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  3. 臨床症状:チアノーゼ・関節痛・浮腫

患者の訴える臨床症状は数多い中、しばしば遭遇する代表的な臨床症状について解説します。

これらの症状は、経過をみてもよい場合と、すぐに治療を開始するべきものがあります。さらに、専門の医療機関に紹介しなければならないこともあります。こうした判断を適切に行うためには、症状を起こす原因となった病態を十分に理解しておくことが重要です。

チアノーゼ

1.チアノーゼとは

赤血球に含まれる血色素(ヘモグロビン)は、酸素を運搬する役目があります。肺で酸素を受け取ったヘモグロビンは動脈を流れ、真っ赤で独特な血色の原因となります。

運搬する酸素を全身の組織に受け渡した後のヘモグロビンは、還元ヘモグロビンとよばれ暗赤色となります。静脈を流れ、やがて肺で酸化を受けることになります。

血中の還元ヘモグロビンもしくは異常ヘモグロビンが増加すると、皮膚や粘膜が青紫赤色になります。この状態をチアノーゼといいます。鼻尖部や口唇が特に目立ちます。

2.病態生理

血中の還元ヘモグロビンが増加するのは、肺での酸素呼吸が障害されたり、先天性心奇形血管の奇形などで、静脈血液が動脈に流れ込む(右→左シャント)病態で起きます。

また低心拍状態や、寒冷に暴露されて皮膚血管が強く収縮して末梢循環不全が起こり、右心不全で全身の静脈うっ滞が起きると、末梢毛細血管内での血流が緩徐となって多量の酸素が除去され、還元ヘモグロビンが増加します。

このほか、異常ヘモグロビン血症、たとえば遺伝性メトヘモグロビン血症などでもチアノーゼを呈します。なお、局所の動脈や静脈に閉塞が起きた場合などでは、限局性にチアノーゼが出現します。

3.チアノーゼをきたす主な疾患

肺での酸素呼吸が障害される病態として、高度の肺気腫肺塞栓症肺炎肺うっ血などがあります。右ー左シャントを起こす疾患として、大血管転位ファロー四徴症などの先天性疾患があります。異常ヘモグロビン症としては、メトヘモグロビン血症でチアノーゼが出現します。

縦隔腫瘍で上大静脈が圧迫されたり、静脈血栓症などで末梢循環障害がある場合には、1側の上肢または下肢にチアノーゼが限局しています。レイノー病は、一過性に手指または足趾にチアノーゼがみられます。

4.対策

基礎疾患の治療が必要になります。とくに、先天性心疾患で幼小児期からチアノーゼのある場合には発育障害を起こす可能性もあり、手術が必要となります。


関節痛

1.関節痛とは

関節は線維関節(頭蓋骨縫合など)、軟骨関節(恥骨結合など)、滑膜関節(膝関節など)の三つに大きく分類できます。前二者は可動性がなく、癒合関節といいます。滑膜関節は可動性があり、可動関節とよびます。四肢の関節はすべて滑膜関節です。

滑膜関節は下図のような構造をしています。このうち疼痛に敏感なのは滑膜靭帯関節包などの軟組織で、これらに炎症などの病変が及ぶと痛みとして感じます。

滑膜関節のイラスト

患者が”関節が痛い”といって訴えてきた場合に、関節痛があるとします。関節の痛みとしては、関節自体に障害がある場合と、関節周囲組織の障害による場合があります。そして、これを区別する必要があります。

関節の障害によるものでは、疼痛は関節に限局しています。しかも自動あるいは他動的な運動をすると疼痛が増強されます。

腱鞘炎、滑膜包炎などといった関節周囲炎では、自覚症状としては関節炎に似ていますが、圧痛などの他覚的所見が関節以外の部位でも認められることから区別できます。


2.病態生理

関節を構成する軟骨、骨、半月坂や滑膜包、腱など関節周囲組織に外傷、炎症、腫瘍などの病変が起こると、関節痛を生じます。

炎症性病変としては、変形性関節症肩関節周囲炎などの変性症、化膿性細菌などによる化膿症、尿酸結晶が沈着する痛風、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患などがあります。

過度の運動による機械的刺激でも関節痛の原因となります。腫瘍では、ガングリオンや滑膜性骨軟骨腫症など比較的頻度の高い良性腫瘍のほか、悪性腫瘍もまれながら発病します。


3.関節痛をきたす主な疾患

関節痛をきたす疾患は数多い。それぞれの病態別での主な疾患は次の表に示します。

関節痛をきたす疾患
分類病態生理主な疾患
外傷性外傷関節内骨折、靭帯損傷腱板損傷半月坂損傷
関節内出血血友病性関節症
神経障害神経障害性関節症
炎症性変性変化変形性関節症肩関節周囲炎軟骨無形成症
感染化膿性関節症結核性関節症、リウマチ熱
結晶沈着痛風、偽痛風
自己免疫慢性関節リウマチ全身性エリテマトーデス(SLE)強直性脊椎炎、ライター(Reiter)症候群
機械的刺激上腕骨上顆炎アキレス腱周囲炎
腫瘍性良性腫瘍ガングリオン滑膜性骨軟骨腫症
悪性腫瘍転移性骨腫瘍骨肉腫骨軟骨肉腫ユーイング(Ewing)肉腫
骨端症・骨壊死骨端症ペルテス(Perthes)病月状骨軟化症
骨壊死大腿骨頭無腐性壊死
構造上の欠陥構造異常臼蓋形成不全反復性肩関節脱臼、膝蓋骨亜脱臼

外傷性関節痛のうち、関節内骨折は足関節、肘関節、膝関節などに好発します。膝関節の靭帯損傷半月坂損傷肩の腱板損傷も日常しばしば遭遇します。

炎症性変化では、中年以降の患者でもっとも頻度が高いのが変形性膝関節症です。関節の退行性変化が基礎となるもので、膝関節や脊椎に好発します。

また、肩関節痛を訴える疾患の中でもっとも頻度の高いのは肩関節周囲炎で、肩関節の有痛性の可動域制限が特徴です。

青壮年男性に好発するのが痛風で、母趾関節に多く発病します。青年期以降の女性に多い疾患として、自己免疫疾患の慢性関節リウマチがあり、上下肢の末梢関節に好発します。

関節の使いすぎに起因する関節痛もしばしばみられます。テニス肘、ゴルフ肘は上腕骨上顆炎で、肘から前腕にかけての運動痛が起こります。


4.対策

関節痛を訴えている患者には、いつから、どの関節がどのように痛むのかを聴取します。外傷のように単関節だけが痛むことも、慢性関節リウマチのように多関節が痛むものもあります。視診、聴診を丁寧に行い、関節自体の痛みか、関節周囲の痛みかを判別することが重要です。

検査では単純X線写真が必須です。さらに、血液検査で白血球数やリウマチ反応などの検査を行います。関節液が貯留している場合には、関節を穿刺して関節液を調べます。これらは医師が行います。

関節痛をきたす原因疾患の診断がつけば、原因に応じた治療を行います。悪性腫瘍では手術や放射線療法、化学療法が主体となります。化膿性関節炎では抗生物質を使用して治療します。これらの治療も主として医師が行うことになります。

変形性関節症は関節構成体の退行性変化を基盤に、異常な力学的負荷が加わって生じる軟骨摩損から発病します。膝痛の強いときには、鎮痛剤や湿布剤で痛みを鎮静化します。慢性期には体重の減量をはかって膝関節への負荷を軽減し、大腿四頭筋力の増強を目的とした訓練を行います。

冷房や気温の低下は膝痛を増すので、サポーターやホットパックなどを使用します。病変が相当に進行すれば手術の適応を考慮します。

テニス肘で代表される上腕骨上顆炎では局所の安静を保ち、消炎鎮痛剤の軟膏を塗布します。痛みの激しい急性期には局所注射療法を行います。疼痛が軽減したらストレッチングや筋力強化訓練を行い、炎症をきたさないように予防します。


浮腫

1.浮腫とは

人体に含まれる体液は、体重の約40%を占める細胞内液と、約20%の細胞外液とに分けられます。細胞外液はさらに、体重の15%を占める組織間液と、5%の血漿とに分けられます。

浮腫とは、細胞外液のうち組織間液の増加した状態をさします。重力のかかる下肢にみられることが多く、脛骨の部分を指で押すと圧痕がくっきりと生じます。

浮腫の画像

全身性に浮腫がみられることと、局所に限定されていることがあります。全身性の浮腫では、腹水が貯留していたり、肝臓や脾臓が重大していることもあります。これはうっ血性心不全肝硬変などでみられます。


2.病態生理

細胞外液の血管内外への配分は、毛細血管内静水圧、膠質(コロイド)浸透圧、および組織間圧で規定されています。それぞれは動静脈圧隔差血清蛋白質濃度リンパ流によって調節されます。

うっ血性心不全では、心臓のポンプとしての作用の低下により、静脈の還流に異常があり、静脈圧が上昇します。その結果毛細血管内静水圧が上昇し、組織間へ水分が漏出し浮腫をきたします。夕方になると靴がきつく感じるといった症状で気づくことがあります。

急性糸球体腎炎では、水・ナトリウムの排泄が障害され、循環血漿量が増加して毛細血管静水圧が上昇し、浮腫を生じます。

ネフローゼ症候群や肝硬変では、血漿中のアルブミン濃度が低下し、血漿浸透圧の低下をきたします。その結果浮腫を生じます。この場合、眼瞼などの軟部組織にまず浮腫が出現するのが特徴です。

リンパ節に癌が転移したり、炎症でリンパ節が腫大したような場合、リンパ流が障害されます。その結果組織間圧が上昇し、浮腫が発生します。

そのほか、内分泌疾患や薬剤などで浮腫が出現することがあります。原因が不明で生じる特発性浮腫もあり、これは若~中年の女性に多い。


浮腫の病態生理のイラスト

3.浮腫をきたす主な疾患

全身性に浮腫がある場合、心疾患、腎臓疾患、肝疾患、内分泌疾患、栄養不良、妊娠などに注意します。

浮腫の原因疾患
分類病態生理主な疾患
全身性浮腫心原性浮腫うっ血性心不全
肝性浮腫肝硬変
腎性浮腫急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎不全
内分泌性浮腫甲状腺機能亢進症、月経前浮腫
栄養障害性浮腫脚気、飢餓
薬剤性浮腫女性ホルモン(経口避妊薬)、抗炎症剤、血管拡張薬
妊娠正常妊娠、妊娠中毒症
特発性浮腫原因不明
局所性浮腫リンパ性浮腫象皮症、悪性腫瘍のリンパ節転移
静脈性浮腫静脈瘤、上大静脈症候群、静脈血栓症
血管神経性浮腫遺伝性〔クインケ(Quincke)浮腫〕、非遺伝性

局所性の浮腫では、リンパ流や静脈流に注意します。虫刺されによる局所の炎症やアレルギーでも、局所性に浮腫を生じることがあります。


4.対策

浮腫が全身性か局所性かを見極めます。
全身性の場合には、尿検査をして腎疾患を診断したり、血液検査をして血漿蛋白を調べます。心不全では心機能検査や心エコー検査が必要となります。内分泌疾患では甲状腺ホルモンなどを検査します。

局所性の浮腫では、静脈造影やリンパ管造影を行い静脈流やリンパ流を確認します。浮腫の原因を確認したら、それに応じた治療を行います。

安静(下肢を挙上した床上臥位)にして心負荷を減らし、腎臓・肝臓血流量の増加をはかります。そして水分や塩分の摂取を制限します。さらに余分な組織間液を除くために、利尿剤を使用します。