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胸部の触診

胸部の触診も、他の部位と同様に皮膚や皮下組織を調べます。呼吸運動に伴う痛みなどの変化や、心臓の心拍などにも注意します。

1.胸部における結節、腫瘤、圧痛、骨の異常などの変化とその意義

皮膚や皮下組織の結節、しこりなどを調べます。女性では、乳腺症や乳癌などによる乳房の腫瘤を認めることがあります。

男性でも女性の乳房のように腫脹して硬い乳腺組織を触れることがあります。女性化乳房といい、肝硬変などでみられます。

胸痛を訴えている患者では皮膚、皮下、筋肉、骨などをよく触診します。本人の自覚がなくても肋骨骨折が起きていることがあります。圧痛や、呼吸に伴う胸郭運動による痛みの変化に注意します。


腹部の触診

胸部の触診は、腹壁の皮膚や皮下組織の状態の観察のほか、腹部内臓疾患の診断に重要です。

主要臓器

腹部の触診を行うにさいし、主要な臓器がどの位置にあるのかを確認しておき、それぞれの病変での触診の所見を理解していおきます。


  1. 胃は心窩部(胸中心部で骨のすぐ下〔みぞおち〕)にあります。通常では触知されませんが、胃炎胃潰瘍では心窩部に自発痛、圧痛があります。胃癌では、心窩部に硬い腫瘤として触れることがあります。

  2. 小腸
    臍部を中心に触診します。腸炎で圧痛があります。

  3. 大腸
    上行結腸は右腸骨窩、右側腹部で触診します。急性虫垂炎では、回盲部に圧痛があります。回盲部癌結核限局性腸炎では、右腸骨窩に腫瘤を触知することがあります。

    横行結腸癌は、臍部で上下に動く腫瘤として触れることがあります。

    S字結腸は左腸骨窩で触診します。便秘時には、糞便を塊として触れることがあり、癌と誤らないように注意します。

  4. 肝臓
    右肋骨弓に沿って診察者の右手指を当て、腹式呼吸にあわせて肝臓を触診します。健常者では肝臓を触知しないか、わずかに肝臓の下縁を触れるだけです。脂肪肝肝硬変肝癌などで触知するようになります。

  5. 胆嚢
    通常は触知しませんが、総胆管癌などで閉塞があると腫大して、右季肋部に触知されるようになります。癒着してないかぎり、振り子のように左右へ動くのが特徴です。胆石症胆嚢炎では右季肋部に強い圧痛があります。

  6. 膵臓
    膵臓も通常は触知できません。急性膵炎では、心窩部の深いところに自発痛と圧痛を認めます。

  7. 脾臓
    脾臓も通常では触知できません。肝硬変悪性リンパ腫白血病などの疾患で脾臓が腫大していると、左季肋部に触知するようになります。

  8. 腎臓
    腎癌嚢胞腎水腎症などで腎臓が腫大すると、右もしくは左側腹部に触知するようになります。

腹壁の緊張異常、圧痛とその意義

健常者の腹壁は平坦で軟らかい。腹腔内の臓器の炎症が側壁腹膜にまで波及すると、反射的にその部位の腹壁筋肉が緊張し、硬くなります。これを筋性防御といいます。

虫垂炎胆嚢炎膵炎などでは、病変部位に近い筋肉が限局性に硬くなり、緊張してきます。触診すると、手で圧迫したときよりも、放した瞬間に強い疼痛を訴えることがあります。これを反動痛といい、腹膜炎の重要な徴候です。

胃・十二指腸潰瘍穿孔したりして消化管の内容が腹腔に漏れ出すと、腹膜全体に炎症が広がります。この病態を汎発性腹膜炎といい、きわめて重篤な状態であり、すぐに手術して治療しなければ致命的になります。この場合には腹壁全体が板のように硬くなり、非常に強い圧痛があります。

腫瘤の触知とその意義

腹部に腫瘤を触知したときは、まずどの臓器と関連しているのかを確認します。ついで大きさ、形、表面の性状、硬さ、圧痛の有無、拍動の有無、波動性、周囲との癒着などについて調べます。

はとても硬く、表面が凹凸した腫瘤として触れます。腎嚢胞などの嚢胞は緊満し、弾力性のあるボールのように触知されることが多い。膿瘍は、自発痛および圧痛のある腫瘤として触知されます。

頑固な便秘のある人では、結腸の部位に硬い糞塊を触れることがあります。腫瘍と間違いやすいですが、排便後には消失するので鑑別ができます。


リンパ節の触知

リンパ節は、健常者では触知しないか、触知してもごく小さい。炎症腫瘍でリンパ節が腫大します。1㎝を超える大きさのもは、病的なことが多い。

1.リンパ節の触知部位

表在性のリンパ節は、側頸部、下顎部、鎖骨窩、腋窩、鼠径部、肘部、膝部などで触診します。

リンパ節を触知した場合には、その部位、限局しているのか全身に広がっているのか、数、大きさ、形、硬さ、圧痛の有無、周囲との癒着、リンパ節相互の癒着について調べます。


2.リンパ節腫脹をきたす主な疾患

  1. 二次性リンパ節炎
    皮膚や粘膜の化膿があると、その所属リンパ節が炎症性に腫脹してきます。軟らかく、圧痛があります。表面の皮膚が発赤しています。

  2. リンパ節結核
    頸部に好発します。一般的には疼痛や発赤、あるいは熱感はありません。リンパ節相互、もしくは周囲の組織と癒着し、塊状になることがります。しばしば膿瘍をつくり、波動を触れます。皮膚に破れると瘻孔をつくり、治癒しにくい。

  3. 伝染性単核症
    頸部および多発性にリンパ節が腫脹してきます。リンパ節は軟らかく、小豆大から母指頭大となり、20歳前後の若年者に好発し、発熱、咽喉頭炎も伴います。肝機能異常を伴うこともあります。

  4. 梅毒:〔→病理
    梅毒トレポネーマが原因で感染する性病です。第1期には局所のリンパ節が腫脹しますが、第2,3期では多発します。第3期にはゴム腫を形成し、軟らかく、大きくなります。周囲と癒着し、潰瘍をつくります。

  5. 悪性リンパ腫
    リンパ節の腫瘍で、予後が悪い。初期には限局しますが、進行すると広がります。リンパ節は弾力性で硬く、発赤や圧痛はありません。大きさはさまざまで、小豆大から鶏卵大にもなります。

  6. 白血病
    白血病のうち、ことにリンパ性白血病では全身性にリンパ節が腫脹します。圧痛や熱感はありません。

  7. 癌の転移
    癌細胞がリンパ節に転移すると、きわめて硬いリンパ節腫脹をきたします。表面は不整で、圧痛はありません。胃癌では、左鎖骨上窩のリンパ節に転移することが多く、ウィルヒョウ(Virchow)リンパ節転移として注目されます。

    乳癌では、腋窩のリンパ節に転移しやすい。

  8. このほか、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、サルコイドーシス、薬剤アレルギーなどで腫脹することもあります。

3.対策

  • リンパ節腫脹が感染症炎症に対する反応性のものか
  • 悪性リンパ腫の転移などによる悪性のものか
を確実に判定することがもっとも重要です。

感染症の場合では、適切な抗生物質を投与して経過を観察します。悪性腫瘍では、制癌剤による化学療法や放射線照射療法などを行いますが、予後不良のこともあります。