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老化

加齢と老化

加齢と老化は厳密には異なる定義を有しますが、同じ意味に使われることが多い。老化とは、いったん成長した臓器が加齢とともに機能の減退、形態的変化を示しつつ衰退していく現象と考えられています。


細胞組織の老化

老化により、全身全体が縮小し、各臓器の重量は減少し萎縮します。細胞の増殖能は低下し、創傷の治癒は遅れるようになります。細胞の呼吸やエネルギー代謝は減少し、消耗性色素(リポフスチンなど)の沈着が生じるようになります。結合組織などの細胞間質には、種々のムコ多糖体やアミロイドなどが沈着し変性します。さらに膠原繊維が増加。線維化や硝子様変化などを呈します。


各臓器の老化

1.血管
血管の伸縮性は加齢とともに失われてきます。これは、おもに血管の構成成分である弾性線維が萎縮し、平滑筋細胞は減少萎縮、変わって膠原繊維が増加するためと考えられます。さらに動脈硬化症が生じてきます。動脈硬化では内膜、中膜の境界部に脂質の沈着、石灰の沈着、壊死物質などの蓄積が生じ、いわゆる粥状硬化症〔アテローム(動脈)硬化症〕を呈し、冠状動脈、腎動脈、脳底動脈などは内腔が狭窄します。このために支配領域の臓器の循環障害をもたらします。

2.
心は長年の拍出運動のためにしだいに重量を増加する場合と、逆に老人性萎縮で重量が減少する場合があります。とくに高血圧症では、物理的作業の増大により肥大を呈します。一方、萎縮ではリポフスチンの沈着がみられます(褐色萎縮とよばれます)。

3.
肝細胞の大きさ、また数の減少により肝臓は萎縮します。心と同様にリポフスチンの沈着が生じ、褐色萎縮を呈します。

4.
動脈硬化により腎動脈も狭窄し、循環障害により腎組織は萎縮を呈します。腎糸球体は萎縮、線維化、硝子化を生じ、それに対応する腎尿細管の変性、萎縮をきたします。腎表面は障害された領域が陥凹し、表面からみると顆粒状を呈し、動脈硬化性萎縮腎とよばれます。

5.中枢神経
神経細胞は出生後は分裂、増殖を行わないので、基本的には神経細胞は加齢とともに減少し続けます。多くの人は更年期以降、記憶力の減退や物忘れに気づきます。生理的な老化現象を超え、進行の急速なものを老人性痴呆とよびます。動脈硬化症による循環障害に基づくものと、脳細胞の代謝障害による変更に基づくアルツハイマー病(Alzheimer病)に大別されます。生理的老化現象としての脳変化として、肉眼的な脳の萎縮に加えて、組織学的には神経細胞の萎縮老人斑(中心部にアミロイドが存在する放射状構造物)、リポフスチン沈着アルツハイマー神経原線維変化(異常なタウ蛋白が蓄積したもの)などがみられますが、アルツハイマー病ではこれらが脳全体に、かつ高度にみられます。


壊死

壊死の定義

壊死(necrosis)とは細胞組織の死をいいます。HE染色で壊死に陥った細胞の核は、最初ヘマトキシリンで濃染します。その後、融解と崩壊が生じ核は不染となります。細胞質は好酸性が増し、その後細胞質の構造が不明瞭となります。消化管粘膜や膵組織などでは、自己の酵素により消化されることがありますが、自己融解autolysis)といいます。


壊死の分類

  1. 凝固壊死
    壊死に陥った組織が、陰影化を示しつつ凝固した組織として残存するもの。
    血行遮断による壊死(梗塞)はこの型をとります。また結核結節の乾酪壊死(結節の中心部がチーズを思わせます)も凝固壊死です。

  2. 融解壊死
    壊死に陥った組織が融解し、水化していくもの。最終的には水分が貯留し、軟化嚢胞を形成するに至ります。実際には、中枢神経組織にのみ認められます(例:脳梗塞層は融解壊死を呈するので脳軟化症といわれます。)。

  3. 壊疽(gangrene
    壊死に陥った組織が外界の影響や細菌感染により二次的な変化を示す場合、壊疽とよびます。乾性と湿性に分けられます。

    乾性壊疽
    体表近くに壊死巣があり、乾燥しやすいとき、水分が蒸発して乾性し縮小します。これをミイラ化といいます(例:四肢の動脈の動脈硬化症により血流が減少した場合、末梢部の手、足の先端部に認められます)。

    湿性壊疽
    嫌気性腐敗菌の感染により壊死組織は分解され、腐敗し、悪臭を放ちます。ガス産生菌の感染によりガス産生をみる場合、とくにガス壊疽gas gangrene)といいます(例:肺(肺壊疽)や消化管などにみられます)。

壊死巣の転帰

壊死組織を除去し修復させるために、周囲から反応が起きます。壊死巣内へは肉芽組織が侵入し、吸収・修復が起き、最終的には瘢痕組織(scar)が形成されます。また嚢胞として残存する場合も少なくありません。


アポトーシス apoptosis

壊死とは異なる細胞の死にアポトーシスがあります。壊死は、細胞外からの作用による細胞死ですが、アポトーシスは細胞自らが死ぬ、すなわち、予定されていたともいえる死(プログラム死)です。そしてこの死は、細胞がいろいろな情報のもとに、遺伝子的に制御された自爆装置を発現させて起こります。壊死では、細胞は膨化して崩壊しますが、アポトーシスでは細胞の縮小核の断片化を特徴とし、ただちに大貪食細胞や近隣細胞に貪食されて消失し、壊死のように炎症反応を伴いません。アポトーシスは、胎児期の発育過程で不用となる組織の排除や、成熟細胞が生理的に交代する(生理的再生)とき、また過剰に増生した細胞の制御が必要なときや、放射線により増殖中の細胞が死滅するときなどに観察されます。


死の定義

ここでの”死”は全身死のことで、生体活動の永久の停止です。したがって組織、臓器の死を意味せず、多くの組織、臓器は死の判定後も生存している、または生存の可能性を残しており、この点から死体臓器移植が可能となります。


死の判定

死の判定は、生命活動に不可欠な心、肺、脳などの主要臓器の停止したことをもってなされます。わたしたちの国では、心音呼吸脈拍の停止瞳孔反射の消失の確認よりなされてきました。近年、臓器移植学の発展により、死の定義、判定基準が再検討されています。最近の動向として、脳波の消失をもって脳死とし、これをもって死と定義する機運があります。
臓器の移植に関する法律(いわゆる臓器移植法)によれば、脳死を「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態」と定義し、判定基準を定めています。


死後の変化

死後に生じる変化として、

  1. 死冷(体温が低下し、外気温と)等しくなること)
  2. 死後硬直(死剛ともいう。死後2~12時間で骨格筋、関節の硬直が出現し、24~48時間で弛緩する)
  3. 死斑〔身体の下側(背部)や殿部が血液の沈下により赤調を呈すること〕
がよく知られ、ほかに血管内血液凝固、自己融解(自己消化)、乾燥、腐敗などがあげられます。