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背部の視診

脊柱の後方への弯曲を後弯、前方への弯曲を前弯、側方への弯曲を側弯といいます。生理的状態では頸椎と腰椎は経度に前弯があり、胸椎では経度の後弯があります。


脊柱の変形

胸椎の高度の後弯や、頸椎と腰椎の後弯は病的で、脊椎骨関節炎などでみられます。脊柱が局所的に鋭く突出しているときは突背とよび、脊椎カリエスが原因のことが多い。

強直性脊椎炎では、脊柱が竹の棒のようにまっすぐになります。

脊柱が左右に偏位する脊柱側弯は、頻度の高い脊柱の変形です。側弯が高度の場合は容易に視診でもわかりますが、経度の場合は前屈位をとってもらい、観察します。棘突起線と垂直線の関係、肩甲の位置、体幹側縁線、肋骨隆起などを調べます。


四肢の視診

四肢では皮膚の性状、変形、運動などを観察します。

上肢の変形

左右の上肢は普通対称性ですが、利き腕のほうが長く太いこともあります。左右の非対称は先天的異常、外傷、骨折浮腫などでみられます。


手の変形

骨折や外傷のほか、神経疾患、骨・関節疾患、代謝性疾患などで発症します。

  1. 猿手
    脊髄性進行性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、末梢性正中神経麻痺などでみられる手の変形です。手の母指球と小指球の萎縮が起こって扁平となります。

    母指は短母指外転筋の萎縮と麻痺によって内転位をとり、母指と他の4指が同一平面上にあるようになります。

  2. 鷲手
    筋萎縮性疾患、末梢性尺骨神経麻痺などでみられます。骨間筋や虫様筋が麻痺して、手背骨間腔は筋萎縮のため著名に陥凹し、中手指節関節は背屈し、遠位指節間関節が屈曲します。

    左右の母指と示指で厚紙や薄い雑誌を左右に引くと、尺骨神経麻痺で母指内転筋に麻痺がある場合には、麻痺側では長母指屈筋が代償して母指が屈曲します〔フローマン(Froment)徴候〕。

  3. 下垂腫
    橈骨神経の末梢性麻痺があるときにみられます。手を伸展させることができなくなり、手関節が垂れ下がってしまいます。
  4. 手指の変形イラスト

  5. 慢性関節リウマチによる手の変形
    慢性関節リウマチの患者では、手指の関節が慢性的に炎症性変化を起こし、特有な形態をしばしば示します。
  6. 関節リウマチによる手の変形イラスト

  7. ヘーベルデン(Hebarden)結節
    手の遠位指節間関節の辺縁背側にできる小さい結節状の骨隆起で、変形性関節症の一変形です。
    中年以降の女性に発病しやすく、経度の屈曲位拘縮を起こすこともあります。
  8. ヘーベルデン結節の解説イラスト

  9. 鋤(すき)手
    先端肥大症の患者では手が大きく、広く角ばった手掌と太い指のために、あたかも鋤のような形状を示します。

  10. クモ状指
    クモの脚のように指が細長くなった状態で、マルファン症候群でみられます。

  11. 太鼓ばち指
    手指の末節が太鼓の”ばち”のように肥大して、爪が前後左右からみても凸状になったもです。

太鼓ばち指とその疾患の解説とイラスト


下肢の変形

先天的にも、後天的にも下肢が起きる場合があります。骨・関節疾患、神経疾患、代謝性疾患などで変形がみられます。

  1. 内反膝、外反膝
    両膝を基本肢位に平行に並べ、両足の内果が接着しても両大腿骨顆が開いている状態を内反膝といい、O脚になります。逆になるのが外反膝で、X脚になります。くる病による骨軟化などが原因で起きます。
  2. 内反膝、外反膝のイラスト

  3. 尖足
    腓骨神経が麻痺すると足背が屈曲できなくなり、足尖が垂れ下がってしまいます。このため、歩くときには足を異常に高く持ち上げ、爪先から投げ出すようにして歩きます(鶏歩)。

    外傷後の変形や、長期臥床による不注意で起きる尖足位拘縮もあります。

  4. 踵足
    脛骨神経が麻痺して足が強く背屈した状態です。歩くときには踵だけで歩くようになります。

  5. 内反足
    足が下肢の正中線よりも強く内転した状態です。足外縁を用いて歩きます。

  6. 外反足
    足が外反し、足内縁を用いて歩きます。

  7. 偏平足
    足の長軸弓隆が低下してしまい、足のくぼみ(土ふまず)がなくなって、足底全体が地面につくようになった状態です。歩行時に疲れやすくなります。

  8. 凹足
    偏平足と逆に、足のくぼみが強くなった状態です。

  9. 外反拇趾
    足の母趾が強く外反し、第2趾と交差するような状態です。

下肢の変形のイラスト

異常運動

痙攣、振戦、舞踏病様運動、アテトーデ、ミオクローヌスなどの異常運動が下肢に出現することがあります。

けいれん

  1. convulsion
    てんかん性のけいれんです。強直性または間代性の収縮、脳の刺激症状を伴います。

  2. spasm
    痛みを伴いません。発作的な筋トーヌスの異常亢進を伴います。脳・脊髄・末梢神経の病変。

  3. cramp
    強い痛みを伴います。随意運動で誘発されやすい(こむら返りなど)。脊髄・末梢神経・筋の病変。

3つとも日本語にすると”けいれん”になります。

原因

  1. てんかん

    定義:「脳神経細胞の異常興奮によって引き起こされた、神経機能の反復性の発作性変化に特徴づけられた一群の疾患である」ということになります。

    しかし、これではなんのことだかよく分からないので、もう少し簡単にいうと、”脳神経の異常発射により、seizure(発作、つまり手足をつっぱらせたり、バタバタさせたり、舌をなめずりをしたりなど)が繰り返し起こる疾患”ということになります。

    代表的なのは意識を失ってけいれんを起こし、泡を吹く、という疾患です。全国に約100万人の患者がいると考えられ、生後から2歳までの間(小児人口の100~200人に1人)と思春期に最も多くみられます。


  2. 脳器質性疾患
    • 脳腫瘍
    • 頭部外傷
    • 脳血管障害(もやもや病や状静脈奇形を含む)
    • 感染症、炎症性疾患
    • 脱髄性疾患(多発性硬化症など)
    • 先天性奇形、先天性疾患
    • 周産期脳損傷

  3. 全身疾患・代謝異常
    • 先天性代謝異常(アミノ酸代謝異常、脂質蓄積症、ミトコンドリア脳筋症など
    • 低酸素血症(Adams-Stokes症候群など
    • 低血糖
    • 尿毒症
    • 電解質異常(低カルシウム、低マグネシウム、高ナトリウムなど)
    • ピリドキシン(ビタミンB)依存症

  4. 中毒・薬物
    • 中毒(鉛、ヒ素、リチウムなど)
    • 薬物(アルコールの中止、バルビタール系の中止など)

  5. その他
    • 熱性けいれん
    • ヒステリー

てんかんとけいれんの違いの解説イラスト

振戦(tremor)

比較的リズムがあり、振動性に拮抗筋群が交互に収縮するものです。振戦は、安静時振戦、姿勢時振戦と、大きく2つに分けられます。

身体を安静にした状態ではっきりするものが安静持振戦で、pill-prolling-tremor、老人性振戦などが含まれます。

  1. pill-rolling tremor
    丸薬を丸めるような運動で、安静時にみられ、Parkinson症候群に特徴的。四肢の遠位に著しく、随意運動時に軽快します。Parkinson症候群の振戦のうち、手指の症状です(下肢の症状としては、tapping tremorというのがあり、床を叩きます)。

  2. 老人性振戦
    老人性のもので、pall-rollingに似ていますがもっと細かく、安静時にみられます。随意運動で悪化します。頭、肩ごと震えます。

そして、一定の姿勢をとった状態で最もはっきりするのが姿勢時振戦で、本態性家族性振戦、中毒性振戦などが含まれます。

  1. 本態性家族性振戦
    安静時では現れず、四肢を一定位置に保持しようとすると出てくるもので、緊張・髄意運動により悪化します(姿勢時振戦)。

    Parkinson症候群の振戦などに比べ、細かく速く、遺伝性で多くは良性(病的意義が少ない)です。アルコールやβ-blockerの服用で軽快消失します。

  2. 中毒性振戦
    アルコール、ニコチン、甲状腺機能亢進症、尿毒症などで現れます。指、手にみられる姿勢時振戦です。

またひと口にいっても、本物から偽物までたくさんあります。一応、本物の振戦は規則正しく、拮抗筋が交互に収縮するものと解釈されます。


アテトーデ、pill-rolling tremorのイラスト

アテトーデ

舞踏病よりも遅く、持続性のくねるようなグロテスク(奇妙)な不随運動。屈曲ー伸展、外転ー内転などの組み合わせがゆっくりと交代するもので、随意運動で悪化し、トーヌスが亢進します。対側の尾状核被殻淡蒼球の障害によります。タコ踊りの感じです。


ミオクローヌス

ひとつまたは多くの筋の急激・短時間の収縮で、電撃様。安静時に悪化し、随意運動で軽減します。例えば、授業中にコックリと居眠りをしてしまったときに、突然、階段から落ちるようにガタンとして目を覚ました経験はありませんか?

あときの体がビクッとする感じがミオクローヌスです。また、しゃっくりも生理的な横隔膜のミオクローヌスと考えられます。病的発生機序は意見の一致がみられず、びまん性に大脳が変性する疾患に多くみられ、いろいろなレベルの障害で生じます(錐体外路系のアンバランスによるということです)。


舞踏病(chorea)

不規則で速く、非対称で無目的な踊るような不随意運動がみられます。急に始まり、持続は短いのが特徴です。安静時にみられ、随意運動で悪化し、トーヌスは低下しています。