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診察の意義

患者は、精神的もしくは肉体的な異常を感じて、医療機関を訪れてきます。その異常がなんであるのかを判断してもらい、それを取り除いてもらうことを、患者は当然ながら期待しています。

そこで医療機関では、患者がもっている精神的・肉体的異常を、まず正確に把握しなければなりません。こした医療行為を診察といいます。診察によって、患者が健康に復帰するために行う適切な処置、すなわち治療を施すための根拠が得られることになります。診察では、患者の訴える自覚症状(愁訴)を聴取することから始まり、患者の身体に現れている異常な他覚的所見(徴候)を眼でみたり、手でさわったりして視察します。

ついで、診察を通じて患者の異常状態なり病名を判断します。この医療行為を診断といいます。診察だけで判断できることもありますが、種々の臨床検査を加えて診断するケースも多い。

患者によっては、病名がただちに診断できます。しかし、多くの場合はいくつかの疾患を念頭におき、それらのなかからその患者にもっとも妥当と考えられる疾患名を判定しいきます。この過程を鑑別診断といいます。鑑別診断は、誤診を防ぐためにきわめて重要です。

診断への過程

正確な診断を下すには、細心の注意をはらって診察を行います。わずかな異常所見を見落とさないためには、一定の方式で系統的に診察を進め、必要な臨床検査を組み合わせて診断を行います。

実際の診療は、

  1. 患者の自覚症状を聞く(問診)
  2. 他覚的所見を診察する
  3. 必要に応じた臨床検査を行う
  4. それらに基づいて診断・鑑別診断を行う
  5. 診断された疾患に有効な治療を開始する
  6. 治療効果をみたり、副作用や合併症に注意しつつ経過を観察する
といった順序で行われます。

診断の進め方とその過程

診察の進め方

  1. 診察の種類
    診察には、次のようなものが含まれます。
    問診
    身体の診察(視診、打診、聴診、触診、生命徴候、知覚検査、反射検査)
    診断を誤らないためにも、また合併症を見落とさないためにも、原則として、あらゆる患者についてこれらの診察法をすべて実施します。ただし、患者の状態や疾患の種類によっては、適宜変更することもあります。


  2. 診察の進め方と心がまえ
    まず患者の訴える自覚症状を聞きます。この問診によって、ある程度は病態や疾患を絞り込めます。ついで身体の診察に移ります。視診から始め、病変のある部位を中心に触診をします。臓器によっては打診や聴診を行います。また身体測定、知覚検査、反射検査を行います。

    患者はなんらかの異常があって医療機関を訪れます。肉体的苦痛に加え、精神的にも不安定感や、ときには恐怖感すら覚えています。つまり、患者は精神的・肉体的に弱者の立場に立たされています。また、患者に問診したり身体を診察する過程では、患者のプライバシーに接することが少なくありません。こしたことから、患者を診察するときには、つねに真摯な態度を忘れず、温かみのある親切な行動をとり、患者から信頼され、あるいは尊敬されるように心がけなければなりません。これによってはじめて患者の協力が得られ、正しい診断、適切な治療が可能になります。


  3. 評価と記録
    診察で得た所見は、専門的な見地から客観的に正しく評価し、そのつど診療録(病歴、カルテ、チャート)に正確に記録します。

    患者の症状や他覚的な所見は、時間が経過するとともに、あるいは治療の影響を受けて刻々と変化します。初診時に認められた症状や所見が改善されて消失したり、逆に憎悪したり、あるいは新しい所見が出現したりします。これらの変化を的確に把握し、治療の指針にする必要があります。このため診療録には、要領よく、正確に記録していおくことが重要です。そして、あとで見てもよく理解できるよう簡潔に整理しておきます。

    診療録は診察の所見だけでなく、治療内容や治療後の経過も整理して記録します。記載漏れのないように、一定の方式で記録することが望ましい。

    診療録は患者の疾病に関する重要な情報として大切に保管します。なお、患者のプライバシーを侵害することのないよう、関係者以外に内容が漏れない配慮が必要です。

問診

1.問診の意義と方法

意義

問診とは、患者の訴えを聴取するとともに、種々の質問をして、患者の症状を正確に把握する診察法です。”問いかけをして診察する”との意味です。

通常は、患者との対話という形式で行われます。ただし、患者の意識や精神状態に障害があったり、小児や知能程度の低い者などでは、患者の家族や知人から情報を得なければならないこともあります。この場合には、情報がかならずしも正確に伝わらないおそれもあるので、十分な注意が必要です。

問診を進めるにあたって、もっとも気を配るべきことは、患者が正確に訴えを述べることができる環境を設定することです。このためには、言葉使いや身だしなみにも十分注意し、温かみのある態度で患者に接し、患者との間で信頼関係を確保することが大切です。問診で知り得た内容は、けっして関係者以外に漏らさないことも重要です。


方法

問診で聴取する内容は、

  1. 患者像および社会歴
  2. 主訴
  3. 現病歴
  4. 既往歴
  5. 家族歴
などです。これらは、疾患を中心にした患者の歴史ともいうべきものです。

このうちもっとも重要なのは主訴と現病歴です。したがって、患者に問診するときには、まずこのことから質問を開始します。
「どうなさいましたか?」
「いつから、どんなふうに具合が悪いのですか?」
といったような質問を行っていきます。患者が訴えている症状や、これまでの経過をよく聞けば、診断にきわめて有用な情報が得られます。

しかしながら、過去にかかった疾病や、家系内に発生している疾患が現在の疾患に関係している可能性もあり、既往歴や家族歴も聞き逃してはなりません。喫煙歴飲酒暦、あるいは常用薬とか嗜好品などが発病に関係していることもあり、かならず確認しておきます。また患者は悩める”人”であり、病態を正確に認識するうえで、生活環境や生活歴、職業などといった社会歴も意義深い。

問診は系統立てて行い、診療録に要点を整理して記録します。患者によっては、重大な症状をあえて申告しなかったり、逆に重要でない些細な症状をおおげさに表現することもあります。問診では、専門的見地から、患者の訴えを客観的かつ的確に判断する必要があります。

ある症状が認められない、といった陰性の所見が重大な意味をもつこともあります。そこで、「こういう症状はありませんか?」と患者に質問をして、回答を引き出すこともあります。ただし、こうした場合には、最初から特定の疾患を想定して、その疾患だけに都合のよい答えを誘導することがないよう注意します。問診は、あくまでも客観的に行わなければなりません。

  1. 患者像および社会歴
    氏名、生年月日(年齢)、性別、住所、職業など、患者像をまず確認します。さらに、患者を取り巻く生活環境を、過去から現在に至るまでを確認します。
    住所は、現住所だけでなく、出生地や以前の居住地も確認しておくとよい。海外渡航の経験についても聞いておきます。公害による環境汚染や、風土に応じた特有な寄生虫症が、疾病の発生に直接あるいは間接的に関係していることがあるからです。

    職業は、たんに職種だけでなく、実際の仕事内容と従事した期間をくわしく聞きます。重労働による腰痛症、手先作業によるキーパンチャー病や頚腕症候群、砂岩坑夫や石工の塵肺症など、仕事の内容そのもの、あるいは職場環境が疾病発生の因果関係になっていることも少なくありません。

    生活環境としては、家族構成、住宅環境、日常の習慣などについて聞きます。家庭内の問題や経済環境をめぐる精神的ストレスなどが、疾病と関連することもあります。心配事とか不満の有無についても確認します。


  2. 主訴
    主訴とは、患者が訴える自覚症状のなかでも、治療を求めて医療機関を訪れる直接の動機になるものをいいます。主訴は一つだけでなく、複数のこともあります。診療録には患者自身の表現、あるいはそれになるべく近い表現で記載します。たとえば、「右手が痛い」「手足がしびれる」などです。なお、神経症(ノイローゼ)の患者では主訴が多彩で、しかも時間がたつにつれて変化するのが特徴です。


  3. 現病歴
    現病歴とは、患者の訴える症状が、いつから、どのように発生し、現在までどういう経過をたどってきたかをさします。いわゆる、発病の日時、様式、持続期間、経過などを患者からくわしく聴取します。

    発病の日時は、何月何日何時と特定できることもあります。しかし、何か月前ころからとか、何年前ころからとか、明確でないことも多い。突如として発病したのか、徐々に起きてきたのかを聞くことも重要です。疾病によって、発病の仕方に特徴があるからです。

    たとえば、両下肢の麻痺を主訴とした患者でも、交通事故などの外傷や、出血・血栓など血行障害が原因の場合には突如に、しかも急激に進行してきます。これに対し、変性疾患腫瘍などの慢性疾患では徐々に進行してくるので、発病の日時を特定できません。

    発病してから受診までの経過における症状の推移についてもくわしく聴取します。症状がしだいに憎悪してきたのか、消長しているのか、軽快しているのか、あるいは主症状以外に随伴する症状は出現してないか、などを確認します。受診してくるまでに他の医療機関で治療を受けている場合には、その治療内容や治療後の経過などについて照会しておきます。


  4. 既往歴
    既往歴では、出生してから現在に至るまでの患者の健康状態、罹患した疾患について聴取します。過去の疾患や処置が原因となって疾病が発病することもあります。たとえば、幼児期にかかったリウマチ熱が心臓弁膜症の原因になったり、扁桃炎後の腎炎、輸血後の血清肝炎などがあります。

    具体的には、出生時の状況、幼児期の健康状態、ツベルクリン反応、BCG接種の有無、予防接種、輸血の有無、過去に罹患した疾患外傷などについて聴取します。この場合、たんに病名だけでなく症状、治療内容、経過などについても聴取するようにします。女性では月経、妊娠、分娩、流産などについても聴取します。タバコ、アルコールなどの嗜好品や、常用薬の有無についても確認します。


  5. 家族歴
    家族歴では、祖父母、両親、同胞、配偶者、子どもなどを中心に、その健康状態、罹患した疾患、死亡時年齢、死因などを聞きます。
    家系内に多発しやすい疾患としては、血友病などの遺伝性疾患のほか、体質や同じ生活環境のために家族内に発症しやすい疾患、家族内で感染しやすい疾患などがあります。とくに高血圧糖尿病脳血管障害代謝疾患アレルギー性疾患精神神経疾患内分泌疾患悪性腫瘍奇形などに注意します。