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自動車事故と社会保険

このページでは自賠責保険の仕組みについて解説しています。被害者を守るべき権利は何か、加害者はどのような責任を伴うのかなどを解説しています。

自動車事故など第三者の行為でケガをしたり、そのケガがもとで病気になったり死亡したときは、被害をうけた人は加害者に損害賠償を請求する権利があります。

一方、被害者が社会保険の被保険者(被扶養者を含む)である場合は、社会保険の給付をうけることができます。このため、損害賠償と保険給付との間に損害賠償請求権の移動(保険者の代位取得)等による調整が行われています。

損害賠償の考え方

第三者行為の被害者は加害者にたいして損害賠償の請求権があり、加害者は被害者に対して損害賠償をする責任があります。

この損害賠償の責任は、民法で規定されており、ケガの治療費、会社を休んでいる間の生活補償、持ちものや建物など直接の損害に対する賠償はもちろん、精神的苦痛に対する慰謝料、死亡した場合や後遺障害を残した場合の将来の損害(逸失利益)に対する賠償など、すべての損害に対して賠償する責任があることになっています。

損害賠償の額は、当時者が話し合ってきめ(示談)、示談によっても解決できないときは、簡易裁判所の調停または裁判によってきめます。

このさい、被害者にも過失がある場合は、一般に、過失相殺の原則で損害賠償の額はその程度に応じて相殺されます。

自賠法では、車の保有者がその運行によって他人の生命または身体を害したときは、その損害について賠償する責任があるわけですが、夫婦間、親子間にも、それぞれ損害賠償請求権を認めています。

ただし、たとえば夫と同乗していた妻が夫の運転により損害をうけたとき、妻が主にその車を運転する者であったり、夫の運転補助者であった場合などは「他人」とみなされないことがあります。つまり単なる同乗者であった場合に損害賠償請求権が認められることになります。実際には個々のケースに応じて判断されます。

自動車事故の損害賠償

自動車事故によって他人に傷害を与えた場合は、自動車損害賠償保障法によって、自動車の保有者が賠償をする責任があり、保有者に事実上過失がなくても、盗難車による事故とか飛込自殺のような特別な事情がないかぎり、損害賠償の責任を負うことになっています。

そして、賠償金の支払いを確保するため、自動車の保有者はすべて強制的に適用をうける「自動車損害賠償責任保険」の制度がつくられています。(農協・消費生活協同組合・事業協同組合の組合員が保有する自動車については、農協および同連盟会が行う「自動車損害賠償責任共済」の制度がありますが、責任共済でも責任保険と同様な損害てん補を行うことになっています。)

<責任保険の保険金>
死亡した人または障害をうけた人1人につき、つぎの保険金が支払われます。

  1. 死亡した人
    • 死亡による損害につき、4,000万円
    • 死亡にいたるまでの傷害による損傷につき、120万円
  2. 傷害をうけた人
    • 傷害による損害につき、120万円
    • 後遺障害による損害につき、75万円~3,000万円

この保険金額は限度額ですから、治療費などの損害が120万円以下の場合は、かかっただけ支払われます。また、死亡の場合は、被害者に重大な過失があるとか、高齢でないかぎり4,000万円を限度額として全額支払われます。

後遺障害に対する保険金は、労災保険とほぼ同じ障害等級表によって、第1級3,000万円から14級75万円までの金額がきめられ、障害が2以上あるときは、重い方の等級より1~3級上の等級の金額が支払われることになっています。

示談が長びいたりして賠償金の支払いをすぐうけられない場合は、被害者請求の制度があります。また、仮渡金の制度もあり、死亡の場合は290万円、障害の場合はその程度によって5~40万円の仮渡金が支払われます。

ひき逃げなどで、責任保険等の恩恵をうけることができないときは、政府がかわって、前記保険金の限度で損害のてん補を行うことになっています(政府保証事業)。

なお、実際にうけた損害が保険金の額をこえた場合は、こえた分を被害者が加害者に請求します。

社会保険と給付の調整

自動車事故など第三者の行為によって傷害をうけた場合にも、社会保険の給付をうけることができます(業務上・通勤災害による場合を除く)。つまり、被害者は、一つの事故に対して、一方では加害者に損害賠償を請求することができ、他方では診療や年金・一時金など社会保険の給付をうけることができることになります。

このような場合、加害者による損害賠償と社会保険の給付とは、その目的、性格は必ずしも一致しませんが、たとえば、自動車事故でけがをした場合、健康保険で診療(療養の給付・家族療養費)をうけるほかに、加害者から治療費について損害賠償をうけることになると、その範囲では、被害者の損害は二重に補てんされるという不合理が生じることになります。

そこで一般に社会保険では、第三者の行為による事故について保険給付をしたときは、保険者がその給付の価額の限度で、被害者などが第三者に対してもっている損害賠償請求権を取得するという規定がもうけられています。これを損害賠償請求権の代位取得といいます。(この権利を行使することを求償といいます。)

また被害者などが第三者から同一の事由について損害賠償をうけたときは、保険者は、その価格の限度で保険給付しないことができることになっています。(これを免責といいます。)

健康保険の場合

<求償権の移転>

自動車事故など第三者の行為によって障害をうけた場合にも、健康保険の給付をうけられます。この場合、保険者は保険給付を行ったことによりその給付の価額の限度で、被保険者(または被保険者であった人)がもっている損害賠償請求権を法律上当然に取得することになり、損害賠償請求権は自動的に移転し、一般の債権のように代位取得する際に第三者(加害者)に通知するとか、その承諾を得る必要はありません。

また、被保険者(被害者)は、保険者が代位取得した損害賠償請求権の内容を変更することはできないので、保険給付が行われている間に示談が成立したような場合、示談の内容はそれ以前の保険給付について保険者が代位取得している損害賠償請求権を左右することはできません。
たとえば、交通事故で入院し、1月後に、加害者が治療費の半額を負担するという示談が成立した場合、示談成立までの治療費が100,000円だったとすると、その間の医療費について保険者が代位取得するのは、100,000円の半額50,000円ではなく、示談が成立するまで保険で給付した治療費の前額(100,000円)ということになります。

<代位取得の対象>

保険者が被保険者の損害賠償請求権を代位取得するのは、保険給付の価額の限度、つまり保険給付に実際に要した費用の範囲内ということになっています。損害賠償のうち、慰謝料、見舞金、被害者の家族に対する手当など保険給付と直接関係ないものや入院時の特別室の特別料金(室料差額)などで保険者が認めない部分、休業補償費で傷病手当金をうけられない部分など、保険で給付されないものは、代位取得の対象になりません。

<損害賠償をうけたあとの保険給付>

健康保険では、同一の事由ですでに第三者から損害賠償をうけたときはその限度で保険給付をしなくてもよいという免責の規定がありますので、損害賠償をうけたり免除したりして損害賠償請求権を消滅させた後は、その額の限度で保険給付を行わないことになっています。

<示談と求償権の範囲>

示談と同時に損害賠償を全額うけとるとか、全額免除した場合は、示談後の保険給付は行われません。治ったあとで払うという示談の場合は、保険給付した価額に相当するすべての損害賠償請求権を保険者が代位取得します。

<健康保険で必要な手続き>

自動車事故など第三者の行為によってうけた傷病について健康保険で診療をうける場合、被保険者は「第三者の行為による傷病届」をできるだけ早く保険者(社会保険事務所または健康保険組合)に提出しなければなりません。この届出には、被害の事実、第三者の住所、氏名(わからないときはその旨)、傷病の状況など必要な事項を記載し、自動車安全運転センター事務所の事故証明書、示談が成立しているときは示談書などをそえます。

厚生年金の場合

損害賠償請求権の代位取得

自動車事故など第三者の行為による障害・死亡などの事故について保険給付をしたときは、保険者(政府)が、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対してもっている損害賠償請求権を取得することになっています。たとえば、事故で片足を切断したというよな例で、被害者が加害者に対し、障害補償を請求し、話し合いが難航している間に、一方で2級の障害年金をうけられることになり、その額が120万円で、年4回30万円ずつ支払われることになったような場合は、その30万円が支払われるつど、その価額の範囲内で、政府が加害者に対し、損害賠償請求権を取得し、支払った給付に相当する額を加害者からとりもどすことになります。

なお、保険給付が行われている間に示談が成立したような場合、その示談の内容は、それ以前の保険給付の内容を左右することはできません。たとえば、上記の片足切断の例で、被害者と加害者の間で、障害補償はしない、その代わり慰謝料を70万円とするという示談が成立したというような場合でも、示談の前に障害年金が実際に30万円支給されていれば、政府はその分だけ損害賠償請求権を代位取得しており加害者からとりもどすことになります。

損害賠償をうけた場合は一定期間支給停止

受給権者が第三者から同一の事由について損害賠償をうけたときは、政府は、その価額の限度で、保険給付をしないことができるようになっています。たとえば、自動車事故による死亡の例で、遺族年金の受給権者が、加害者から葬祭費、免失利益、慰謝料などの損賠賠償をうけた場合、そのうち、遺族年金の支給と同一事由のもの、つまり、名目は何であっても、遺族の生活保障部分に相当するものについて、その限度で遺族年金は支給されません。

〔生活保障部分相当額〕
損賠賠償額のうち、生活保障部分相当額は、当事者間のとりきめなどで生活保障部分が明確なものについては、その額としますが、生活保障部分が明確でないものや、損賠補償の大半または全額が慰謝料とされている場合は、損害賠償総額から、慰謝料、葬祭料、医療費などを控除した額とすることになっています。

年金の支給停止期間は最高2年

障害年金または遺族年金について、給付をしない期間は、受給権者の世帯構成人員に応じて、損害賠償額のうち生活保障部分に相当する額を、総理府統計の「世帯人員数別平均1カ月間の支出の額」で割った数に相当する月数とすることになっています。ただし、その月数が24カ月を超えるときは24カ月とする。つまり、最高2年間だけ支給停止されることになっています。

労災保険の場合

自動車事故など第三者の行為による事故の被害者(労働者または遺族)が労災保険の給付をうけた場合は、保険者(政府)は、その給付の価額の限度で、被害者が加害者に対してもっている損害賠償請求権を代位取得し、加害者に対して求償を行います。この損賠賠償請求権の代位取得は健康保険の場合と同じですが、労災保険の趣旨から同一使用者に使用される労働者相互の災害、たとえば、運転手の過失で上乗り労働者が死傷した場合は、求償をさし控えることになっています。また、被害者が労災保険の給付をうける前に、加害者から給付の同一の事由について損害賠償をうけた場合は、政府は、その価額の限度で補償の責を免れ、給付を行わないことになっています。ただし、年金給付については、支給を行わない期間は3年を限度としています。
*手続き---「第三者行為災害届」をできるだけ早く「労働基準監督署」に提出します。

自賠保険と支払いとの調整

自動車事故の被害者が労災保険の給付も、自動車損害賠償責任保険の保険金も請求できる場合は、どちらを先に受けてるかは被害者の意志によるもので、拘束することはできません。しかし、労災保険と自賠保険では、てん補する損賠の内容も共通する点が多く、その結果、労災保険では求償や保険給付の控除という取扱いが行われることになります。そこで労災保険と自賠保険とのいずれを先にうけるかについては、自賠保険の保険金の支払い内容等を考慮して、両方の保険の間で支払いの順序などを調整する取り決めが行われ、原則として、自賠保険の支払いを労災保険の給付に先行して行うことになっています。

まず、労災保険では、給付の請求があると、労働基準監督署は自賠保険の保険会社と連絡をとって、自賠保険の保険金(被害者が直接請求する場合は損害賠償額といいます)または、仮渡金の請求があったかどうか、支払期日、金額などを確かめます。その結果によって次のような取扱いとなります。

  1. 被害者に自賠保険から損害賠償金が支払われたか、15日以内に支払われる見込みの場合、または仮渡金の請求があった場合は、損害賠償額(保険金額)に達するまで保険給付が行われないことになっています。
  2. 加害者(自賠保険への加入者)に保険金が支払われたか、あるいは加害者から保険金の請求のあった場合には、被害者に実際に支払われた損害賠償額を調査し、その額に達するまで保険給付は行われません。
  3. 被害者に損害賠償額が支払われていないか、15日以内に支払われる見込みがない場合、または保険金、仮渡金の請求がない場合は、労災保険の給付が行われます。

なお、保険会社から回答があったあとで、被害者から損害賠償額の支払いの請求が行われた場合には、

  • すでに労災保険の給付の支払いを開始している場合は引き続き労災保険の給付を行い、
  • 保険給付の支給を開始していない場合でも、自賠保険の支払いがすみやかに行われる見込みがある場合を除き、自賠保険に先行して労災保険の給付を行う。
ただし、年金給付については自賠保険の支払いを先行させることになっています。

Q&A

Qひき逃げや無保険車両による事故など責任保険等の取扱いが受けられない事故の場合、政府の保障事業を利用することができるそうですが、その利用方法について教えてください。

A各任意保険会社が窓口(自賠責保険を取り扱っている保険会社ならどこの保険会社でもよい)となっていますので、そこから手続きのための資料を取り寄せ基本的に自賠責同様の手続き内容で利用します。この場合でも治療費、慰謝料等を含めて120万円(死亡3,000万円)が限度となっています。