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  3. 免疫異常、アレルギー

1.免疫不全

液性免疫あるいは細胞性免疫の機構に欠損があり、正常な生体防御系が破綻し、感染や腫瘍発生に対して抵抗力が減弱した状態を免疫不全症候群immunodeficiency syn-drome)といいます。先天性に欠損があるものを原発性免疫不全症、生後受けた薬剤や放射線、感染など外来性の原因によるものを後天性(続発性)免疫不全症といいます。免疫不全では、容易に感染症に罹患します。また、通常では病原性のない微生物が病原性を発揮して起こる日和見感染が頻発したり、悪性腫瘍の発生率が増加したりします。われわれは免疫不全をとおして、正常に維持されている免疫系がいかにわれわれの健康維持に大切な役割を果たしているかを実感させられます。

1.原発性(先天性)免疫不全

患者は生後より感染を繰り返します。

  1. ディジョージ(Di George)症候群では、胸腺は欠損ないし高度の低形成を示し、その結果T細胞系の障害が生じます。細胞性免疫系による感染防御機構が破綻しますが、液性免疫には異常はありません。

  2. 伴性無ガンマグロブリン血症X-linked agammaglobulinemiaでは、血中免疫グロブリンは低値で、形質細胞もきわめて少ないですが、細胞性免疫は正常です。

  3. 重症複合型免疫不全症はリンパ球系の幹細胞にアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損があり、Tリンパ球Bリンパ球も高度に少なく、液性・細胞性免疫ともに障害され、細菌、真菌などの重症感染症を繰り返し、1歳前後で死亡します。本症は世界初の遺伝子治療がなされた疾患です。

2.後天性免疫不全

種々の薬剤、放射線、ウイルス感染症など後天的な原因により免疫機能が障害されます。

  1. 後天性免疫不全症候群acquired immunodeficiency syndrome:AIDS、エイズ)
    エイズウイルスの感染によって起こる。エイズウイルスは現在、HIV(、ヒト免疫不全ウイルス)とよばれています。1981年、米国の男性同性愛者で発見されて以来、世界的に患者数が増加しています。HIVは性的接触、汚染注射器や注射針の使用、汚染血液の輸血や血液製剤の投与によって感染します。また胎盤をとおして、あるいは授乳による母子感染の危険性も指摘されています。
    HIV感染後、4~7週でHIVに対する抗体が陽性となり、同時に血液、精液、その他の分泌中にHIVが保有され、ウイルスの保有者(キャリア)となります。感染から発症までの潜伏期は長く、2~5年といわれます。やがてリンパ節腫脹、発熱、下痢、体重減少などの症状が出現します。
    エイズウイルスはリンパ球、ことにヘルパーT細胞(TH細胞:CD4)を選択的に障害します。エイズでは末梢血中のT細胞のCD4/CD8比が逆転し、0.1にもなります。そのため細胞性免疫系の機構を破壊します。感染者はさまざまな病原微生物の感染を受けやすくなり、通常の細菌感染に加え、カリニ肺炎真菌症といった日和見感染が多発します。またカポジ(Kaposi)肉腫、悪性リンパ腫といった腫瘍がしばしば発生します。

2.自己免疫異常

1.自己免疫異常とは

抗原は非自己(not self)であって、自己(self)の生体成分に対する抗体産生は起こらないことが免疫反応の原則です。しかし、免疫学的研究の進歩によって、自己の組織成分に対する免疫反応の事実が明らかにされ、自己免疫疾患(autoimmune disease)の概念が確立されました。
自己成分を抗原とする免疫反応が起きる原因として

  1. 自己組織が感染や薬物により修飾され抗原となる
  2. 変性した腫瘍組織に対する抗体の出現
  3. 自己成分と共通した抗原性を有する抗原物質に対してできた抗体が交叉反応を起こす
  4. 免疫応答の正常な抑制機構が障害される
などが考えられています。

2.自己免疫疾患

  1. 全身性エリテマトーデス〔紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematousus):SLE〕
    もっとも代表的な全身性の自己免疫疾患で、若い女性に多い。臨床的には顔面の蝶形紅斑、発熱、関節炎、リンパ節腫脹、ループス腎炎が特徴的です。全身の小動脈壁の壊死性血管炎、皮膚結合組織の変性をみます。腎の糸球体は毛細血管の硬化により白金耳状病炎(wire loop lesion)を呈し、脾内の動脈の周辺には年輪状の線維化がみられます(onion skin lesion)。心臓には、心内膜炎〔リブマン・サックス(Libman-Sacks)型〕が認められることがあります。
    疫学的には、多様な自己抗体が出現します。核成分に対する抗体(抗核抗体抗DNA抗体)をはじめ、細胞質成分や血球に対する抗体が血中に出現します。患者の末梢血には、核成分(抗原)と抗体とからなる免疫複合体を貪食した多核白血球が出現、LE細胞(lupus erythematosus cell)とよばれます。

  2. 関節リウマチ(rheumotoid arthritis:RA整形外科的関節リウマチ
    全身の関節をおかす慢性関節炎を特徴とする自己免疫疾患です。30~40歳代を初発とし、女性に多い。関節病変は、末梢の小関節より左右対称性に始まります。
    しだいに多くの関節がおかされ、病変は進行し、患者は疼痛と運動障害に悩まされます。関節炎は増殖性炎でリンパ球、形質細胞などの炎症性細胞浸潤や線維芽細胞の増生が認められます。滑膜の反応性の増生、病変の軟骨や骨への波及により関節の強直と変形が生じ、運動機能が障害されます。関節近傍に皮下結節(リウマチ結節)が形成されることがあります。高γグロブリン血症を示し、血清中にリウマチ因子(rheumatoid factor)が高率に証明されます。リウマチ因子(rheumatoid factor:RFは、変性IgGに対する自己抗体(IgG RF)とみなされています。

  3. 強皮症〔全身性硬化症(progressive systemic sclerosis:PSS
    皮膚の硬化・萎縮を特徴としますが、血管、骨格筋、関節や多くの内臓器などをおかす系統的疾患です。女性に多く、寒冷などで皮膚蒼白、チアノーゼなどを呈するレイノー(Raynaud)症状を初発症状とすることが多い。
    皮膚病変は浮腫期、硬化期、萎縮期の3期に分けられ、皮膚と皮下組織は硬く癒着します。約3/4にリウマチ因子が陽性です。高γグロブリン血症、LE細胞、抗核抗体が認められますが、発生機序は明らかではありません。

  4. 多発性筋炎(polymyositis)
    筋肉の脱力、筋痛、筋萎縮、筋の石灰化やさまざまな皮膚症状、関節リウマチ様症状を呈する原因不明の疾患で、しばしば対称性に中枢側の筋肉がおかされます。皮膚病変を伴うものを皮膚筋炎(dermatomyositis)といいます。同一疾患と考えられています。
    本症はSLE、関節リウマチなど他の自己免疫疾患と合併することが多い。筋肉には、筋細胞の壊死と著名な炎症細胞浸潤がみられます。浸潤細胞にはT細胞が多く、細胞性免疫の関与を示唆する所見とされています。

  5. 結節性多発性動脈炎(polyarteritis:PN)
    全身の中等大から小型の動脈に、フィブリノイド壊死を伴う動脈炎がみられます。
    結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa)ともよばれます。血管病変による循環障害によりさまざまな症状がでます。
    フィブリノイド壊死と、これに伴う炎症性細胞浸潤があり、肉芽形成期には組織球や線維芽細胞の増殖が目立ち、しだいに瘢痕期へと移行します。寛解と憎悪を繰り返します。

  6. 橋本甲状腺炎(Hashimoto thyroiditis)〔橋本病〕
    甲状腺の自己免疫疾患で、中年以降の女性に多く、びまん性甲状腺腫をきたします。組織像ではリンパ沪胞を伴うリンパ球の高度浸潤、沪胞上皮の変性・萎縮、間質の線維化が認められます。甲状腺の自己抗原として、サイログロブリン(thyroglobulin)と甲状腺沪胞上皮のミクロゾーム(microsome)分画があげられています。

  7. シェーグレン症候群(Sjogren' syndrome)
    涙腺や唾液腺に高度のリンパ球や形質細胞浸潤が起こり、腺房細胞が萎縮消失し、分泌機能が低下し、乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、口内乾燥症(ドライマウス)といったいわゆる乾燥症候群を呈します。慢性関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)の合併が多い。

3.アレルギー(allergy)

1.アレルギーとは

免疫は、生体に侵入した異物を無毒化、排除する働きであり、生体防御の根幹をなしています。しかし、ときとして免疫反応が生体に有害に、さらに組織障害性に作用することがあります。これがアレルギー反応(現象)とよばれるものです。過剰な免疫反応という意味で過敏症(hypersensitivity)ともよばれます。アレルギーはその発生機序により5型に分けられています。I、II,III 型は液性免疫反応で反応時間が短く、即時反応とよばれ、IV型は細胞性免疫反応で、細胞と抗原の反応には時間がかかり、遅延反応ともよばれます。V型は最近加えられたもので、バセドウ病(クレーブス病)の発生機序に関するものです。

2.アレルギーの5型

  1. I型(アナフィラキシー型反応)
    花粉、家屋塵埃(ハウスダスト)、牛乳といった抗原(アレルギーの原因物質という意味でアレルゲンとよばれます)が、肥満細胞の表面のIgE(免疫グロブリンE)と結合してヒスタミンを分泌することによって起こる現象です。一度感作された生体に再度同じ抗原が入ると、肥満細胞表面のIgEに抗原が反応し、肥満細胞は活性化したヒスタミンなどの物質を遊離します。ヒスタミンは代表的な血管・平滑筋作動物質であり、炎症反応でも作動します。血管透過性亢進、血管拡張、気管支平滑筋の収縮といった作用があります。局所反応と全身反応に分けられます。局所反応は、抗原に直接接触する皮膚や粘膜に起こります。
    気管支喘息花粉症蕁麻疹食物アレルギーなどのアトピー性アレルギーに代表されます。アトピーとは、微量のアレルゲンでIgEを産生しやすい体質をいいます。
    全身反応は、薬剤注射(ペニシリンなど)のように抗原が血中に入った場合に起こり、アナフィラキシー反応とよばれます。ヒスタミンの血管拡張作用により血圧下降、ショック、気管支平滑筋作用により、呼吸困難など重篤な症状を呈します。

  2. II型(細胞傷害型反応)
    細胞膜や基底膜を抗原として、免疫グロブリンのIgGあるいはIgM抗体が結合して、細胞の障害が起こる反応です。その際、抗原抗体複合物に補体が結合すると細胞膜が障害され、赤血球では溶血が起こります。この反応には異型輸血Rh血液型不適合の場合の胎児赤芽球症特発性血小板減少性紫斑病などが知られています。

    1.Rh血液型不適合の場合の胎児赤芽球症(新生児重症黄疸)
    母親がRh(-)で胎児がRh(+)のとき、母親には胎児のRh抗原に対する抗体が産生されます。抗体は母親の血中から胎児へ移行して胎児赤血球の細胞膜のRh抗原と反応し、赤血球は溶血します。新生児には高度の溶血性黄疸が生じて、ビリルビンは脳細胞(基底核)へも沈着(核黄疸)し、中枢神経障害を起こします。

  3. III型(免疫複合体による反応)
    血中で抗原と抗体が反応して抗原抗体複合体(免疫複合体)ができても、細網内皮系で処理されます。しかし抗原刺激が持続したり、組織反応性により免疫複合体が組織に沈着して、局所に急性の炎症や組織障害を引き起こすことがあります。血清病(serum sickness)、また自己免疫疾患などが、このIII型アレルギー疾患としてあげられます。免疫複合体病(immune complex disease)ともよばれます。

    1)血清病
    たとえば、治療としてジフテリア抗血清を多量に注射して、1~2週間後、発熱、皮膚疹、腎炎、血管炎などが生じることがあります。これは多量の異種血清と抗体が免疫複合体を形成、組織に沈着して、炎症、組織障害を起こしたものです。
    IgA腎症をはじめて多くの糸球体腎炎の場合に、螢光抗体法により糸球体基底膜上に免疫複合体の沈着が確認できます。

  4. IV型(遅延型反応)
    感作されたリンパ球により起こる反応で、細胞性免疫現象ともよばれます。働くリンパ球はTリンパ球です。抗原と接触し活性化されたT細胞は増殖し、同時に多くの作用物質を放出します。これらはサイトカインとよばれています。サイトカインはインターロイキンなど多種類が知られ、免疫現象また炎症の場でさまざまな作用をします。
    遅延型反応の代表的なものはツベルクリン反応(tuberuculin reaction)で、結核菌に感染したことがある人にツベルクリンを皮内注射すると、48時間後に注射局所に発赤、硬結が出現し、その後消退します。

  5. V型(刺激型反応)
    抗体がレセプターに結合し、本来レセプター(受容体)に結合すべき物質と同様にその細胞を刺激します。
    例:甲状腺腫であるバセドウ病(クレーブス病)では、患者血清中に、自己抗体であるlong-acting thyroid stimulator(LATS)が存在し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)と同様に甲状腺濾胞細胞のTSHレセプターに結合し、甲状腺ホルモンの酸産生を促進して、甲状腺機能亢進症を惹起します。