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  3. 臨床症状:発熱・出血傾向・リンパ節・意識障害

患者の訴える臨床症状は数多い中、しばしば遭遇する代表的な臨床症状について解説します。

これらの症状は、経過をみてもよい場合と、すぐに治療を開始するべきものがあります。さらに、専門の医療機関に紹介しなければならないこともあります。こうした判断を適切に行うためには、症状を起こす原因となった病態を十分に理解しておくことが重要です。

発熱

1.発熱とは

人体の体温は個人差が大きいですが、腋窩ではほぼ36~37°Cの範囲内に維持されています。健康時の体温の範囲を超えて上昇している場合を発熱といいます。通常は腋窩で37℃を超えている場合に発熱とします。

上昇している体温の程度により、発熱を次のように分類します。

分類体温
微熱37.1~38℃
経度発熱38.1~38.5℃
中等度発熱38.6~39℃
高度発熱39.1~41℃
過高熱41.1℃以上

発熱のある患者をみた場合には原因を明らかにし、その原因に応じた治療を行う必要があります。

2.病態生理

健康な時には、体内における熱の産生と体表面からの放散のバランスがうまく行われ、変動しながらもほぼ生理的な範囲内に体温は保たれています。その調節は、主として視床下部にある体温調節中枢によって行われています。

この調節が破綻すると発熱を生じます。発熱をきたす原因には次のようなものがあります。

  1. 中枢性発熱
    体温調節中枢自体に病変があったり、他の疾患で中枢に影響が及んだりして発熱が起きます。脳腫瘍脳血管障害頭部外傷脳炎などでみられます。

  2. 熱産生の亢進
    基礎代謝が亢進して熱産生が増大する場合です。甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患のほか、筋肉運動でも起こります。

  3. 熱放散の障害
    高温多湿の環境では、体表からの熱放散が抑えられて発熱します。

  4. 外因性発熱物質の影響
    細菌ウイルスなどの病原体が感染したり、炎症腫瘍などでは種々の化学物質が放出され、体温中枢を刺激して発熱を起こすことがあります。そのような化学物質を発熱物質とよびます。

3.発熱をきたす主な疾患

発熱をきたす疾患は数多くあります。病原微生物の侵入による感染症炎症性疾患悪性腫瘍膠原病内分泌疾患外傷熱傷薬剤アレルギーなどがあります。疾患によっては、特徴ある熱型を示すことがあります。

4.対策

発熱のある患者ではその原因を解明し、原疾患に対する治療をすみやかに行うことが原則です。安易に解熱剤だけを投与するのは好ましくありません。

体温が1℃上昇するだけで20%も代謝が増します。その結果、小児や高齢者では体力が消耗し、脱水、心不全、さらにはショックになる危険性があります。ことに40℃を超える高熱では、脳に不可逆的な障害(蛋白質の変性など)を残す恐れすらあります。

こうしたことから、発熱患者に対しては、解熱剤などによる対症療法を行いつつ、原因を究明することが大切です。


出血傾向

1.出血傾向とは

血管が損傷され、血液が血管外へと流出する状態が出血です。鼻出血、歯肉出血、血尿、下血などで、体外に出血することです。

また皮下出血、脳内出血などの臓器出血のように、体内での出血もあります。血管に物理的に大きな圧力が加わったり、外傷などで血管に傷がつくと出血することになります。

出血した場合、血管がまず収縮し、血小板と血液凝固因子の作用を受けて血液を凝固させ、止血します。この止血機構に異常があれば、いったん出血すると止血しにくくなります。

このように止血しにくい病態を出血傾向といいます。たいした力が加わっていないのに、皮下に紫斑が出現したり、鼻出血や口腔内に出血したり、血尿が出たりします。

出血傾向の写真イラスト

2.病態生理

血管が破綻し出血が起こると、まず血管が収縮して血流を抑えます。破綻した血管の部位に血小板が集まり、傷を塞ぐように血栓をつくります。この血栓は一次止血栓とよばれ、もろいものです。

そこで血液凝固因子が働いてフィブリンを形成し、一次止血栓にからみつくようにして強固な二次止血栓をつくります。これで傷が塞がり止血します。止血したあとで不要になった血栓は、線維素溶解現象によって溶かされ、元の状態に復します。

この止血機構のいずれに異常があっても、出血傾向を起こすことがあります。

  1. 血管壁が弱い
  2. 血小板の数が少なかったり血小板の機能が障害されている
  3. 血液凝固因子が不足したり活性が低い
  4. 線維素溶解現象が亢進している
などが出血傾向の原因となります。

3.出血傾向をきたす主な疾患

出血傾向は、先天性もしくは後天的な原因で起こります。血小板減少が原因で起こる特発性血小板減少性紫斑病のように、単一の原因で出血傾向をきたすものがあります。

一方、肝硬変や播種性血管内凝固症候群(DIC)のように、血小板減少だけでなく血液凝固因子も欠如して、複雑な原因で出血傾向を示すものがあります。

4.対策

血小板減少には血小板輸血で補充します。血液凝固因子欠乏症には血液凝固因子を輸注するなど、原因に応じた適切な治療を行います。DICは感染症悪性腫瘍などを基礎疾患としていることが多いので、基礎疾患の診断と治療も必要です。

原因先天性疾患後天的疾患
血管異常遺伝性出血性毛細血管拡張症アレルギー性紫斑病
血小板異常遺伝性血小板機能異常症特発性血小板減少性紫斑病
再生不良性貧血
白血病
凝固因子異常血友病播種性血管内凝固症候群
肝硬変
ビタミンK欠乏

5.血液の凝固:止血の機序

  1. 血小板血栓形成
    血管損傷部位で血管内皮の癒着、収縮が起こり、露呈した結合組織、特にコラーゲンに対して血小板が粘着します。粘着した血小板からADP(アデノシン2リン酸)が放出され、これをエネルギー源として流血中の他の血小板が凝集し血小板血栓が形成されます。

    また、損傷部位から同時に流出する組織トロンボプラスチンの作用で、血液中のプロトロンビンからトロンビンが形成され血小板が変態します。

    そして、血小板内の凝固因子、ADP、Ca2+は血小板凝集をさらに促進し、セロトニン、カテコールアミンなどを放出します。ADP、Ca2+は血小板凝集をさらに促進し、セロトニン、カテコールアミンは局所の血管を収縮させることにより、一時的な止血を促進します。

  2. 止血の持続
    血小板血栓は、もろく不安定です。しかし、さらに反応が進むと内因性および外因性機序により、また血小板周囲のフィブリノーゲンがフィブリン(線維素)に転換され、フィブリンは血小板血栓を網目状に包むことにより、さらに血栓を補強します。この現象を血液凝固と呼びます。

  3. 血栓の除去
    損傷部位の修復が進むと、血栓中のフィブリンはプラスミンなどの作用で分解され、次いで凝血も分解され除去されます。これを線維素溶解現象と呼びます。

    血中、組織中にあるプラスミノーゲンプロアクチベータ―が出血によりプラスミノーゲンアクチベータ―に活性化され、これによりプラスミノーゲンがプラスミンに活性化されます。

6.血液凝固の機序

基本的にはモラビッツの凝固機序によって説明されます。

トロンボプラスチンが流出し、Ca2+存在下に流血中のプロトロンビンに作用し、活性のトロンビンとします。トロンビンはさらに流出中のフィブリノーゲンをフィブリンにします。

モラビッツの血液凝固機序のイラスト

凝固因子
因子同意語因子同意語
フィブリノーゲン抗血友病因子
プロトロンビンクリスマス因子
組織トロンボプラスチンスチュアート因子
カルシウムイオン(Ca2⁺)PTA
不安定因子ハーゲマン因子
XIIIフィブリン安定化因子
安定因子、プロコンバーチン(SPCA)

7.止血の異常

凝固因子の欠損として、第Ⅷ因子の欠損は血友病Aなど特有の出血性疾患を生じます。また第Ⅸ、第Ⅹ、第Ⅶ因子ならびにプロトロンビンは、その生合成の最終段階にビタミンKの存在が必要で、脂溶性のビタミンKの吸収が阻害される閉塞性黄疸や、合成が阻害される低栄養状態のとき、これらの凝固因子が低下することがあります。


リンパ節腫脹

1.リンパ節腫脹とは

リンパ節は、生体防御機構をになう重要な末梢リンパ器官で、全身にくまなく分布しています(→)。リンパ節にはリンパ球、マクロファージ、細網細胞などが集まり、生体に侵入してくる病原体を貪食して殺菌したり、抗原抗体反応を行って免疫反応にかかわっています。

リンパ節が種々の病態で大きさや数が異常に増加した状態を、リンパ節腫脹といいます。


2.病態生理

リンパ節が腫脹する原因として、主に三つのメカニズムが考えられます。

第一には、そのリンパ節付近の感染症炎症に反応してリンパ球やマクロファージが増殖して起こる場合で、リンパ節腫脹の原因としてもっとも多い。

たとえば、急性扁桃炎では顎下部のリンパ節が腫脹し、痛みを伴います。下肢に化膿症があると、鼠径部のリンパ節が腫脹します。また風疹麻疹などのウイルス感染症では、全身のリンパ節が腫脹します。

第二は、リンパ節自体に感染が起こる場合です。黄色ブドウ球菌などの化膿性細菌結核菌などが感染を起こし、リンパ節が腫脹します。

第三は、リンパ節が腫瘍性に腫脹する場合です。悪性リンパ腫は、リンパ節を構成するリンパ球が腫瘍性に増殖し腫脹します。また、ほかの部位のがリンパ節に転移することもあります。

たとえば、胃癌では左鎖骨上窩のリンパ節〔ウィルヒョウ(Virchow)リンパ節〕が腫脹します。

3.リンパ節腫脹をきたす主な疾患

  1. 二次性リンパ節炎
    皮膚や粘膜の化膿があると、その所属リンパ節が炎症性に腫脹してきます。軟らかく、圧痛があります。表面の皮膚が発赤しています。

  2. リンパ節結核
    頸部に好発します。一般的には疼痛や発赤、あるいは熱感はありません。リンパ節相互、もしくは周囲の組織と癒着し、塊状になることがります。しばしば膿瘍をつくり、波動を触れます。皮膚に破れると瘻孔をつくり、治癒しにくい。

  3. 伝染性単核症
    頸部および多発性にリンパ節が腫脹してきます。リンパ節は軟らかく、小豆大から母指頭大となり、20歳前後の若年者に好発し、発熱、咽喉頭炎も伴います。肝機能異常を伴うこともあります。

  4. 梅毒:〔→病理
    梅毒トレポネーマが原因で感染する性病です。第1期には局所のリンパ節が腫脹しますが、第2,3期では多発します。第3期にはゴム腫を形成し、軟らかく、大きくなります。周囲と癒着し、潰瘍をつくります。

  5. 悪性リンパ腫
    リンパ節の腫瘍で、予後が悪い。初期には限局しますが、進行すると広がります。リンパ節は弾力性で硬く、発赤や圧痛はありません。大きさはさまざまで、小豆大から鶏卵大にもなります。

  6. 白血病
    白血病のうち、ことにリンパ性白血病では全身性にリンパ節が腫脹します。圧痛や熱感はありません。

  7. 癌の転移
    癌細胞がリンパ節に転移すると、きわめて硬いリンパ節腫脹をきたします。表面は不整で、圧痛はありません。胃癌では、左鎖骨上窩のリンパ節に転移することが多く、ウィルヒョウ(Virchow)リンパ節転移として注目されます。

    乳癌では、腋窩のリンパ節に転移しやすい。

  8. このほか、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病、サルコイドーシス、薬剤アレルギーなどで腫脹することもあります。

4.対策

  • リンパ節腫脹が感染症炎症に対する反応性のものか
  • 悪性リンパ腫の転移などによる悪性のものか
を確実に判定することがもっとも重要です。

感染症の場合では、適切な抗生物質を投与して経過を観察します。悪性腫瘍では、制癌剤による化学療法や放射線照射療法などを行いますが、予後不良のこともあります。


意識障害

1.意識障害とは

意識障害は、睡眠しているわけでもないのに意識が清明でない状態をさします。知覚、注意、認知、思考、判断、記憶などといった精神活動が、一過性もしくは持続性に障害された状態です。

意識障害には程度差があり、原因を診断し、あるいは経過を観察していくうえで、定量的に意識障害の状態を評価していおくことが重要です。この目的のために種々の評価法が提唱されていますが、実用的な分類としてJapan coma scale がよく用いられています。


2.病態生理

意識状態は大脳皮質全体の興奮水準を意味します。大脳の興奮水準は、脳幹の上行性網様賦活系と視床の非特殊核群を介して大脳皮質に広く投射する汎性視床投射系、および中脳網様体の前部に接する視床下部賦活系などの機構によって維持されていると考えらています。そこで、脳幹部や両側の大脳半球に障害が及ぶと、意識障害を引き起こします。

網様体賦活系の模式図

3.意識障害をきたす主な疾患

出血や梗塞、炎症、あるいは腫瘍などで脳幹や大脳皮質に病変が及ぶと、意識障害を起こします。また、中毒性物質や異常代謝産物が脳機能に障害を与えると、意識障害の原因となります。

循環障害で脳血流が減少しても意識障害を起こすことがあります。てんかんやヒステリーで一過性に意識障害を起こすこもとあります。

意識障害をきたす主な疾患
Ⅰ.脳疾患・脳出血、脳血栓、脳梗塞、脳外傷、脳腫瘍、脳炎、髄膜炎など
Ⅱ.全身性疾患・中毒(睡眠薬、一酸化炭素、アルコール、アヘンなど)
・代謝性疾患(尿毒症、肝性昏睡、糖尿病昏睡、内分泌疾患など)
・重症感染症(敗血症など)
・全身的循環障害(急性心不全、急性末梢循環不全など)
・高血圧性脳症
・肺性脳症
Ⅲ.その他・てんかん
・ヒステリー

4.対策

意識障害のある患者では、周囲の人から意識障害を起こした前の状態を確認することと、生命徴候(バイタルサイン)のチェックが重要です。

てんかん起立性低血圧など短時間で回復する場合には、安静にして経過を観察します。このさい、てんかんでは痙攣を伴うこともあるので、舌を噛まないように配慮します。

これに対し、意識障害の程度が深く、かつ遷延する場合には生命に危険な場合もあります。呼吸や血圧の管理を行いつつ、専門医の診療を受けなければなりません。