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  3. 労災保険の取り扱い

労災保険の目的

私たちの日常生活はさまざまな危険にとり囲まれているといえます。とりわけ勤労者生活においては、いつ、かなるところで、負傷したり、疾病にかかったり、あるいは命をおとすことになるかもしれません。

労災保険制度は、このように不幸にして業務災害(仕事が原因となって生じた負傷、疾病、身体障害、死亡)や通勤災害(通勤が原因となって生じた負傷、疾病、身体障害、死亡)を被った労働者やその遺族に対して保護のための必要な保険給付を行うことを、主たる目的としています。

しかしながら、労災保険の目的はそれだけにとどまらず、被労働者やその遺族に対して、社会復帰を促進させるための対策を講じたり、種々の手厚い援護措置を進めています。さらには、労働災害の防止や労働者の福祉の増進を図るための各種の事業(労働福祉事業)を実施しています。

このように、労災保険は、業務災害と通勤災害とを保険給付の対象としているところから、業務上又は通勤途上において負傷したり、疾病にかかった労働者には、労働保険から必要な医療が給付されることとなりますが、労災保険によって行われる種々の医療行為を総称して「労災医療」と呼んでいます。

柔道整復師による施術

現在、医師以外の者によって行われている療養の一つに、骨折や打撲、捻挫等に対して行う柔道整復師の施術があります。外傷患者の多い労災患者の療養を行う労災医療においては、柔道整復師の施術も重要な分野になっています。

このように柔道整復師による施術は、労災医療の中で相当利用されてはいますが、その施術については「柔道整復師法」によりいろいろな制限が設けられています。

したがって、柔道整復師が労災医療を担当する場合にも、この制度を無視することはできません。そこで労災保険法では、柔道整復師の行う施術の範囲等についても、一般診療と同様に具体的な算定基準を定めて、その取扱いについての斉一性を確保し、適正な運用を図ることとしています。

具体的には、この算定基準に基づいて各都道府県労働局長と都道府県柔道整復師会との間でそれぞれ協定を結ぶことによって運用されています。

なお、労働保険の取扱いは、原則として健康保険の取扱いに準じていますので、以下にその内容を説明することにします。

指名柔道整復師

労働者業務災害又は通勤災害により負傷した場合の柔道整復師による療養給付の方法は、傷病労働者が施療に要した費用を直接柔道整復師に支払い、その支払った額を政府に対して請求するのが原則ですが、労災保険指定医制度のように柔道整復師が傷病労働者に対して施術を行った場合の施術料金を傷病労働者に負担させることなく直接政府に請求することができれば、傷病労働者にとっても、また、柔道整復師にとっても便利です。

そこで、労災保険指定医療機関と同じような取扱方法として設けられたものが指定柔道整復師制度です。

すなわち、都道府県労働局長から指名柔道整復師として指名された柔道整復師は、施術を行った傷病労働者から施術料金の支払いを受けるかわりに、その施術料金の受領を委任する旨の委任状を受け、施術料金の請求書にこの委任状を添えて所轄労働基準監督署に提出し、当該労働基準監督署から直接施術料金の支払いを受けることができるしくみになっています。

この受任者払いによって、傷病労働者は事実上現物給付を受けたのと同様の療養を受けることができ、また、指名柔道整復師としても個々の傷病労働者から施術費用を徴収する煩わしさが避けられることになります。

この指名柔道整復師の指名は、前に述べたように各都道府県労働局長が行うことになっております。

また、指名に関する手続きは各都道府県労働局において定めた方法により行うことになっていますが、その指名期間は原則として2年間であり、この期間経過後なお指名を受けるときはその期間が更新されることになっています。

なお、指名柔道整復師としての指名を受けていない柔道整復師が傷病労働者の施術を行った場合には、その労働者から料金の支払いを受け、労働者はこの料金を所轄労働基準監督署に「療養の費用請求書」により請求することになります。

施術の範囲

柔道整復師の施術については、前述のように「柔道整復師法」によって外科手術や薬品投与の禁止及び脱臼、骨折に対する施術制限等の規定が適用されることはいうまでもありません。

したがって、柔道整復師が傷病労働者に対して行う施術の場合も、これらの規定に違反する施術はすべて保険給付の対象とはなりません。また、これらの規定に違反しない場合であっても、行った施術がすべて労災保険給付の対象となるわけではありません。

すなわち、医師の行う診療と同じように、その施術を受ける傷病労働者に労災保険給付の受給資格がない場合等が問題となります。これについては一般的に次のような場合が労災保険給付の決定上特に問題となりますので、このような場合には、後に施術費用等について面倒なことが起きないように、予め所轄労働基準監督署長に連絡し適切な処理をすることが必要です。

  1. 傷病が業務災害(通勤災害を含む)によって生じたものと認められないとき、または疑わしいとき
  2. 傷病労働者の所属する事業場の保険関係について疑わしい事情が認められるとき
  3. 傷病が第三者行為による災害によって生じたと認められるとき
  4. 傷病労働者が、正当の理由がないのに施術に関する柔道整復師の指示に従わないとき
次の施術の範囲については、労災保険法第13条の規定によって柔道整復師の施術についても、他局ごとに柔道整復師の団体と締結している協定の主な内容です。なお、施術に当たっては、施術所の開設者又は柔道整復師は次のことに留意して下さい。

医師の同意を必要とする施術

柔道整復師法第17条では「柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の幹部に施術をしてはならない。ただし、柔道整復師が応急手当をする場合はこの限りではない」と定められています。したがって、この規定に反して行われた施術についての費用は、保険給付の対象として認められません。

なお、施術について同意を求める医師は、必ずしも整形外科等を標ぼうする医師でなくてもよく、また、この同意を得たことが施術録に記載してあればよいので、療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号の(3)又は第16号の5(3))には、必ずしもその同意書を添付する必要はありません。

次に「応急手当」とは、骨折又は脱臼の場合に医師の診療をうけるまで放置するときは受傷労働者の生命や身体に重大な危害を来たす恐れのある場合に、柔道整復師がその業務の範囲内で行う手当をいうものです。したがって応急処置の場合であっても、全くその業務中に含まれない止血剤の注射、強心剤の注射等はもちろんゆるされないことは当然であり、そののち引き続き施術を行うためには医師の同意が必要であることはいうまでもありません。

外科手術等の禁止

柔道整復師は「外科手術を行い、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない」(柔道整復師法第16条)と定められていますが、少なくともつぎのような場合には、その治療上傷病労働者に医師の診療を受けさせる配慮が必要です。

  1. 頭蓋骨骨折、脊椎骨折その他単純でない骨折
  2. 外傷を伴うもの又は重篤なもの
  3. 負傷により特に神経障害を伴うもの又はそのおそれのあるもの
  4. その他医師の診療を受けさせる必要があると認められるもの
なお、施術の中途において治癒困難、症状遷延のおそれのあるものまたは症状の変化を来したもの等については、早急に医師の診療を受けさせる配慮が必要です。

レントゲン診断

レントゲン照射(撮影を含む)については、「診療放射線技師及び診療エックス線技師法」により診療エックス線技師でなければ行えないこととされていますが、最近は、柔道整復師のなかに、柔道整復師の資格に併せてこの資格を取得している者があり、これらの柔道整復師が本来の施術のほか、レントゲン診断を用いる場合があります。

そこで、労災保険では、診療エックス線技師の資格を有する柔道整復師が関係法規(医療法、医師法、柔道整復師法、診療放射線技師法及び診療エックス線技師法その他)に照らして適法に行われた場合に限って保険給付の対象として認められています。

なお、撮影した写真等の診断については、医師法により医師が行われなければならないこととされており、また、照射を行う場合についても病院又は診療所で行うことが建前とされており、それ以外の場所で行う場合は、医師の診察した患者について行う場合に限られていますので、注意を必要とします。

柔道整復師の施術にかかるレントゲン診断の療養補償上の取り扱いについて

標記のことについて、(中略)下記の事項に留意のうえ、遺憾のないよう処理されたい。

  1. 趣旨

    従来、柔道整復師の施術のうち、骨折、脱臼、打撲、捻挫の施療並びに患部に対する温罨療法及び電気光線療法等について、これらを療養補償の対象として取扱ってきたところであるが、最近、柔道整復師のうちには、柔道整復師の資格に併せて診療エックス線技師の資格を有する者もあり、これらの者については、上記の施療のほか、レントゲン診断を用いる事例もあり、これの補償上の取扱いが問題となってきので、今回この場合におけるレントゲン診断を療養補償の対象として認めることとしたものであること。

  2. 取扱いの対象

    取扱いの対象については、レントゲン照射(撮影を含む。以下同じ)は、診療エックス線技師法により診療エックス線技師でなければ行なえないこととされているので、診療エックス線技師の資格を有する柔道整復師により照射が行われたものに限るものとしたこと。

    また、照射を行う場所についても病院又は診療所で行うことを建前とし病院、診療所以外の場所で行う場合は、医師の診察した患者について行う場合に限り認められているものであり、その照射した写真等の診断については、医師法との関係において医師が行わなければならないこととなるので、かかる法令上の規制から、これら関係法規(医療法、医師法、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律、診療エックス線技師法)に照し適法に行われたもののみを対象とすることとしたものであること。

    なお、これについては、柔道整復師の施術に関するものであれば、施術を行う柔道整復師が他の診療エックス線技師の資格を有する柔道整復師に依頼して照射を行ったレントゲン診療についても、この対象に含まれるものであること。

  3. 費用の算出

    補償費の額については、健康保険における診療報酬点数表(乙表)(以下「診療点数法」という)の点数を基礎に単価11円50銭を乗じて算出することとしているが、これについては、柔道整復師の施術における他の料金の場合と同様都道府県労働基準局において地区の柔道整復師の団体とレントゲン診断についての患者に対する料金の請求について協定を締結し、こえrを団体に加入している柔道整復師に遵守させることとして、これによりその費用の請求額が、この算出した金額を越えることのないよう処理するものであること。

    なお、この協定については、本省において(中略)、これに準拠して締結すること。

  4. 請求手続き

    請求手続きについては、柔道整復師の施術についての一般の請求手続きによることとされているが、これについては、医師による写真等の診断料もこれによるものであるとともに、その費用の支払い方法については、昭和34年8月5日期発第545号通達による柔道整復師に対する受任者払いの方式によるものであること(この場合、医師による写真等の診断料は当該施術を行った柔道整復師が受任者となることとする)。また、請求書の記載については、その診断した状況について(中略)その他の欄に、照射の方法、並びに回数、使用したフィルム等の規格及びその診断に要した費用の額を記入させることとして取扱うこと。

    なお、この手続きについては、請求書に当該レントゲン診断が適法に行われたことの証明を付することとされているがこれについては、診療エックス線技師は、診療エックス線技師法により照射録を作成することとされているので、この照射録の写を添付させるとともに写真等について医師が診断を行ったものであることの確認については、その添付する照射録の写しの欄外に当該診断を行った医師の証明を付記させること。

  5. 指導等

    この取扱いの実施にあたっては、都道府県労働基準局は、地区の柔道整復師の団体と協定の締結を行うほか、個々の指名柔道整復師の指導については、同団体を通じてその取扱の内容を周知させる等、この業務の運営について適切な処置を講ずること。