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  3. 生命徴候(バイタルサイン)

生命徴候は人間の生命活動を観察するもので、診察のなかでももっとも重要で、基本的なもです。バイタルサイン(vital sign)ともいいます。

体温

1.測定部位

体温計を用いて腋窩、口腔内、もしくは直腸内で測定します。真の体温とは、体腔内の温度をさします。このため、外界温度の影響を受けない部位で測定するほうが正確です。

腋窩で測定した体温は口腔内、および直腸内での検温に比べると、それぞれ0.2~0.5℃、0.6~1.0℃ほど低い。いずれの部位で測定するにしても、正しい位置で、十分な時間をかけて計測するようにします。


2.正常体温と生理的変動

健常者の腋窩で測定した体温は、通常36.037.0℃の範囲にあります。ただし、体温には個人差が大きい。また、同じ人でも午前2~4時頃にはもっとも低く、午後2~6時頃にかけて最高になる日内変動があります。


3.典型的な熱型と代表的な疾患

体温が腋窩で37.0℃を超えるとき、一般に発熱していると判定します。

発熱は感染症悪性腫瘍膠原病内分泌疾患アレルギー性疾患などの病態でみられます。体温の経過をグラフで表すと、疾患によっては特徴的な体温の推移を示すことがあります。
これを熱型といい、診断をするさいの参考になります。

  1. 稽留熱
    体温が持続的に高いですが、日内変動が1℃以内のものをいいます。腸チフス肺炎髄膜炎などでみられます。

  2. 弛張熱
    体温が持続的に高く、1℃以上の日内変動があるものをいいます。敗血症肝膿瘍膠原病などでみられます。

  3. 間欠熱
    日内変動が1℃以上ありますが、低い時には正常の体温にまで下がるものです。弛張熱を起こすのと同じ疾患で起こるときもあります。

  4. 周期的発熱
    高熱と発熱のない時期が周期的にみられる熱型をいいます。マラリアにしばしばみられます。

4.微熱の持続

37℃代の微熱が長く続くことがあります。バセドウ病貧血結核などでみられることがあり、慎重に診断を進めます。

5.低体温

36.0℃未満を低体温とします。甲状腺機能低下症慢性消耗性疾患などでは持続的に低体温となります。外傷、大量出血、重症感染症などで急速に体温が下降することがありますが、これは危険な徴候であることを意味します。


血圧

血圧とは、血液が血管壁に与える血管内圧のことをいいます。通常は動脈血圧をさします。血管内圧は心臓が収縮するときに最高となり、最高血圧もしくは収縮期血圧といいます。

心臓の拡張期には血管内圧が最低となり、最低血圧または拡張期圧とよびます。最高血圧と最低血圧の差を脈圧といいます。

1.測定方法

血圧を水銀柱の重さを釣り合わせる水銀血圧計がよく用いられています。最近では自動血圧計も普及し、家庭でも簡単に測定できるようになっています。

  1. 触診法
    血圧計の圧迫帯(マンシェット)を上腕に巻き付けます。橈骨動脈を触診しながら圧迫帯に空気を送ります。脈拍を触れなくなった時点から、さらに20~30mmHgくらい圧迫帯に圧を加えます。

    ついで、1心拍ごとに2~3mmHgの速さで空気を抜きます。ふたたび脈拍を触れ始めるときの圧迫帯内圧を最高血圧とします。

    一般に触診法で測定される血圧は、聴診法よりも低く測定されます。また最低血圧の測定はできません。

  2. 聴診法
    肘窩で、上腕動脈の拍動を触れる部位に聴診器を当てます。触診法の場合と同じく圧迫帯に空気を送入し、徐々に空気を抜きます。

    拍動に一致して音が聞こえ始める時点の血圧を最高血圧と判定します。さらに空気を抜いていき、音が消失したときの血圧を最低血圧とします。

2.WHO(世界保健機関)/ISH(国際高血圧学会)の血圧基準

WHO/ISHでは最高血圧140mmHg、最低血圧90mmHg(140/90と記載)未満を正常範囲とし、140/90以上を高血圧としています。

ただし、年齢や性によって血圧はかなり異なります。このため高血圧は細かく分類し、慎重に観察するようにします。

3.高血圧の分類

高血圧には、原因を明らかにできない本態性高血圧と、なんらかの臓器に異常があって高血圧になる二次性高血圧があります。

二次性高血圧は、原因別に腎性(腎炎、糖尿病性腎症、膠原病)など、内分泌性(褐色細胞腫)、クッシング症候群、原発性アルドステロン症など)、神経性(脳圧亢進など)、心臓血管性(大動脈弁閉鎖不全症など)に分けることができます。


4.低血圧

最高血圧が男性で100mmHg、女性で90mmHgに達しないとき、一般に低血圧といいます。持続的に低血圧がある場合にと、起立したときなどに一過性にみられる低血圧(起立性低血圧)があります。

低血圧にも本態性低血圧と、種々の疾患に伴う二次性低血圧とがあります。本態性低血圧は、やせた無力性体質の人に多い。

二次性低血圧は大量出血、脱水、心筋梗塞、敗血症、急性腎不全、薬物中毒などで起きます。二次性低血圧のうち、末梢循環不全が急激に起こった状態をショックといいます。

全身は衰弱し、顔面は蒼白で四肢は冷たくなり、脈拍は弱く頻数となります。意識障害を伴うこともあり、危険な状態です。


脈拍

脈拍とは、心臓の拍動に伴う動脈の拍動をさします。脈拍の触診は、循環器疾患の診察に有用なだけでなく、生命徴候(バイタルサイン)の一つとして、全身状態を示す指標としての意義をもっています。


1.検脈部位

動脈が体表近くを走り、かつ骨など硬い組織に対してその動脈を圧迫できるような部位を選びます。この目的に適しているのは橈骨動脈、上腕動脈、膝窩動脈、大腿動脈、足背動脈などです。

通常の診察では橈骨動脈で触診を行います。患者の手掌を上に向け、橈骨茎状突起の高さで、橈骨動脈の上に診察者の示指、中指、環指をそろえておいて触診します。


2.脈状の種類と代表的な疾患

健常成人での脈拍数は毎分ほぼ65~85です。小児や若年者では脈拍数は多く、高齢者では少ない。また、スポーツをしている人では脈拍数が少ない傾向にあります。

  1. 頻脈
    成人では、脈拍数が毎分100以上の場合を頻脈といいます。健常者でも、精神的に緊張したり、運動直後、あるいは発熱したときには脈拍数が増加します。病的な頻脈は貧血心不全甲状腺機能亢進症大量出血などでみられます。

  2. 徐脈
    脈拍数が毎分60以下の状態を徐脈といいます。甲状腺機能低下症、脳圧亢進、黄疸などでみられます。毎分40以下の高度の徐脈は、心臓房室ブロックによることが多い。

    極端な場合には脳虚血状態となり、痙攣や失神発作を起こします。これをアダムス・ストークス(Adams-Stokes)症候群といい、心臓ペースメーカーを用いた治療が必要となります。

  3. 速脈
    脈拍が急に大きくなり、ふたたび急速に小さくなる脈拍をいいます。大動脈閉鎖不全症甲状腺機能亢進症貧血発熱時などでみられます。

  4. 遅脈
    脈拍とは逆に、ゆっくり大きくなり、ゆっくりと小さくなる脈拍です。大動脈弁狭窄症などでみられます。

  5. 大脈
    動脈の拍動の振幅が大きい脈拍を大脈といいます。大動脈閉鎖不全症甲状腺機能亢進症高熱時などでみられます。

  6. 小脈
    大脈と反対に、動脈の拍動の振幅が小さいものです。大動脈弁狭窄症などで認められます。

  7. 交互脈
    拍動の大きさが交互に変化する状態です。心筋梗塞や心筋炎など、心筋障害があるときにみられます。

  8. 脈の不正
    脈拍のリズムが乱れている状態をいいます。心臓弁膜症心筋炎などの心疾患で起きます。ただし、器質的な疾患がなくても、運動時や精神的に緊張したり不安なときなどにも起こることがあります。

    不整脈にはいくつかのタイプがあり、心拍が本来起こるべき時期よりも早期に出現するものを期外収縮といいます。


呼吸

健常者では、安静にしている状態では、ほぼ1分間におよそ1620回の呼吸をしています。その深さやリズムは規則正しく、呼吸数と脈拍数の比率はほぼ1:3~4です。

運動したり、精神的に緊張すれば健常者でも呼吸数が早くなり、リズムも乱れたりしまが、これらは安静にすればやがて回復します。

呼吸器疾患や高熱時には呼吸状態に変化が起きます。さらに代謝障害や重症な疾患でも呼吸が乱れます。次に述べる異常呼吸は、患者が重症であることを示す兆候です。

  1. チェーン・ストークス(Cheyne-Stokes)呼吸
    呼吸期と無呼吸期が交互に繰り返される呼吸様式をいいます。はじめに小さい呼吸が起こり、しだいに大きな呼吸となります。そしてきわめて深い呼吸となったあと、ふたたび無呼吸となります。これが周期的に繰り返されます。

  2. クスマウル(Kussmaul)呼吸
    異常に深くて大きく、しかも呼吸数も増えた状態の呼吸様式です。尿毒症糖尿病性昏睡時などでみられます。

  3. ビオ―(Biot)呼吸
    短い呼吸をすばやく4~5回行ったあと、休止期に入り、ついでふたたび呼吸するものです。脳圧亢進症などのときにみられます。