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  3. 肥大・過形成(病的増殖)、再生・移植

進行性病変(病的増殖)

1.進行性病変(病的増殖)の定義

種々の障害により機能や形態の失調をきたし、変性、萎縮、壊死などに陥る退行性病変に対応して、進行性病変があります。進行性病変(病的増殖)には細胞、組織、臓器が正常な成長をとげたあと、機能上の負荷や刺激により容積や重量の増加が生じる肥大過形成、組織の欠損の修復や異物処理に際してみられる肉芽組織再生、再生過程で分化の異常を伴う化成などが含まれます。

2.肥大・過形成

  1. 肥大の定義
    仕事量の増大や過剰なホルモンの影響などにより、組織や臓器の容積が増大することを肥大hypertrophy)といいます。肥大で、個々の構成細胞の大きさが増すことによって臓器全体の容積が増大するのを狭義の肥大といい、細胞数が増加(増生)することによって容積が増大するのを過形成hyperplasia)とよびます。多くの臓器ではこの二つはしばしば重複して起こります。

  2. 肥大の分類
    実質細胞が肥大または増生するものを真の肥大というのに対して、進行性筋ジストロフィーにおける運動筋のように、筋組織はむしろ萎縮し、脂肪組織の増殖によって全体が肥大しているようにみえるものを仮性肥大pseudohypertrophy)とよびます。
    肥大の典型的例は、筋肉労働やスポーツでみられる発達した骨格筋です。骨格筋は成熟後は細胞分裂を行わないので、仕事量の増大には筋細胞の容積の増大で対応します。
    心筋も同様で、高血圧症患者や、スポーツマンなどでは肥大がみられます。左心室の肥大が主ですが、弁膜疾患では弁直前の心房や心室壁に肥大が起こります。肥大した心筋では相対的に循環血液量が不足し、徐々に小壊死巣形成と線維化が進み、心不全へと向かいます。
    腎臓は左右対になっていますが、片方が高度障害により機能不全に陥ったとき、残った腎臓に肥大が起こることが知られ、代償性肥大とよばれます。

  3. 過形成
    過形成は細胞数の増加、増殖によって起こります。脳下垂体の異常により、甲状腺分泌刺激ホルモンの過剰分泌があると、甲状腺の濾胞細胞の数や濾胞数が増え甲状腺全体が大きくなります。高齢男性にしばしばみられる前立腺過形成も、ホルモンのアンバランスからくる前立腺組織の増生です。

3.再生

  1. 再生の定義
    再生(regeneration)とは、欠損が生じた細胞組織に以前と同じ細胞組織ができてくることです。細胞の再生能力には差があります。

  2. 再生の分類
    生体の多くの細胞は、その役目を果たし自然に死滅し、代わりに新しい細胞が生まれます。いわゆる生理的再生を繰り返しています。また病的因子によって組織や細胞が失われた場合、再生によって元と同じ組織に置き換わりますが、場合によっては再生性の強い細胞が過剰に増生して補うことがあり、病的再生とよばれます。

  3. 再生の機転
    組織、細胞には再生する能力に差異があります。一般に再生能力は、幼若なもの、低分化なもの、下等動物ほど強く、逆に高齢、高分化なもの、また高等動物ほど弱い。 すなわち、表皮や胃腸管粘膜の上皮細胞毛髪造血細胞のように常時生理的に再生を繰り返している細胞の再生能力は高い。ついで高いものとして、成長後生理的にはほとんど再生を行わないが、ある条件下では再生能力を発揮する唾液腺内分泌腺などの細胞があります。
    再生能力のない細胞は、永久細胞とよばれ神経細胞心筋細胞横紋筋細胞があります。発育後は分裂能(再生能)をもたず、欠損が生じると線維細胞のように増殖性の高い細胞に置換されたり、空隙として残存します。
    再生の代表的例として、空隙として残存します。
    再生の代表的例として、胃潰瘍の再生上皮があげられます。胃潰瘍は過剰な胃酸やストレスによる胃壁の循環障害により、胃の粘膜に始まる限局性の胃壁の崩壊、欠損が生じる疾病です。潰瘍は、自然にまた治療により再生上皮でおおわれ、再生上皮は発育し、正常粘膜と同じものが形成されて治癒します。

4.化生

分化した細胞・組織が、他の分化した細胞・組織に変化することを化生(かせい、metaplasia)といいます。一般に上皮細胞は他種の上皮細胞へ、間質細胞は他種の間質細胞へ化生します。
化生は、慢性の炎症や刺激に際してみられることが多い。慢性炎症により気管支子宮頸部の円柱上皮(腺上皮)は、扁平上皮に化生します。また、腎盂、尿管や膀胱の移行上皮が、結石や慢性炎症で扁平上皮や腺上皮に変わります。慢性胃炎で胃粘膜が小腸粘膜へと変わる腸上皮化生もしばしばみられる変化です。また、骨格筋の外傷で骨形成がみられることがあります〔外傷性骨化性筋炎traumatic myositis ossificans)〕。
化生は慢性刺激に対する適応性の変化と考えられますが、ときに腫瘍発生の母地になる場合もあります。

創傷治癒、組織内異物の処理

1.創傷治癒

創傷治癒は、組織の修復現象です。炎症反応・肉芽形成を示しつつ組織の再生が生じ、線維化をきたし、最終的には瘢痕となり治癒します。
皮膚の裂傷あるいは、切創といった創傷の開口部に赤色のみずみずしい顆粒状(gran-ular)の組織が盛り上がってきます。これが肉芽組織であり、肉芽組織granulation tis-sue)の語源でもあります。組織学的に肉芽組織は、新生した多数の毛細血管、増殖した線維芽細胞、さらに炎症細胞によりなります。経過とともに膠原線維が増加し、線維芽細胞は線維細胞となります。毛細血管、炎症細胞はしだいに減少し、線維化が進行、硝子化し、最終的には瘢痕となります。

皮膚の治癒過程のイラスト

骨折の治癒
骨折(bone fracture)により骨の破壊、離断、出血が起こります。出血による血腫は吸収され、離断した骨の間に肉芽組織が形成され、究極的に骨は接合します。骨折における肉芽組織は一般の軟部組織と異なり、破壊離断した骨周囲に出現する骨芽細胞が主役をにない、類骨組織とよばれる肉芽組織が生じます。類骨組織に石灰が沈着し骨芽細胞はこのなかに埋没し骨細胞となります。これを仮骨callus)とよびます。類骨から骨組織ができる過程では、骨組織を破壊する破骨細胞と骨芽細胞の両者が働きあって、強度をもった新しい骨が形成されていきます。この間4~6週間が必要です。
仮骨形成が不十分で、断端の骨癒合がうまくいかないと、骨の間は線維性結合組織のみで連続し、偽関節とよばれます。原因は、骨折部の固定が不十分であったり、離断した距離が過長であったり、感染が合併したときなどです。


2.異物の処理

体外から入った異物(縫合糸、寄生虫卵、金属粉など)や、体内で異物化したもの(死滅した細胞組織、血栓、炎症滲出物など)は、生体の反応機構により排除器質化被包などの処理がなされます。
  1. 異物の排除
    異物の種類により融解されたり、外界へ排除されたりします。たとえば大葉性肺炎では大量の線維素が肺胞内へ滲出し肺胞腔を充満しますが、白血球の崩壊によって遊離した蛋白分解酵素により融解され、痰として排出されます。また塵埃として吸収された炭粉は肺胞内の大食細胞に貪食され、痰に混じって喀出されるか、リンパ節へ移動して沈着し、しだいに排除されていきます。

  2. 器質化
    異物の排除が簡単にできない場合は、異物を中心とした肉芽組織が発達して異物を吸収し、肉芽組織として線維化、瘢痕化していきます。この過程を器質化とよびます。

  3. 被包
    異物が完全に排除されなかったり器質化できないような場合は、異物全体を周囲に生じた肉芽組織が包囲し、線維性に包み込んでしまいます。異物のまわりに大食細胞を中心とした一種の肉芽組織(異物型肉芽腫)がつくられます。肉芽腫内には大食細胞の融合した多角巨細胞(異物型巨細胞)も出現します。肉芽腫内では異物を貪食する一方、線維芽細胞による線維形成も加わり、肉芽腫はしだいに線維化を経て瘢痕化していきます。異物型肉芽腫の典型像は、生体内に残った縫合糸を中心とした異物型肉芽腫にみることができます。

3.移植

  1. 移植の定義
    組織や臓器が欠損したり機能廃絶に陥ったとき、ほかからの臓器組織をもって置き換えることを移植(transplantation)といいます。すなわち提供者(donor)の組織や臓器(graft)を、本人または他の受容者(recipient)に植えることです。

  2. 移植の分類
    移植片の種類により移植は、

    細胞移植
    骨髄細胞や膵ランゲルハンス細胞のようにばらばらの細胞として移植される

    組織移植
    皮膚、骨、角膜などのように組織片として移植される

    臓器移植
    腎、心、肝などのように臓器ごと移植する

    に分けられます。
    移植では免疫学的拒絶反応が問題となります。拒絶反応は、異物(抗原性のある物質)としての移植片(graft)に対し、受容者が免疫学的反応を引き起こすものです。とくに細胞性免疫の関与があります。

    移植は組織適合性から
    自己移植auto-transplantation
    自己移植は、同じ生体内での移植で拒絶反応はなく移植片は完全に生着できます。

    同種移植homo-transplantation
    同種移植は、同系移植と、異系移植に分かれます。同系移植は、提供者と受容者の遺伝子が同一の場合で、一卵性双生児の場合がそれにあたります。拒絶反応はありません。
    異系移植は遺伝的に異なる間の移植であり、拒絶反応が起こりうります。

    異種移植hetero-transplantation
    異種移植は動物の種類の異なる間での移植で、通常は拒絶反応が起こり生着しません。