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反射の種類

皮膚、筋肉、腱などに与えられた刺激に対して、無意識に起こる不随的な運動を反射とよびます。

外部から与えられた刺激は、まず知覚線維の求心性ニューロンを通って脊髄、延髄、あるいは脳橋などにある反射中枢に入ります。ここで介在ニューロンを経るか、あるいは直接に遠心性ニューロンに刺激が伝わり、筋肉などの運動器官に伝達されます。その結果、筋肉の収縮などが起きて不随意に運動が起こります。

このように、外部から刺激が伝わって筋肉の運動までにいたるルートを反射弓といい、ここには大脳皮質は関与していません。だから反射は意識しないままで、外部の刺激に反応するのです。

反射には、刺激を与える部位別に表在反射(粘膜反射、皮膚反射)、深部反射(腱反射)、臓器反射に分類されます。

位置覚の検査のイラスト


反射検査の意義と注意事項

1.意義

刺激受容体から効果器官にいたるまでの、反射弓のいずれかの部位において中断が起こると、反射が消失します。反射を検査することにより、反射弓のいずれかの障害が起きていることを判断することができます。

なお、錐体路は随意運動をつかさどっていますが、腱反射に対しては一般的に抑制性に作用します。このため錐体路(一次ニューロン)が障害された場合には腱反射が亢進し、また種々の病的反射が出現します。一方、腹壁反射は消失します。

そこで反射検査は、神経疾患をはじめ糖尿病甲状腺疾患などの代謝性疾患を含む諸疾患の診察に重要です。


2.注意事項

  1. 患者は楽な姿勢をとり、完全に力を抜いた状態で検査します。
  2. 打診槌(ハンマー)は、頭の部分が軟らかいゴムでできたバランスのよいものを使います。
  3. 深部反射の検査では、手首のスナップをきかせて、弾力的にしっかりした適度の刺激を与えられるように、打診槌で叩打します。二頭筋反射などでは検者の母指で腱を押さえ、その上から叩打するように工夫します。
  4. 反射の検査では、かならず左右を同時に調べ、左右の反射の差異を比較します。
  5. 同側についても、上肢と下肢など部位別での比較を行います。

表在反射

1.種類と意義

表在反射には粘膜反射皮膚反射があります。粘膜や皮膚を刺激すると、その刺激が知覚神経線維を通って脊髄、脳橋にいたり、そこから介在ニューロンを経るか、直接に運動神経線維を伝わって筋肉などの運動器官に伝えられます。

この反射弓のいずれかの部分で障害があると、表在反射が消失することになります。

2.粘膜反射

  1. 角膜反射
    患者に側方を見ててもらい、反射側から綿糸で角膜に軽く触れます。健康なら瞬間的に眼を閉じる反射をいいます。
    反射弓:三叉神経 → 脳橋 → 顔面神経。

  2. 咽頭反射
    咽頭後壁粘膜を舌圧子などでさわると、吐き気を催す反射です。
    反射弓:舌咽神経 → 延髄 → 迷走神経。

3.皮膚反射

  1. 腹壁反射
    腹壁を打診槌の柄、先端をつぶした針、あるいは小歯車などで素早くこすります。腹壁の筋肉が瞬間的に収縮して、臍が移動する反射です。外側から中央に向かって水平にこすります。臍を中心にして上・下・中・下に分けると、それぞれ、T6~9、T9~11、T11~L1の脊髄反射弓を反映します。

    肥満者、高齢者、経産婦などで腹壁が弛緩している人では、腹壁反射が出にくい。このため必ず左右を比較します。1側のみで腹壁反射が減弱もしくは消失しているときには、反射弓のいずれかの部位での障害(多発性神経炎や脊髄癆)か、錐体路の障害を考えます。

  2. 挙睾筋反射
    大腿内側をピンやハンマーの柄などで素早くこすります。同側の挙睾筋が収縮して睾丸が上方へ移動します。
    反射弓:大腿神経→L1→陰部大腿神経。
    錐体路の障害で反射が消失します。

  3. 足底反射
    足の底をピン、ハンマーの柄などでこすります。足趾が足底方向へ屈曲し、足が背屈もしくは下肢全体が体幹に引き付けられます。
    反射弓:脛骨神経 → S1,2 → 脛骨神経。
    1側で反射が欠如するときは錐体路障害が考えられます。なお、この検査で拇指が背屈するときは、バビンスキー(Babinski)反射が陽性であると判定します。

  4. 肛門反射
    肛門の周囲を針でこすると肛門括約筋が収縮します。
    反射弓:陰部神経 → S4,5 → 陰部神経。
    会陰部の知覚脱失、または脊髄円錐部馬尾神経の障害された場合に、この反射が減弱または消失します。

深部反射

1.意義

腱や骨に刺激を与えたときに起きる筋肉の収縮をみる検査です。
深部反射でも反射弓のいずれかの部位で障害があると、減弱もしくは消失します。たとえば末梢神経障害(多発性神経炎など)、脊髄前角の障害(灰白髄炎)、脊髄後索の障害(脊髄癆など)などで、それぞれの反射弓に対応する反射が減弱ないし消失します。

また深部反射は、大脳皮質運動領と錐体路にある上位ニューロンによって抑制されています。たとえば、意図的に深部反射の出現を抑えることもできます。このため、脳出血などで上位ニューロンに障害が起きると、抑制が解除されて、深部反射が亢進する結果になります。

2.種類

  1. 下顎反射
    口を軽く開け、オトガイ部に検者の指を当てて、その上をハンマーで叩きます。口を閉じる反射が起きます。
    反射弓:三叉神経 → 脳橋 → 三叉神経。

  2. 上腕二頭筋反射
    前腕を軽く屈曲させ、上腕二頭筋腱上に検者の母指を置き、その上をハンマーで叩きます。二頭筋が収縮して前腕が屈曲します。
    反射弓:筋皮神経 → C5,6 → 筋皮神経。

  3. 上腕三頭筋反射
    軽く屈曲させた前腕を検者の手で軽く支え、肘頭のすぐ上で三頭筋腱をハンマーで叩きます。三頭筋の収縮により前腕が伸展します。
    反射弓:橈骨神経 → C6,7 → 橈骨神経。
  4. 腱反射の検査イラスト

  5. 橈骨反射
    前腕を軽く屈曲させ、橈骨茎状突起をハンマーで軽く叩きます。腕橈骨筋が収縮し、前腕の屈曲と回外運動が起きます。
    反射弓:橈骨神経 → C6,7 → 橈骨神経。

  6. 回内筋反射
    1. 橈骨回内筋反射:橈骨下端を手掌側から軽く回外を起こすように水平に叩打します。回内筋が収縮して前腕の回内運動が起きます。
      反射弓:正中神経 → C6 ~ T1 → 正中神経。
    2. 尺骨回内筋反射:同じような回内運動は、尺骨茎状突起を叩打しても起きます。

  7. 膝蓋腱反射
    1側の膝を立ててその上に他側の下肢を乗せます。膝蓋の下にある大腿四頭筋腱を叩打すると、膝関節が伸展します。両下肢をそろえて、膝関節で120~150°程度に曲げた状態で腱を叩打し、左右を比較してもよい。
    反射弓:大腿神経 → L2~4 → 大腿神経。

  8. アキレス腱反射
    アキレス腱をハンマーで叩くと腓腹筋とヒラメ筋が収縮し、足が足底方向へ屈曲します。
    反射弓:脛骨神経 → S1,2 → 脛骨神経。

腱反射の検査イラスト


病的反射

1.意義

錐体路に障害のある患者では、健常者ではみられることのない反射が出現します。これらの異常な反射現象を病的反射といいます。

病的反射は、正常の状態では錐体路によって抑制されています。錐体路に障害が起きるとその抑制が解除され、病的反射が出現することになります。病的反射を認めたときには、病変の部位を知るうえできわめて意義が深い。

なお錐体路の発達が未熟な乳児では、抑制機構が完成されていないので、健常児でも病的反射がみられます。

2.下肢の病的反射

  1. バビンスキー(Babinski)反射
    ハンマーの柄などで足底を、踵から外縁に沿うように母趾に向かってこすります。母趾がゆっくり背屈し、他の4趾は扇のように開いて足底側に屈曲します。

  2. チャドック(Chaddock)反射
    外果の後ろから下を回って足背外側をこすります。バビンスキー反射と同じような現象が起きます。

  3. オッペンハイム(Oppenheim)反射
    下腿前面を脛骨に沿って、検者の母指腹面で上から下へとこすります。母趾が背屈します。

  4. ゴードン(Gordon)反射
    腓腹筋をつかむと母趾が背屈します。

  5. シェーファー(Shaffer)反射
    アキレス腱をつかむと母趾が背屈します。

  6. ゴンダ(Gonda)反射
    第4足趾を足底方向へ強く屈曲させ、8~10秒くらいして急に放すと母趾が背屈します。

  7. ロッソリーモ(Rossolimo)反射
    足底面の足趾の付け根付近をハンマーで叩打します。 全足趾が足底方向に屈曲します。

  8. メンデル・ベヒテレフ(Mendel-Bechterew)反射
    足背部で立方骨の上を叩打します。第2~4足趾が足底方向へと屈曲します。

下肢病的反射の検査イラスト

3.上肢の病的反射

  1. ホフマン(Hoffmann)反射
    検者の示指と中指で被験者の中指末節を挟みます。その末節を母指で屈曲させてから急に放します。すると全指、ことに母指が掌側に屈曲します。

  2. トレムナー(Tromner)反射
    被験者の指を少し屈曲させ、中指の末節を検者の指で掌側からはじきます。全指、ことに母指が屈曲します。

  3. ワルテンベルグ(Wartenberg)反射
    被験者の母指を除いた4指を軽く曲げ、この掌側に検者の示指と中指を直角に置きます。その上をハンマーで叩きます。母指を含めて全指が屈曲します。

上肢病的反射の検査イラスト


クローヌス(間代)

1.定義

深部反射が著しく亢進している場合、連続的に反復運動を繰り返すことがあります。この現象をクローヌス(間代)といいます。

2.種類

  1. 1.膝クローヌス
    下肢を伸ばし、力を抜いたままで横臥位をとってもらいます。検者の母指と示指で膝蓋骨上部をつかみ、これを衝動的に下方へ動かします。膝蓋骨が踊るように上下運動を繰り返す現象をいいます。

  2. 2.足クローヌス
    被験者の足をつかみ、衝動的に背屈させます。正常者では脚は背屈したままでとどまりますが、足が1回背屈したあと、間代性に背屈と足底屈曲を繰り返す現象をいいます。

上肢病的反射の検査イラスト


自律神経反射

1.意義

自律神経系は、内分泌系とならんで生体の内部環境を調節し、種々の刺激から身を守るために重要な役割を果たしています。

自律神経が関与する反射を自律神経反射といい、臓器反射ともよばれることもあります。自律神経反射には大脳皮質、小脳、間脳、延髄、脊髄などにおける自律神経中枢が関与します。

それぞれのレベルに応じた適切な反射系を形成し、呼吸、循環、体温、消化、排泄、水分代謝などの生命維持にとって重要な活動を総合的に調節しています。

種々の神経疾患では、自律神経の機能に異常を生じていることがあります。また、自律神経機能の異常が主体をなす自律神経失調症もあります。自律神経機能の異常を検出する目的で、自律神経反射が検査されます。

2.種類

1.瞳孔反射

  1. 対光反射:暗室で瞳孔に光を当てると、瞳孔が縮小する反射をいいます。光を当てていない反対側の瞳孔も同時に縮小し、この現象を共感性対光反射といいます。
    反射弓:視神経 → 中脳 → 動眼神経。

  2. 輻輳(調節)反射:遠方を見ている状態から急に視線を近くに注視させると、両眼が内側に偏移し(輻輳(ふくそう))、瞳孔は縮小します(調節)。
    反射弓:視神経 → 後頭葉 → 動眼神経。

2.アシュネル(Aschner)反射(眼球心臓反射)

両側の眼球を圧迫すると徐脈をきたす反射のことです。正常では1分間に6~8程度の脈拍減少を起こしますが、10以上の減少があるときを陽性とします。

迷走神経の緊張状態では徐脈となります。ただし、迷走神経の緊張が適度に強い人では、この反射検査を行うと低血圧を起こして失神する恐れもあるので、慎重に行うべきです。

反射弓:視神経 → 後頭葉 → 動眼神経。

3.ツェルマク・へーリング(Czermak-Hering)反射(頸動脈洞反射)

頸部で1側の頸動脈を圧迫すると、徐脈と血圧下降が起きる反射です。1分間に脈拍数が10以上減少する場合を陽性とします。迷走神経緊張状態で徐脈になりやすい。

反射弓:三叉神経→延髄→迷走神経。

4.立毛筋反射(鳥肌反射)

刺激を受けて立毛筋が収縮し、鳥肌を生じる反射です。皮膚の摩擦、寒冷、精神的緊張などによって鳥肌がみられます。交感神経緊張状態で立毛筋反射が亢進します。延髄交感神経中枢に障害があると、立毛筋反射は消失します。

5.血管運動反射

血管壁の緊張は交感神経によって調節され、収縮を起こします。血管運動性が不安定な状態にあると、皮膚をペンやハンマーの柄でこすると著名な赤色の紋画が現れます。高度の不安定状態になると、蕁麻疹のように赤くはれあがります(皮膚紋画症)。

6.発汗反射

体表に油で溶いたヨードを塗り、その上からデンプンをふりかけます。発汗するとデンプンがヨードと反応し青黒く変化します。この現象を応用して発汗の状態をみる検査です。

室温を上げたり、感情的なストレスや痛みを刺激などを与えて発汗が誘発されるかどうかを検査します。

顔面や体幹の半側に交感神経の麻痺があると、罹患側は発汗が減少もしくは欠如し、皮膚が乾燥します。反対側では多量の発汗をきたすことがあります。