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頭部、顔面の視診

1.大きさと形

頭が異常に大きいものは大頭症、逆に小さすぎるものを小頭症といいます。

大頭症は脳室に髄液が大量に貯留した水頭症や、先端肥大症、変形性骨炎などでみられます。先端肥大症では頬骨、顎、上眼窩縁が突出し、耳、鼻、口唇などが肥大しています。

小頭症は、脳の発育障害などでみられます。


2.顔貌と顔色

病変によって特徴のある顔貌を示すことがあります。顔色は、皮膚の状態の項のような変化が顔面に現れることがあります。いずれも視診で確認します。

  1. 苦悶状顔貌
    疼痛など強い苦痛があるとき、顔をしかめ、苦痛の表情をとります。

  2. 有熱顔貌
    高熱があるとき、顔面が熱のために紅潮しています。

  3. 無欲状顔貌
    表情に活気がなくなり、眼光は鈍く、周囲に対して関心を示さない状態です。敗血症、腸チフス、栗粒結核などの高熱を出す重篤な疾患や、精神病、脳疾患、中毒などのさいにみられます。

  4. 仮面様顔貌
    顔面筋が硬直して運動が減少し、表情が乏しくなって能面のようになった顔貌をいいます。パーキンソン病に特徴的です。

  5. ヒポクラテス顔貌
    消耗性疾患によって死期が近い場合、表情が乏しく、眼窩がくぼんで眼光が鈍く、頬がくぼんで鼻がとがってきます。古代ギリシャの医聖ヒポクラテスにちなんでいます。

  6. 満月様顔貌
    クッシング症候群、あるいは副腎皮質ステロイド剤を大量に長期間服用している患者では、副腎皮質ステロイドホルモンの影響で顔全体が丸くなり、赤く、かつ多毛になります。顔が満月のように丸みをおびることから、満月様顔貌とよばれます。


3.顔面の異常運動

異常運動が顔によく現れる疾患があります。たとえば脳動脈硬化症、パーキンソン病、慢性アルコール中毒などでは頭部が小刻みにリズミカルに揺れ(振戦)、しかも精神的な緊張で増強されます。

精神的興奮、三叉神経痛、慢性アルコール中毒、麻薬中毒などでは顔面筋がピクピクと小さく痙攣することがあります。またチックは顔面筋にみられやすい。


4.眼瞼、眼球、結膜

全身性の浮腫、眼球や眼瞼の炎症などでは上眼窩に浮腫が出現します。眼瞼結膜は貧血で蒼白になります。

黄疸では眼球結膜が黄色に染まります。結膜炎では充血して発赤し、粘液あるいは膿性の分泌物が出ます。過労のさいにも、結膜下に出血することがあります。

甲状腺機能亢進症〔バセドウ(Basedow)病〕では眼球が突出し、一見すると驚いたような表情になります。

動眼神経麻痺では上眼窩が下垂し(眼瞼下垂)、顔面神経麻痺では逆に眼を閉じられません。

顔面神経麻痺では、眼を閉じると麻痺がある患側の眼球が上方、かつやや外方へと回転します〔ベル(Bell)現象〕。

ベル現象のイラスト

重症筋無力症では上眼瞼挙筋が疲労し、とくに午後から夕方にかけて眼瞼が下垂して、一見すると眠たそうにみえます。

眼球運動をつかさどる動眼神経、滑車神経、外転神経に麻痺が起きると眼球運動に支障が出ます。一側の麻痺では物が二重にみえてしまいます。これを複視といいます。

動眼神経運動核の核上性の障害では、両側の眼球が一方向へ向けて偏位します(共同偏視)。ただし、この場合には両眼の視軸は平行しているので、複視は起こりません。

斜視は、一眼が外方(外斜視)または内方(内斜視)へ偏位した状態で、先天性のほか、眼筋麻痺でも起きます。

眼球が一定方向へピクピクと反復性に迅速に動く不随運動を眼振といいます。水平方向や垂直方向のほか、回転性のこともあります。極度の近視慢性アルコール中毒でもみられることがありますが、脳血管障害でも出現することがあります。


5.鼻

大量のアルコール常飲者や肝硬変患者では、鼻尖部の細静脈が拡張して発赤しています(赤鼻性痤瘡)。分泌物や鼻出血の有無にも注意します。


6.口腔、舌、咽頭

まずは口唇を観察します。兎唇は先天性奇形で、一側のことも両側性のこともあります。ビタミンB欠乏症では、口唇や口角に亀裂やびらんができます。

口唇ヘルペスは有痛性の小水疱で始まり、数日以内に乾燥して痂疲を残して治癒します。単純ヘルペスウイルスが原因で、過労や高熱のあるときなどに発病しやすい。

口唇の色調の変化としては、蒼白(貧血)、チアノーゼ(先天性心疾患、肺炎など)、暗赤色(多血症)があります。

ついで口を大きく開けてもらい、舌、口腔粘膜と咽頭の視診を行います。舌圧子を使って舌を軽く押さえると、口腔粘膜と咽頭の観察がしやすくなります。

舌は局所疾患だけでなく、種々の全身疾患に伴って変化が起きます。高熱が続いたり、抗生物質を長く服用していたりすると舌苔が現れます。

猩紅熱では著名な発赤とともに乳頭が腫脹し、いわゆるイチゴ舌の状態になります。

悪性貧血では舌乳頭が萎縮して表面が平滑となり、蒼白で光沢を有するようになります。しばしば舌炎を合併して発赤と疼痛を起こし、ハンター(Hanter)舌炎とよばれます。

口腔粘膜では貧血、黄疸、色素沈着などを観察します。アフタは特有の粘膜疹で、直径数㎜~1㎝の小水疱が破れて浅い潰瘍をつくったもので、周囲に発赤があります。疼痛が強い。

麻疹では頬粘膜に境界が鮮明な青白色の隆起した小さな斑点を生じ、そのまわりに小紅暈があります。コプリック斑といい、麻疹を診断するうえで有用です。

咽頭炎では咽頭全体がびまん性に発赤し、浮腫状となって自発痛と嚥下痛を伴います。猩紅熱では発赤が著しい。ジフテリアでは咽頭が発赤するだけでなく、汚い乳白色~灰黄白色の偽膜形成が特徴的です。

扁桃は小児期には肥大していますが、成人では萎縮してきます。扁桃炎になると扁桃が発赤して主張し、腺窩から滲出物が出て白色~黄白色の斑点状になっていることがあります。しばしば高熱を出し、扁桃の自発痛と嚥下痛を伴います。

頸部の視診

特有な形態と代表的な疾患

斜頚とは、頭部がつねに一側へ傾いている状態です。先天性に胸鎖乳突筋が拘縮した筋性斜頚のほか、炎症、骨奇形、神経疾患、熱傷後の瘢痕などでみられます。ターナー(Turner)症候群では特有の翼状頚がみられます。


腫瘤

頸部の正中には甲状腺があります。バセドウ病、慢性甲状腺炎などでは甲状腺がびまん性にはれます。甲状腺癌では硬い腫瘤を触知します。

甲状腺腫のイラスト

また頸部ではリンパ節腫を触知することがあります。ウイルス感染症、結核、悪性リンパ腫などでリンパ節が腫脹してきます。


頸部の運動

頭部を前後、左右に曲げてもらったり、左右に回転してもらい、運動が普通に行われるかどうかを調べます。ただし、頸椎の疾患や損傷のあるときには、頸髄に障害を与えないように十分な配慮が必要です。

髄膜炎では前後への運動が障害されます。とくに頸部での運動が著しく制限され、頸部強直とよばれる状態になります。頸部筋肉の炎症、破傷風、パーキンソン病、頸椎疾患などでも頸部の運動が制限されます。

重症筋無力症では筋力が減退して、頭をまっすぐに支持できないことがあります。


胸部の視診

患者にまっすぐに座ってもらい、前方、側方、そして背部から観察します。視診での要点は、皮膚の性状、皮下脂肪、筋肉の発達、胸郭の形や大きさ、呼吸運動、心尖拍動、乳房の変形などです。


胸郭の変形

  1. 樽状胸
    胸部の前後径が横径に比べて長くなった状態で、ビール樽のようにみえます。肺気腫患者にみられます。

  2. 扁平胸
    胸郭が狭長で、前後に扁平な状態です。病的ではありませんが、いわゆる無力型体型の人にみられます。

  3. 靴工胸
    剣状突起がやや陥凹した状態で、靴工などのように胸に道具を当てて仕事をする人や、先天性にみられます。

  4. 漏斗胸
    胸骨下部が著しく陥凹した状態で、マルファン症候群でもみられます。

  5. 鳩胸
    胸骨とくに下半部が突出し、両側が扁平な状態で、くる病などでみられます。

腹部の視診

腹部の所見を表現する場合、臍を通る水平線と垂直線で4区分に分け、それぞれ右・左上腹部と右・左下腹部とすると分かりやすい。さらに細かく区分して表現することもあります。

疾患によっては特定の部位に所見がみられることがあり、診断の参考になります。

腹部の分画、メズサの頭のイラスト

腹壁の皮膚

腹壁の皮膚では、黄疸発疹などに注意します。

腹壁静脈の怒張は、肝硬変下大静脈血栓症などで門脈や下大静脈に血行障害がある場合にみられます。正常者では、腹壁静脈の血流は臍より上では上方へ、臍より下では下方へ向かいます。

門脈が閉塞されると、拡張して蛇行した静脈が臍から周囲に向かって放射状に走り、”メズサの頭”とよばれます。

クッシング症候群では肥満のために腹部の皮膚が過度に伸展し、赤色の皮膚線状がみられます。妊娠を経験した婦人では、白色の皮膚線状がみられます。


腹部陥凹

高度のやせや悪質液では腹部全体が陥凹します。食道癌胃癌などで狭窄症状が長期間にわたった場合にも、腸管が空虚となり、腹部全体が陥凹してしまいます。また急性汎発性腹膜炎髄膜炎でも腹部陥凹が起きます。


腹部膨隆

腹部全体の膨隆は肥満、腹水、鼓腸、妊娠、腹部腫瘤、卵巣嚢胞などでみられます。胃癌、肝癌などの腫瘤や急性胃拡張などでは、局所的に腹部が膨隆します。