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運動における練習の効果

練習の目的は、競技に影響する一連の筋肉の強化や技術の習得などになります。そこで最も大切なのは、運動パターンの記憶になります。一連の動作を効率的かつ瞬発的に筋肉に出力させることが目的になります。試合などの緊張状態ではいつも以上の力が出たり出なかったりしますが、精神的影響を及ぼすのも神経のメカニズムを理解することで謎が解けてきます。なぜ筋肉の調節(感覚)が難しいのかなども解説していきます。あまり専門的な用語を使いすぎないように注意しながら解説していきます。

1.運動神経と感覚神経

運動神経とは、脳から出た電気信号が目的の筋肉に到達し手足を動かすという伝導路になります。電車で例えると、脳が東京駅で千葉駅を足に例えた場合、東京駅から千葉駅に向かう下り線のようなものです。

逆に千葉駅から東京駅向かうような上り線は、人体でいえば感覚神経と呼ばれます。脳から出る神経を運動神経(遠心性)、脳へ戻る神経が感覚神経(求心性)です。

そこで、運動神経は目からの情報や各感覚器官からの情報など(求心性)をやり取りし調節をしながら運動を行います。そこで錐体路と錐体外路系の登場です。

2.錐体路と錐体外路系

錐体路とは延髄で錐体と呼ばれる隆起をつくることからこの名がついています。その錐体を通らない神経路を錐体外路と呼びます。ただ、専門用語なのでなかなか入ってこないと思いますので、錐体路は運動神経、錐体外路系は運動補助系と勝手に使わせていただきます。

運動神経(錐体路)と運動補助(錐体外路)系を簡単にサッカーで例えると、チームがゴールを奪うという行為において、FWがシュートをしますが、そのFWがシュートしやすいようにMFやDFがアシストをしてチームとして機能している状態です。選手が運動神経だとすると、監督やコーチが運動補助系になります。FWを始め選手がスムーズにゴールを決めるために、誰がどのように動くのかなどを支持をだしチームで目的を果たすような考え方です。

電車で例えると、東京から千葉までの区間で、上り線が感覚神経で下り線が運動神経と例えました。運動神経(錐体路)と運動補助(錐体外路)系は運動神経なので下り線で例えると、電車が線路を走って目的地に向かいますが、その状態が運動神経(錐体路)といえます。しかし、ただ走っているだけでは、各駅にも止まれないし信号も踏切もあります。確実に事故が起こりそうですね。でも、運転手が速度を調節し時間やルールを守り、コントロール室で運航を管理し、道路では遮断機が下り、駅では安全を確保しながら運行すれば事故もなくスムーズになります。この働きが運動補助(錐体外路)系といえます。

目的地へ走る電車を運動神経(錐体路)、スムーズに走るためにアシストする機構を運動補助(錐体外路)系に例えると分かりやすと思います。

運動神経の伝導路

ちからについては、大きな力で持ち上げるなど筋肉に負荷をかけるような場合は、運動神経の発火頻度を増大させる必要があります。発火頻度が多ければ多いほど力を出せます。でも筋力以上に出せないどころか、100%の力が出ないようになっています。これは筋肉に続いて付着している腱に力を測るセンサーがあって、筋肉が引っ張られ過ぎると抑制させる信号を出すためです。火事場の馬鹿力などでは、リミッターが外れたようにいつも以上の力がでます。興奮状態では、運動補助(錐体外路)系からの信号が届き抑制させる信号に関係なく発火頻度を増やせるため力を出せます。感情は運動補助(錐体外路)系と密接に関係があります。

この状態も電車に例えると、ヒトの数が力だとした場合、下り線で乗車率が100%超えだったとしても、これ以上乗れない時は駅員さんに降ろされたり乗せてもらえなかったりします。120%乗る事ができたとしても安全のために駅員さんにより抑制がかけられます。ところが緊急でどうしても多くの乗客を乗せたい場面に遭遇したら、乗れるだけ乗せようと駅員さんたちも頑張ります。運動補助系の働きはそんな感じです。

実際の動作においてよく例えられるのが、生卵をつかむ動作です。割れないように優しく掴みますよね。予備知識があると、強く掴むと割れるということを知っているから優しく掴みます。もし、鉄球のような卵があったら強く掴んで割れると思います。鉄球は重いから強く掴んでしまいがちですよね。

この卵を掴む動作には、簡単に2つの回路が関係しています。脳から卵を掴むという命令で筋肉を動かすという回路が1つです。これが運動神経(錐体路)です。そしてもう一つの回路は、卵を割らないように適度な強さで掴むという回路です。これが運動補助(錐体外路)系です。実は、あらゆる動作には動きを制御する回路が自然と働き、自分では意識していなくてもスムーズな動作が出来るようになっています。視覚による補正も同時に行われます。

技術や技の習得でもっとも大切な回路が運動補助(錐体外路)系と呼ばれるものです。ゴルフのパターなどで、適度な距離の調節を行いますが、この力加減でも大いに活躍します。歩くという行為も、運動補助(錐体外路)系がなければ相当難しい動作になります。右股関節を曲げると同時に膝を曲げると同時に左足で地面を蹴って前方へ体重を移動させてと、一つ一つの動作をすべて命令で動かすと考えただけでも大変さが分かります。この歩行という動作も無意識にスムーズにできるのも運動補助(錐体外路)系が働いているからなのです。

3.筋肉のセンサー筋紡錘・腱器官

運動神経(錐体路)と運動補助(錐体外路)系が少し分かってきたところで、もう少し掘り下げて解説していきたいと思います。錐体路は運動神経ですが、この経路は直接(脊髄で一度繋ぎかえます*ここはポイントです)筋肉に連絡し筋肉を収縮させます。

ただ運動神経だけでは、肘を曲げるという動作にしても、どれくらいの強さでどれくらい曲がったのかなどの情報がありません。その情報を伝えるのが筋肉の中にある筋紡錘というセンサーと、筋腱移行部にある腱器官です。

脊髄神経と筋紡錘、腱器官のイラスト

この筋紡錘は筋肉の場所により数も違います。大きい筋肉など、どちらかとえいば力を必要とするような筋肉には筋紡錘の数は少ないです。筋紡錘が最も多い筋肉は虫様筋といって指の筋肉になります。人間は指を使って緻密なものを作り今日まで発展してきました。器用に指先を使う方は、この筋紡錘のコントロールが上手だといえます。

4.感覚とは

物を取る動作においても、どこの筋肉を動かして・・・などと考える事はありません。標的を見て物を取りに行くと、自然とそれに必要な筋肉が適度な強さで収縮し目的を達成します。競技においても同じことがいえます。ボールを投げる動作でも必要な動作を意識することがあっても必要な筋肉を意識することはありません。

キャッチボールでも、相手の胸に投げる動作は感覚で投げます。サッカーでも、相手の足元を狙ってパスを出す際も感覚で行われます。

仕事の技術職などでも同じことがいえます。最初は運動パターンがまったく構築されていないので、一つ一つ回路を作りながら覚えていきます。必要のない筋肉にも緊張があり、仕事を覚えるまではやけに疲れると思います。それが月日が経ち同じ作業を繰り返し行ううちに運動パターンが構築され、必要のない筋肉はあまり使われなくなりスムーズな動作が出来るようになります。疲れ方も軽減されていきます。必要最小限の筋肉で省エネ活動ができるようになるためです。

運動神経(錐体路)は意図した動作の回路と呼べます。肘を曲げる、膝を伸ばす、物を取る、歩く、走る、投げるなどです。この神経路は単純な経路で脳の運動野から運動神経として手足を動かします。

運動補助(錐体外路)系は、意図した動作に応じた筋肉を収縮させる働きといえます。物を取る動作においても、一つの筋肉だけが収縮するのではなく、多くの筋肉が協調しながら収縮し目的を果たします。この一つ一つの筋肉の収縮具合を調節しているのが錐体外路(運動補助)系なのです。

つまり、意識を変えるだけで主に使う筋肉が変わるのです。例えば、速く走りたいと思って、曲げた膝を伸ばす方(伸展)に力を入れて速く走ろうと思って走る人と、膝を曲げる方(屈曲)に力を入れることで速く走れると思って走る人とでは、筋肉の発達する部分は大きく変わります。ちなみに後者のほうが速く走れるのですが、この原理はまたの機会にご紹介します。

単純な筋トレによる筋力アップは、競技に必要な筋肉の邪魔になる可能性さえあります。かつて、作新学園時代の江川卓投手は、投げる筋肉の邪魔になると思ったので筋トレは一切やらなかったと言っています。それでもあれだけの剛速球が投げられたのですから、パワーアップ=筋トレと単純に結び付けられるものではないのかもしれません。

これらの感覚は小脳の働きも深く関係があります。

5.小脳のはたらき

小脳のはたらきには、運動の調節や姿勢の保持などがあります。さらに運動学習機能があり、熟練した運動においての運動パターンの記憶などです。慣れていない運動は、たとえば視覚から入った情報が大脳へ送られて、思ったような動作が出来ないと補正し、参照しながらぎこちなく行われていきます。

それが練習により運動パターンが小脳に記憶されるようになると、視覚などの情報は大脳へ参照されることなく小脳に形成されたプログラムに沿って、迅速かつ円滑に運動が行われるようになります。

よく、体で覚えていると職人さんが口にするのは小脳の働きによります。 視覚の情報を大脳まで届けたのち、小脳のプログラムで処理を行い視覚の情報と小脳とで目的の補正を行いながら動作するためです。

この小脳の働きも、運動補助(錐体外路)系に属します。

6.腱反射からみる感覚の難しさ

腱反射で有名なのは、椅子に座ってダラリとした状態でひざ下を叩くと、ひざ下の足が勝手に上に跳ね上がる動作です。これは無意識に足が動くわけですが、この神経経路は反射弓といい脊髄反射になります。叩かれた感覚は大脳へ投射されますが、筋肉が引き伸ばされたという情報は脊髄を回ってくるだけです。

ひざ下を叩くと、大腿四頭筋(モモの筋肉)が引っ張られます。この時に筋紡錘が一緒に伸ばされます。筋紡錘が急に伸ばされると電位が発生し脊髄に電位を戻します。運動神経(錐体路)が脊髄で神経を繋ぎ変えるポイントがありましたね。そこに電位を戻し、運動神経(錐体路)で繋ぎかえたポイント(前角細胞といいます)の電位が増大し大腿四頭筋を収縮させます。これが腱反射です。

反射弓(伸張反射)のイラスト

この反射は神経損傷のレベルを診る際に重要な検査となります。実際の生活において、急に腱が伸ばされることは滅多にありませんので、意図的でなければなかなか遭遇しない反射ではないかと思います。動的ストレッチではこの反射を利用し、筋肉が収縮しやすいようにします。

感覚の難しさと腱反射はまったく関係なさそうですが、筋紡錘の働きにおいて重要な意味を示します。つまり筋肉は筋紡錘の影響を大きく受けるということです。前節でお話しした生卵でも、掴む行為は運動神経(錐体路)ですが、優しく掴むのは運動補助(錐体外路)系の調節と説明しました。この運動補助(錐体外路)系は筋紡錘の調節で、筋肉の緊張を調節しているのです。

筋紡錘を一定の緊張に保ち、その緊張以上に筋肉が引き延ばされれば(筋肉が緩めば)脊髄に電位(Ia線維)を戻し、前角細胞への発火頻度を促進させ筋肉を収縮させます。収縮が強すぎれば腱にあるセンサーが電位(Ib線維)を戻し前角細胞の発火頻度に抑制をかけます。これが力加減の調節の秘密です。力加減の感覚は、上位の運動補助(錐体外路)系の統率のもと、脊髄レベルの反射弓による調節も行われていることになります。

膝を曲げる単純な動作でも、2度続けて同じ軌道はたどらないと言われるほど運動の調節は難しいのですが、かつてPL学園高校時代の桑田投手が、1年生の時、10球連続でアウトローへ投げたら終わりという練習で、わずか10球で終わらせたという逸話も驚かされるばかりです。普通は3球~6球連続がやっとだそうです。

運動の一部は反射弓を利用した調節のため、力加減などの動作で誤差が生じるのは筋紡錘を調節し、その緊張状態を促進と抑制で筋力を調節するためです。まったく同じ動作を二度続けることが至難の業なのはそのためなのです。

スポーツ選手でも有名な選手は練習の虫とよく聞きます。ひとつの運動パターンを確実に記憶するのは大変な作業なのです。

練習が嫌いな職人さんやスポーツ選手は、練習の意味を知り、練習に意味を持ち、今より更なるレベルアップが出来ます。これは伸びしろですね。