成分が血管壁へ侵入し、そのために血管壁が壊死に陥ります。
    2. 膠原病(結節性多発動脈炎:PN, 全身性エリテマトーデス:SLE)や自己免疫疾患において、血管壁が免疫的反応の場となり、血管壁にフィブリノイド変性が生じます。

2.脂肪変性(fatty degeneration
  脂肪変態fatty metamorphosis)ともよばれます。細胞内に脂質が過剰に沈着した状態で、酸素欠乏、また栄養障害などが原因とされます。肝臓はもっとも容易に脂肪変性に陥る臓器で、フランス料理のフォアグラは鵞鳥に過食により脂肪肝を発生させたものです。四塩化炭素アルコール薬物中毒など、あるいは肥満に伴ってみられます。ほかに心筋細胞、腎尿細管上皮など代謝の活発な細胞、組織にもみられます。

3.糖原変性(glyogen degeneration
  細胞の核や細胞質に糖原(グリコーゲン)沈着がみられ、変性を示します。先天性に糖代謝に異常がある場合(糖原蓄積病glycogen degeneration)と、グリコーゲンの中間代謝系に異常があるため増加する場合とがあります。肝細胞や腎尿細管によくみられます。核内糖原は糖尿病、結核、肝硬変のような消耗性疾患に認めらますが、病的意義はありません。

4.石灰化(calcification
  副甲状腺機能亢進、ビタミンD過剰症などで高カルシウム血症によって、肺胞壁、腎尿細管、胃粘膜などに石灰沈着が起こります。


代謝障害と疾病

  1. 尿酸代謝異常
    痛風gout
    通風は、核酸に由来するプリン体の最終産物である尿酸の蓄積により高尿酸血症をきたし、尿酸が指趾、膝関節などの関節周囲に沈着し、有痛性の結節(痛風結節)を形成する疾患です。成年男子、肥満体に多いとされ、腎障害を併発します。

  2. カルシウム代謝異常
    管腔臓器内で、種々の条件下に結石が形成されることがあり、場所により胆石、尿路結石、唾石、膵石、糞石、前立腺石などとよばれます。

    1.胆石症cholelithisasi
    胆石は胆嚢、胆道および肝臓内胆管にみられます。胆石の存在により、胆道炎胆嚢炎といった炎症が起こりやすい。また胆道が胆石で閉塞すると胆汁がうっ滞して閉塞性黄疸が生じます。また胆石症、とくに肝内胆石症では高頻度に肝内胆管癌の発生が知られています。

    1.胆石の分類:
    胆汁はコレステロール、リン脂質、抱合ビリルビン、胆汁塩などにより構成されます。
    コレステロール石:白色で、硬さは、非常に硬いものから、もろいものまであります。
    色素石:黒色ないし褐色の石でもろい。砂状のものは担砂とよばれます。
    ●混合石:コレステロール、ビリルビンやカルシウムよりなります。

    2.胆石の原因:
    胆汁成分の変化、すなわち胆汁中のコレステロールの増加や、溶血性疾患などでビリルビンの増加がある場合と、胆管・胆嚢病変では細菌感染があると胆石形成に影響するとされています。

    2.尿路結石症urolithiasis
      尿路結石は場所により、腎盂結石、尿管結石、膀胱結石とよばれます。尿路結石が尿道に嵌頓(かんとん)すると、激痛があり血尿をみることがあります。尿道が結石で閉塞すると尿がうっ滞し、腎盂が拡張し、最終的には水腎症となり腎機能が廃絶します。

    尿路結石の分類
    1.尿酸結石:尿の酸度が高いときにできます。
    2.シュウ酸塩結石:尿が中性または弱酸性のときにできます。
    3.リン酸塩結石:アルカリ性のときにできます。
  3. 胆石・尿路結石のイラスト

  4. 色素代謝異常
    人体内色素には、内因性色素と外因性色素があります。内因性色素にはリポフスチン、メラニン、ヘモジデリン、胆汁色素など、外因性色素には刺青(いれずみ)、炭粉などがあります。

    1.リポフスチンlipofuscin
      リポフスチンは細胞内核周囲にみられる黄褐色の顆粒です。消耗性色素として知られ、消耗性疾患患者や老人の萎縮した心筋細胞肝細胞によくみられます。萎縮に伴うことが多く、リポフスチンが高度に沈着すると臓器は褐色が強くなり、褐色萎縮brown atrophy)とよばれます。不飽和脂肪の酸化による過酸化脂質に由来します。

    2.メラニンmelanin
    メラニンはメラニン細胞によって産生されます。皮膚ではメラニン細胞は表皮基底層に存在します。乳頭や外陰部はメラニンが多い。また毛髪、網膜や大脳黒質にも存在します。色素性母斑および悪性黒色腫のような腫瘍性病変でもメラニン産生は認められますメラニン産生障害として、白皮症〔白子(albinism)〕があります。
    メラニンは、チロシンよりドーパを経て形成されます。メラノゾーマで形成されたメラニンが光顕的に茶褐色の顆粒として認められます。メラニン産生は、下垂体前葉細胞より分泌されるMSHmelanocyte stimulating hormone)に抑制されています。
    蒙古斑とは、乳幼児の仙骨部皮膚にメラニンが沈着するもので、東洋人に特有なものです。

  5. 鉄代謝異常
    鉄(Fe)は小腸より吸収され、アポフェリチン(apoferritin)と結合してフェリチン(fer-ritin)となります。全身のFeの70%はヘモジデリンのなかに、3%はミオグロブリンに含まれ、残りはフェリチンまたヘモジデリン(血鉄素、)として組織にたくわえられています。
    赤血球が破壊されるとヘモグロビンが遊離し、蛋白とアポヘリチンが結合して複合体であるヘモジデリンとなります。ヘモジデリンは、溶血後1日ででき、出血後4日たつと組織内に確認できます。ヘモジデリンは肝、脾、骨髄などに沈着します。

    体内にヘモジデリンが沈着する原因として、
    1. 鉄吸収の亢進
    2. 赤血球の溶血(破壊)
    の亢進があり、後者は溶血性貧血や輸血後の溶血で生じます。

    1.ヘモジデローシスは、ヘモジデリンの局所あるいは全身の沈着です。全身性のヘモジデローシスは赤血球の溶血の亢進によりみられ、ヘモジデリンは主として細網内皮系(肝、脾、リンパ節)に、また皮膚、膵、腎などにも沈着します。
    局所のヘモジデローシスとしては、出血部が代表的です。またうっ血性心不全で肺に慢性のうっ血があった場合、ヘモジデリンを貪食したマクロファージ〔心不全細胞(heart fail-ure cell)〕が肺胞内に多数みられます。

    2.ヘモクロマトーシスhemochromatosis
    鉄代謝障害によるまれな疾患です。家族性にみられることが多く、男性がほとんどです。全身性の高度のヘモジデローシスは特徴とし、肝は高度のヘモジデリン沈着により線維化を呈し、肝硬変へと進行します。皮膚は青銅色となり、膵には高度のヘモジデローシスが腺房細胞、間質のみならずランゲルハンス島内にも認められ、糖尿病が併発します。青銅糖尿病bronze diabetes)は、本疾患の別名です。

  6. 胆汁色素代謝異常:黄疸(jaundice,icterus
    ヘモグロビンの代謝産物に鉄を含まないビリルビン(胆汁色素)があります。成人では1日250~300㎎がつくられます。肝に運ばれたビリルビンは、肝細胞内でグルクロン酸と結合(グルクロン酸抱合)します。抱合により水溶性となったビリルビンは胆汁として胆管へ排出されます。ビリルビンは腸内細菌の働きによって、色素のないウロビリノーゲンに還元されます。さらに酸化されてウロビリンとステコルビンという褐色の色素となり、糞便の色の主体となります。抱合型のビリルビンは直接ジアゾ反応を呈するので直接ビリルビンとよばれ、非抱合型のビリルビンはアルコール処理で反応を呈し、間接ビリルビンと呼ばれます。
    黄疸は、種々の原因で血中のビリルビンが2~2.5㎎/dl以上になり、組織に沈着、皮膚や結膜が黄色をおびることをいいます。原因として次の三つがあげられます。

    1.溶血性黄疸hemolytic jaundice):
    過剰な赤血球の溶血に肝のグルクロン酸抱合が対応できず、非抱合型のビリルビン(間接型)が血中に増加し発生します。
    各種溶血性疾患や新生児黄疸(生理的対象であり、生後2~3日ころから現れ2週間ぐらいまでに消失します)、胎児赤芽球症、Rh因子やABO型母子不適合などが原因となります。新生児の重症型黄疸ではビリルビンは大脳に入り、大脳基底核などの神経細胞が障害を受けます(核黄疸)。

    2.肝細胞性黄疸hepatocellular jaundice):
    肝細胞でのビリルビンの処理に障害が生じた場合の黄疸です。グルクロン酸抱合の欠如、あるいは細胞内からのビリルビンの分泌障害が原因です。デュビン・ジョンソンDubin-johnson)症候群(肝細胞よりの抱合型ビリルビンの分泌障害を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患)、およびクリグラー・ナジャーCrigler-Najjar)型(グルクロン酸抱合酵素の欠損により、非抱合型のビリルビンが血中に増加するもの)といった先天性疾患、またウイルス性肝炎薬剤性肝炎、毒物中毒の場合の黄疸がこれに相当します。ウイルス性肝炎では肝細胞の壊死によりビリルビンの取り込みと排出が障害され、ビリルビンの増加では直接型また間接型の両方がみられます。

    3.閉塞性黄疸obstructive jaundice):
    肝内胆管、肝管、総胆管、ファーター乳頭部などの胆汁の流れの機械的な閉塞によって胆汁がうっ滞し生じます。血中には直接ビリルビンが増加します。先天性胆道閉塞症胆管炎胆石症胆管癌膵頭部癌乳頭部癌などによって胆管の閉塞が生じます。肝内のビリルビンうっ滞により肝細胞が障害を受け、線維化が進展して胆汁性肝硬変症となることもあります。

  7. 閉塞性黄疸のイラスト

  8. 糖代謝異常
    1.糖尿病diabetes mellitus):
    糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島〔膵島〕B〔β〕細胞から分泌されるインスリンの作用の不足により慢性の高血糖をきたし、網膜症、腎症、神経障害などの特有の合併症を生じ、動脈硬化も促進される疾患です。背景には遺伝素因があり、これに食生活習慣などの環境因子が加わり発病すると考えらています。糖尿病患者もしくは糖尿病が疑われる者は全国で690万人に達すると推定されています。糖尿病は
    • 1型糖尿病:インスリン依存型(insulin depen-dent diabetes mellitusIDDM
    • 2型糖尿病:インスリン非依存型(non-insulin dependent diabetes mellitusNIDDM
    に大別され、わが国の糖尿病の大部分はNIDDMであり、インスリン注射による治療をしなくてもケトーシスには至らないタイプの糖尿病です。膵島B〔β〕細胞のインスリン分泌障害とインスリン抵抗性(末梢でのインスリン作用の障害)によって生じます。症状としては口渇、多飲、多尿、易疲労感、体重減少などがあげられます。