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  3. 免疫のしくみ

免疫immunity)とは、たとえば麻疹(はしか)にかかると免疫ができ麻疹にはもう感染しない、というように一度感染した感染症に二度とかからないという経験から、疫(疾病)から免れることができる、すなわちその感染症に抵抗力ができるという意味から始まりました。しかし今日では、免疫はたんに感染症から生体を防御するといった狭い意味から、生体の恒常性を維持する役割の一つになった大きな反応系としてとらえられています。

免疫系は生体〔自己self)〕が正常では体内に存在しない物質〔非自己not-self)〕を非自己と認識し、生体から排除しようとする機構です。さらにその抗原を免疫学的に記憶する機能があります。
自己が非自己の対する生体反応を免疫反応とよびます。免疫反応には、非自己(抗原)に対して抗体(蛋白)を産生して対応する液性免疫と、抗原に特異的に作用する感作リンパ球の働きによる細胞性免疫によるものがあります。

免疫は感染防御など、生体防御といった生体に有利な反応系でありますが、ときとして生体に障害性になることがあります。たとえば、食物に対するアレルギーとしての蕁麻疹や、花粉に対する気管支喘息といった過敏症性反応、移植の際の移植臓器に対する拒絶反応、また自己免疫疾患とよばれる自己蛋白に対して抗体が産生される疾患群などがあります。

1.免疫のしくみ

全身リンパ組織は中枢と末梢性に分けられます。中枢性リンパ組織は胸腺と骨髄からなり、末梢リンパ組織は全身のリンパ節、脾、消化管粘膜のリンパ組織などからなり、抗原刺激に相応してリンパ球が分化・増殖する場所となっています。

リンパ球はT細胞(Tリンパ球)とB細胞(Bリンパ球)の2種類からなります。骨髄のもっとも元の細胞である骨髄幹細胞からできたT細胞前駆細胞は、胸腺を経てT細胞となります。同じく骨髄幹細胞から分化したB細胞は抗体を産生し、疫性免疫を担当しています。T細胞は細胞性免疫の主役ですが、B細胞の働きを調節する作用をもっています。

免疫反応のイラスト

1.抗原

花粉症でいう花粉に相当するのが抗原です。生体内組織に入った場合に、それに対する抗体の産生やリンパ球の感作を起こす物質を抗原antigen)といいます。抗原には、抗原決定基とよばれるその抗原に固有の化学構造が存在します。通常、抗原とは完全抗原の意味で、免疫原性と反応原性を有します。自己免疫疾患の場合を除けば非自己成分で、蛋白質、多糖体、糖蛋白、核酸などの高分子化合物です。抗原が反応原性のみを有する場合をハプテンhapten)といいます。ハプテンは低分子化合物で、蛋白と結合して免疫原性(抗原性)を発揮します。

抗原には、体外から入ってくるもの以外に、体内で変性や腫瘍化などによって生じるものもあります。抗原刺激に対応してリンパ球が増殖します。すなわち免疫応答するためには、抗原とリンパ球細胞膜の表面の抗原受容体(レセプター)分子と結合が 必要です。
T細胞の場合はT細胞抗原レセプターと、B細胞の場合は模型免疫グロブリンとの特異的な結合です。さらにT細胞の場合は、まず抗原がいったん、マクロファージや樹状細胞、あるいはB細胞に取り込まれ、これらの細胞の細胞膜表面に腫瘍組織適合抗原と会合した形で表出されて、はじめてT細胞抗原レセプターに認識されます。最初に抗原に接するこれらのマクロファージや樹状細胞は抗原提示細胞とよばれ、リンパ球と同様、免疫応答に重要な役割を演じています。

2.液性免疫

T細胞には、B細胞の機能を促進または抑制する調節機能も含まれています。マクロファージに貪食されて細胞膜上に提示された抗原情報は、T細胞を通じてB細胞へ伝えられます。B細胞は、形質細胞に分化してその抗原と特異的に反応する抗体(免疫グロブリン)を産生します。

末梢血液中のB細胞はリンパ球の約10%を占め、その大部分は成熟Bリンパ球として機能します。抗体である免疫グロブリンはB細胞から分化した形質細胞から産生されます。
免疫グロブリンは抗原と結合すると

  1. 細菌の溶解
  2. 毒物の中和
  3. 貪食細胞の貪食能を助ける
  4. 抗体依存性細胞傷害作用
などの生物学的効果を発揮します。

3.抗体

血清蛋白の一部をなす免疫グロブリンは、1本ずつ重鎖(H鎖:高分子ポロペプチド)と軽鎖(L鎖:低分子ポリペプチド)が1対となり、2個対称性に結合してY時型となるのを基本構造としています。その上部末端が抗原(抗原決定基部分)と結合します。そして下部末端でマクロファージ、好中球、肥満細胞などの細胞膜上の受容体と結合します。

免疫反応のイラスト

免疫グロブリンにはH鎖の構造の違いによりIgG,IgA,IgM,IgD,IgEの5種類があります。おのおの軽鎖の型к鎖とλ鎖により2種に分けられます。免疫グロブリンはもっとも分化した形質細胞でつくられ分泌されますが、IgMだけはリンパ球の形態をとどめる抗体産生細胞でつくられ分泌されます。抗体が抗原と結合したものを免疫複合体とよびます。抗原の有害性は免疫複合体になると消失し、生体に好都合なことが多い。しかし、免疫複合体が組織を障害することもあります(III 型アレルギーによる組織障害)。

4.細胞性免疫

T細胞が主役を担います。骨髄幹細胞からリンパ球肝細胞を経て前T細胞と分化した細胞は胸腺でT細胞となり、さらに全身のリンパ節、脾などに移り幼若T細胞となります。そこで抗原刺激を受けて、3種のエフェクターT細胞に分化します。T細胞はリンパ節では傍皮質領域、脾では中心動脈周囲リンパ組織などに存在しています。
細胞表面抗原は分化抗原レセプター(cluster of differentiation;CD,国際分類)と命名されています。大部分のT細胞はCD4またはCD8を発現しており、両者が発現することはありません。

エフェクターT細胞

  1. 細胞傷害性T細胞(Tc 細胞:CD8)
    抗原となった細胞(標的細胞)に直接攻撃してそれを破壊します。ウイルス感染細胞悪性腫瘍細胞の破壊、そして移植臓器の拒絶反応などを担当します。これとは別にキラー(K)細胞(killer cell)ともよばれ、またNK細胞(natural killer cell)という自己防衛の細胞傷害性リンパ球もあります。悪性腫瘍やウイルス感染細胞など変異細胞を傷害し、生体防衛に大きな役割を果たしています。

  2. ヘルパーT細胞(TH細胞:CD4)
    B細胞が抗体産生細胞へと分化するのを促進して抗体産生を増加させ、またT細胞のTc細胞への分化をも促進します。

  3. サプレッサーT細胞(Ts細胞:CD8)
    B細胞の抗体産生、およびTc細胞の働きを抑制します。TH・Ts両細胞のバランスによってB細胞の抗体産生が調節されています。

5.補体系

マクロファージ、上皮細胞、リンパ球などでつくられる、さまざまな活性のある一群の蛋白です。血清中に多量に存在し、免疫複合体などにより活性化されます。補体(com-plement)には第1成分(C1)から第9成分(C9)まであり、C1はC1q、C1r、C1sからなります。活性化した補体は食細胞の貪食作用の促進、ウイルス中和、炎症反応、溶連菌や細胞溶解など、生体防御と組織障害との二面性をもった反応を引き起こします。


6.サイトカイン

生体の細胞間の連絡。作用には循環系、神経系、内分泌といったものだけでなく、隣接した細胞間に作用するサイトカイン(cytokine)とよばれる微量な糖蛋白があり、炎症反応または腫瘍に対する反応など多岐の役割を果たしています(サイトカインとは、細胞が分泌する活性物質という意味です)。現在までに明らかになったものでも30種を超えています。たとえば、抗原の侵入に気づいたマクロファージが、それをTリンパ球とBリンパ球に伝えて、その増殖を起こし、防衛にあたるなど、分泌されて特定の細胞にシグナルを伝えます。それぞれの目的に応じた多くのサイトカインがあり、それを受け取る細胞にはそれに対するレセプター(受容体)があります。サイトカインの存在がわかると、疾病の仕組みがわかり、また遺伝子工学により試験管内でつくられるので治療に用いられます。

  1. インターロイキン(interleukin:IL)
    現在IL-1からIL-18まで知られています。リンパ球の間に働くサイトカインであり、IL-1はマクロファージの貪食作用を高め、IL-2はT,Bリンパ球の増殖、IL-3とIL-7は幹細胞の増殖、IL-4、-5、-6はBリンパ球の分化と増殖、IL-8は好中球の増殖と遊走に働きます。

  2. インターフェロン(interferone:IFN)
    INF-α、INF-β、INF-γの3種類があります。ウイルス感染を防ぐ働きがあります。

  3. コロニー刺激因子(colony stimulation factor:CSF)
    顆粒球の増殖を起こす因子(G-CSF)、マクロファージの増殖を起こす因子(M-CSF)、顆粒球とマクロファージ両方の増殖を起こす因子(GM-CSF)の3種類があり、これらの細胞が減少して後天性免疫不全となるのを治療できます。

  4. 細胞傷害性サイトカイン
    腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)とパフォーリンという2種類があり、細胞傷害性Tリンパ球、NK細部、K細胞が標的細胞を処理すときに分泌されます。