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気管支、肺、胸郭系の変形・形成傷害

1.気管支拡張症

【定義】
気管支拡張症は、気管支内腔が慢性的に非可逆的な拡張をきたす病態です。この拡張した気管支内腔に、感染炎症を繰り返し、湿性咳嗽や喀血をきたします。

抗生物質の普及する前は、本症の頻度は比較的高く、死亡する例もみられましたが、最近は減少傾向にあります。小児期でも、呼吸器感染症の治療に抗生物質が使用されるようになったこと、麻疹に対するワクチン接種など予防的諸手段が行われるようになったこと、栄養状態の向上などが減少に関与しているといわれています。

【病因】
気管支拡張症はその成因により、先天性後天性続発性に分類されます。

  1. 先天性のものは、出生時よりすでに気管支拡張が存在している症例です。

  2. 後天性のものは、カルタゲナー(Kartagener)症候群(右胸心、副鼻腔炎、気管支拡張を3徴とする)、嚢胞性線維症、副鼻腔気管支症候群といった気管支線毛運動機能の障害を基礎に気道感染を繰り返し、気管支拡張が進行するもの、乳幼小児期の百日咳麻疹などに伴う気管支肺炎を契機にして感染を繰り返し、気管支拡張を生じたものなどに分類されます。

    一般に気管支の発育完成は7~8歳ころとされていて、それまでに重篤な呼吸器感染症を生じると、気管支の正常な発育が阻害され、気管支拡張症を生ずると考えられています。

  3. 続発性のものとしては、肺の発育後に生じた肺炎肺癌肺結核、びまん性汎細気管支炎などに伴う二次的な気管支拡張をいいます。

【症状と診断】

  1. たんに気管支が拡張している状態のみならば、何の症状も認めません。感染が加わって、さまざまな症状を呈するようになります。

  2. 膿性分泌物が拡張器官支に貯留すると、とくに朝方の咳反射が起こり、咳嗽が激しく続くこともあります。咳により、大量の分泌液が喀痰として喀出されます。分泌液が気管支内に停滞して排出されないと、細菌が増殖して拡張気管支に炎症を生じ、悪寒、高熱、食欲不振、体重減少などが現れることもあります。

    また、感染憎悪時には喀痰、咳嗽とも増加し、慢性肺気腫、慢性気管支炎を伴う症例では呼吸困難を呈することもあります。

  3. 血痰、喀血は本症の50%に認められます。気道の慢性炎症により、病変部への肺動脈が閉塞し、気管支動脈が増生することによります。

    膿性痰に混じって血液がみられる血痰程度のことが多いですが、気管支-肺動脈シャントなどがある場合には、大喀血になることもあります。

  4. 本症ではしばしば、慢性副鼻腔炎を合併します。また、経過の長い症例では、感染を繰り返すことで、慢性呼吸不全に陥ったり、肺性心となって、低酸素血症を認め、チアノーゼばち指、低栄養を認めることもあります。
  5. 肺性心:
    肺疾患のため肺動脈末梢部の抵抗が増加し、右心の負担が増えたため、代償性に右心が肥大し血液を力強く駆出しようとするが、肥大が過剰になって運動性の低下した心臓の状態。

  6. 聴診所見では、気管支拡張部位に、吸気時の coarse crackles(大水疱性ラ音)を聴取します。
  7. 水疱音:
    胸部で聴かれる断続性ラ音(湿性ラ音)の一種。その音色により、かつては大・中・小水疱音に分けられ、それぞれゴロゴロ、ブツブツ、パチパチと表現され、その大小は音の発生する気道の太さと関連づけられてきた。

  8. 胸部X線写真では、気管支拡張が進行していれば、気管支壁の肥厚や嚢状に拡張した気管支が認められます。しかし、症状のあまりない病変の軽微な症例では、胸部X線写真で異常を指摘できないことも少なくありません。

    以前は、本症の確定診断後に気管支造影法が行われていましたが、患者の苦痛も大きく、検査も大変であり、検査後に感染症などの合併症が生じることも多いため、最近ではほとんど行わなくなりました。

  9. 気管支造影法に代わり、胸部高解像度CTが診断に役立つようになりました。軽微な気管支の拡張病変を評価することも可能です。現在、気管支拡張症の確定診断には必須の検査です。

【治療】
本症では、気管支炎肺炎を生じやすいため、日ごろから、うがいの習慣を身につけ、風邪をひかないようにし、体調を整えることが重要です。

  1. 気管支拡張病変に気道感染を生じた場合、喀痰の細菌培養を行い、薬剤感受性のある抗生物質を投与します。同時に気管支拡張剤、喀痰融解剤、去痰剤を用いて喀痰の排泄を促します。また、体位ドレナージを行って、喀痰をできるだけ拡張気管支から排泄することも重要です。

    また、急性期でない本症例では、エリスロマイシン200~600mg/日の少量持続投与が有効であり、以前に比べて大量喀血する症例は著名に減少しています。

    気管支動脈の炎症性増殖によって生じた喀血で、抗生物質が無効の場合や、大量に喀血している症例では、気管支動脈造影を施行し、出血部位を同定して、塞栓術を行うことがあります。


2.肺嚢胞症

【定義】
なんらかの病的機序のために、肺内に異常な気腔を生じる疾患のことをいいます。結核肺癌による空洞形成のように病因のはっきりした、肺組織の崩壊による気腔は除外します。

【病因】

  1. 胸膜は内外2層の弾力板からなり、なんらかの理由で、内側の弾力板が破綻し、肺胞内の空気が胸膜内に入り込んだものをブレブといいます。また、肺胞壁の破綻によって、肺内に形成された嚢胞をブラといいます。

  2. 進行性気腫性嚢胞は、1側または両側の肺尖部から始まり、しだいに拡大して呼吸困難に陥るもので、原因ははっきりしません。

    気管支喘息や慢性気管支炎などの肺疾患の既往のない3040歳代の比較的若い年代から始まることが多いので、先天的な背景があるのかもしれません。

  3. 気管支嚢胞は、気管支の先天的な発育異常に基づき、肺野型と縦隔型に分けられ、縦隔型は縦隔腫瘍に分類されます。

【症状と診断】

  1. 嚢胞の増大により、肺組織や縦隔が圧排されて換気や血流の障害が生じたり、嚢胞に感染を合併したり、嚢胞が破裂して自然気胸を生じたりしなければ、嚢胞自体による症状はありません。検診の胸部X線写真で偶然に発見されることも多い。

  2. 胸部X線写真、CTは診断に有効で、境界鮮明で薄壁の円形陰影として認められます。

【治療】

  1. 二次感染を起こせば、抗生物質を投与します。

  2. 嚢胞が急速に増大して呼吸循環障害を認めたり、嚢胞が1側肺野の1/3以上を占めて呼吸困難を呈する場合や、自然気胸を繰り返す場合、二次感染を繰り返す場合には、手術療法の適応となります。


3.胸郭の異常

  1. 頚肋
    第7頸椎に不完全または完全な肋骨形成を認めるものをいいます。このために、神経系や血管系を圧迫し、手指の知覚異常、疼痛などを生ずることがあります。胸部X線写真で診断できます。

    症状がなければ、治療の必要はなく、症状があっても過度の外転を禁ずるなどの処置で改善することも多い。症状が改善しなければ、鎮痛剤や外科的切除を考慮します。

  2. 漏斗胸
    胸骨を中心とする肋軟骨や肋骨の凹型変形で、小児期から認められ、男性に多い。成長するに伴い、胸郭は左右非対称に変化し、側弯症となることもあります。

  3. 鳩胸
    前胸壁の凸型変形のこと。症状も少なく、治療を要することは少ない。

  4. 脊椎側彎症
    脊椎の側方への弯曲変形をいいます。先天性、神経筋疾患を伴うもの、マルファン(Marfan)症候群に伴うものがありますが、原因不明のものも多い。女性に多い。高度に変形すると、肺気量減少、低酸素血症、高炭酸ガス血症、チアノーゼを生ずるようになります。装具療法、外科療法を行います。

  5. 動揺胸郭:
    前、側方胸壁の損傷によって胸骨、肋骨の多発骨折が生じ、胸壁が浮いた状態をいいます。呼吸に伴った正常な胸郭運動ができず、呼吸困難に陥ります。人工呼吸が必要になります。


種々の因子による肺虚脱

1.無気肺

【定義】
肺胞腔の含気が失われ、肺胞が十分に含まらない状態をいいます。

【病因】

  1. 無気肺は、気管支内腔に発生した腫瘍や、腫大したリンパ節による気管支壁外からの圧迫、喀痰や粘液、異物による閉塞などによって閉塞性無気肺として形成されます。

  2. 胸水や気胸による胸腔からの圧排、悪性腫瘍などによる肺内からの圧排によって生ずる圧排性無気肺もあります。

【症状と診断】

  1. 原因疾患、無気肺の大きさ、位置、急性か慢性かにより症状はさまざまです。気管支内の悪性腫瘍による無気肺ならば咳、痰、血痰、呼吸困難を生じます。狭窄部の末梢に感染が加わって閉塞性肺炎を生じれば、発熱を認めます。

  2. 無気肺部では、聴診によって呼吸音の低下として認められます。

  3. 胸部X線写真では、縦隔や葉間線の偏移、横隔膜挙上、健側肺の過膨張所見を認めます。無気肺となった区域の血管影は消失し、隣接肺は代償性に拡張し、血管影は散開します。

  4. 気管支鏡は無気肺の原因検索に有効です。直接、気管支内を観察して腫瘍が存在すれば、生検して診断を確定します。

【治療】

  1. 病因により異なりますが、気管支鏡下で、異物の除去や喀痰の吸引をすることができます。
  2. 腫瘍による無気肺では、レーザー治療も有効のことがあります。
  3. 無気肺の予防には、体位ドレナージによる喀痰の排出、気管支拡張剤や去痰剤の使用などがあります。
  4. 閉塞性肺炎を合併したならば、抗生物質を投与します。


胸膜疾患

1.自然気胸

【定義】
正常では空気の貯留のない胸腔内に空気が貯留した状態をいいます。

胸部全体図

胸部断面図

【病因】

  1. 肺の異常な気腔としてのブラブレブが、原因がはっきりせずに破裂して生じたものを自然気胸といいます。
  2. 基礎疾患がないものを特発性自然気胸といいます。一方、肺結核、肺癌など基礎疾患を有するものを続発性自然気胸といいます。
  3. 自然気胸は喫煙者に頻度が高く、背が高く、やせた人に多い。

ブラ:肺胞壁の破綻によってできた気腫性嚢胞のうち、直径1~10cmぐらいのものをさす。
ブレブ:臓側胸膜内に発生した直径1㎝ぐらいの異常気腔をいう。ブレブが破れると自然気胸になる。

【症状と診断】

  1. 突然の呼吸困難、胸痛、咳を訴える人が多いですが、健康診断で偶然発見されることもあります。
  2. 肺組織が虚脱するため、聴診上、呼吸音が低下します。また、空気が貯留したため、打診上、鼓音を呈します。
  3. 胸部X線写真では、肺胸膜境界線を末梢に向かって凸状に認めます。
  4. 緊張性気胸では、縦隔の反対側(健側)への偏移を認め、著名な低酸素血症となることがあります。
  5. 約15%に胸水を認めます。

【治療】

  1. 軽度ならば安静で改善します。虚脱が進んでいれば、針芽刺による脱気、胸腔ドレナージのためのドレーンを挿入して脱気します。再発例では外科療法の対象になるため、最近では、胸膜癒着術を施行することは少なくなりました。

    内科的にコントロール不能例や再発例では、胸腔鏡手術や開胸手術の適応となります。

  2. 胸腔鏡手術は術後の疼痛が少なく、約1週間で退院でき、近年施行される頻度が増えていますが、再発率が約10%といわれています。再発例では開胸手術の適応となります。ただし、開胸手術でも1~3%は再発するといわれています。