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血圧異常

1.本態性高血圧

【概説】
原因不明の高血圧を本態性高血圧といいます。WHOの血圧分類によると、

  1. 正常血圧:最大血圧140㎜Hg以下、最小血圧90㎜Hg以下
  2. 境界域高血圧:最大血圧140159㎜Hg、最小血圧9095㎜Hg
  3. 高血圧:最大血圧160㎜Hg以上、最小血圧95㎜Hg以上
です。

【疫学】
高血圧の発生には食塩の過剰摂取、肥満、ストレス、寒冷、アルコール過飲などが原因とされています。

【診断】
自覚症状:自覚症状のないものも多い。頭痛、めまい、肩こり、動悸、息切れ、鼻血などを訴えます。

【治療】

  1. 食事療法:塩分制限、肥満防止(エネルギー制限)
  2. 薬物療法:アンジオテンシンII受容体拮抗薬、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系降圧利尿剤、β遮断剤、ラウウォルフィア製剤、ヒドララジンなどの投与を行います。

【予後】
合併症に左右されます。


動脈疾患

1.大動脈瘤

大動脈瘤とは、大動脈(血管)壁が何らかの原因により脆弱となり弾性を失った結果、内腔が限局性あるいは広範性にその解剖学的な大きさを越えて拡張したものをいいます。

【分類】

  1. 真性大動脈瘤:瘤壁が内・中・外膜3層からなり病的大動脈瘤の大部分を占め、瘤の形状から紡錘状、嚢状に分けられます。
  2. 仮性大動脈瘤:瘤壁が内・中膜を欠き外膜のみからなるもので、嚢状であり外傷によるものが多い。
  3. 解離性大動脈瘤:内膜に亀裂を生じ、そこから血液が流入し中膜1/3のところで大動脈壁に沿って解離し、血液は解離腔と真腔の両者を環流します。

大動脈瘤の分類のイラスト

【概説】
大動脈にできる動脈瘤を大動脈瘤といいます。とくに腹部大動脈に多いですが、胸部大動脈に生ずるものもあります。60歳代以降の男性に多い。
病因としてアテローム動脈硬化症が多いですが、梅毒性のものもあります。

アテローム
大血管におけるplaque(粥腫)。アテローム動脈硬化症にみられるもので、病変部に大量の脂質、酸性ムコ多糖類、血液とともに由来する物質の沈着がみられ、線維性結合組織の増殖と石灰沈着などにより血管壁の硬化をきたす。

【診断】
自覚症状無症状で経過するものが多く、健診などで発見されます。病変が進行すると肺、気管などへの圧迫により呼吸困難嗄声などの症状が現れたり、動脈瘤の破裂を生じることがあります。

【治療】

  1. 外科的治療:破裂の危険があるものでは、病変部を切除して人工血管移植を行います。
  2. 内科的治療:小さい大動脈瘤では、それ以上の進展しないように保存的な治療をします。安静、血圧のコントロールをはかり、咳をしないように指示します。

【予後】
診断されて5年以内に半数が死亡し、その1/3は瘤の破裂であり、脳血管障害、虚血性心疾患が続きます。50歳以上、大きな瘤、高血圧心疾患の合併は予後がわるい。


2.解離性大動脈瘤

内膜に亀裂を生じ、そこから血液が流入し中膜の外1/3のところで大動脈壁に沿って解離し、血液は解離腔と真腔の両者を環流します。

【概説】
大動脈内膜に裂孔ができて大動脈圧により大動脈壁内に出血し、中膜が解離した状態です。
動脈硬化が原因のことが多い。

【診断】
自覚症状:呼吸困難と前胸部の激痛が突然生じます。大動脈外膜側へ破裂すると失血して急死します。

【予後】
重症例では不良です。


3.大動脈炎症候群(高安動脈炎)

【概説】
大動脈炎症候群とは、大動脈または大動脈から直接分岐する動脈(冠、腕頭、総頸、鎖骨下、腹腔、腸間膜、腎、総腸骨)、肺動脈などに生ずる原因不明の非特異的炎症により、それらの内腔に狭窄・閉塞、ときに拡張病変をきたすことによる諸症状を総称していいます。

【原因】
不明(結核、A群溶連菌、腸内細菌説などがあります)。自己免疫機序の関与が推測されています。20~40歳の女子に好発し(ほぼ90%)、アジア、南米諸国に多く、発症に人種差を認めます。

【診断】
自覚症状:脳循環障害によりめまい、頭痛、視力障害、冠循環障害により動悸、呼吸困難、狭心痛を生じます。鎖骨下動脈の狭窄または閉塞により橈骨動脈の拍動が減弱または消失するので、”脈なし病”ともいわれます。高血圧をみることがあります。

血液検査:赤沈亢進、白血球増加、経度貧血、アルブミン減少、などが認められますが、本症に特徴とされる検査所見ではありません。

胸部X線:心拡大(高血圧、大動脈閉鎖不全などにより)、大動脈石灰沈着像(若い女子で認められるときは濃厚)を認めます。

心電図:左室肥大(高血圧などにより)、ST-T異常(高血圧、大動脈閉鎖不全、冠動脈・心筋自体の変化により)

RI(肺):肺血流異常(欠損像)

眼底検査:眼底の虚血性変化が特徴です。

【予後】
高血圧例は死亡率が高く、死因は心不全、脳出血であり、著名な脳血流障害例は視力障害を生じ、ときに脳梗塞となります。大動脈閉鎖不全例も予後がわるい。


4.閉塞性血栓血管炎 thromboangitis obiliterans (TAO)

【概説】
閉塞性血栓血管炎 (TAO) はビュルガーBuergerまたはバージャー病とも呼ばれます。
1908年ビュルガーが一つの疾患単位として記載しました。わが国では特発性脱疽として注目されています。主に筋性動脈がおかされ、四肢の末梢動脈(下腿、足に多い)にみられる分節性病変で、血管壁全層のびまん性・炎症性、増殖性・非化膿性変化とその部位の血栓性閉塞が特徴です。

【病因】
不明。自己免疫機序が関与し、HLA型のある型の人に発症のリスクが高い。一般に凝固能亢進、線溶能低下、憎悪期は血小板凝集能が低下します。喫煙が発症を促し憎悪させます。男性に多く(男女比9:1)、年齢は20~40歳代(30歳代にピークがある)に多い。

【診断】
症状:末梢の虚血の程度によりしびれ感、冷感、チアノーゼ、間欠性跛行、安静時疼痛、自発性脱疽など。指趾先端で緩慢に虚血が進行すると、皮膚は光沢を帯び、汗腺は萎縮し、角質が増殖します。そのため皮角、胼胝(べんち)、亀裂、硬皮症を伴い、爪の発育不全も認めます。

【治療】
禁煙。患肢の保護、保温、清潔の保持、短距離の規則正しい歩行訓練(側副血行路の発達を促します)。必ずしも血行再建術が最善の治療法ではありません。しかし症例によっては必要に応じて内科(薬物)・外科治療も含めて閉塞性動脈硬化症の治療法に準じて行います。

【予後】
生命の予後は良好ですが、とくに壊死の症例では患肢の切断を要することがあります。

閉塞性血栓〔性〕血管炎
四肢の末梢小動脈の多発性分節性閉塞を特徴とし、難治性、原因不明の疾患である。40歳以下の男性で、とりわけ喫煙者に多く発生する。
新鮮例では、罹患動脈内に閉塞性血栓をみとめ、内膜中心にLangerhans型巨細胞、類上皮細胞の浸潤と、血管壁全層にフィブリン、好中球の浸潤をみとめる。
陳旧例では、血栓は結合織に置換され、細血管の新生が多くみられ、中膜は肥厚、断裂し、外膜は線維性増殖が強く、周囲の組織と癒着している。伴走する静脈にも炎症がみられる。臨床症状としては、指趾のしびれ、冷感、蒼白、阻血性発赤、筋萎縮、間欠性跛行などがみられ、ついで潰瘍、安静時疼痛、壊死などを生じる。治療としては対症療法以外はない。阻血性症状に対し、血行改善の薬物療法や血行再建術を行う。重症例では交感神経切除術を行い、さらにプロスタグランジンE療法や高圧酸素療法を試みる。最後には肢切除術を行う。


5.閉塞性動脈硬化症

【概説】
腹部大動脈末梢側および四肢の主幹動脈、下肢の中等度大の動脈にみられる粥状硬化、中膜硬化あるいはその両者によって生ずる狭窄・閉塞性病変をいいます。

【性別、好発年齢】
男性に多く(男女比=6:1)、50歳代にピークがあります。

【症状】
末梢の虚血の程度により、しびれ感、冷感、疼痛、間欠性跛行を生じます。病変の進行は一般に側副血行路の代償機能と関係します。

【鑑別診断】
閉塞性血栓血管炎、静脈瘤性潰瘍、糖尿病性潰瘍、結節性動脈周囲炎など膠原病による潰瘍。

【治療】
薬物療法:血管拡張薬、カルシウム拮抗薬、ニコチン酸誘導体、血小板凝集抑制薬、抗凝血・抗血栓性薬剤、線維素溶解酵素剤。

積極療法:プラズマフェレーシス(血漿交換療法)、経皮的血管形成術(PTBA)などを行います。

手術療法:安静時でも疼痛(安静時疼痛)があったり、壊死を生じた場合は積極的に血行再建を行います。血栓内膜摘除術、パッチ形成術、自己静脈片・人工血管によるバイパス術も含む血行再建術。腰部交感神経切除術。

閉塞性動脈硬化症に対する人工血管による血行再建術のイラスト


6.ルリーシュ Leriche症候群

【概説】
腹部大動脈分岐部から両総腸骨動脈にかけての閉塞性動脈硬化病変をいいます。

【症状】
両下肢の冷感、疲労感、萎縮を伴い、間欠跛行を生じ、陰萎・勃起障害をきたします。

【診断】
心血管造影

【治療】
血栓内膜摘除術、バイパス術も含む人工血管置換術。

Leriche症候群Y字グラフトによる血行再建術のイラスト


静脈疾患

1.上大静脈症候群

【概説】
縦隔腫瘍、縦隔炎などで上大静脈が外部からの圧迫を受けて狭窄、閉塞すると頸静脈、舌下静脈、手背静脈などが怒張し、浮腫を生じます。

【診断】
自覚症状:上体の静脈の怒張と浮腫を生じます。

【予後】
原因疾患により不良のことが多い。


2.血栓性静脈炎・静脈血栓症

【概説】
静脈系血栓症には血栓性静脈炎と深部静脈血栓症があります。前者は静脈に炎症が生じて血栓が形成され閉塞されます。後者は血流や血液性状の変化により静脈内に血栓が生じ閉塞されます。

【診断】
自覚症状:下肢の腫脹、疼痛、夜間の筋痙攣を生じます。長時間の立位は症状を悪化させます。

【予後】
肺塞栓を生ずると不良です。


血管痙攣性疾患

1.レイノー(Raynaud)症候群

【概説】
指や趾の動脈の発作性痙攣によって一過性に乏血が起こる疾患をいいます。若い女性に多い。病因は局所の外傷、神経性障害、中毒、膠原病などです。

【診断】
自覚症状:左右手指の蒼白、チアノーゼ、知覚障害が突然発生します。とくに寒冷時に生じやすい。ときに指、趾の肥厚を生じます。まれに指、趾の潰瘍形成をみます。

【治療】
内科的療法:血管拡張剤、交感神経中枢抑制剤が用いられます。

外科的療法:血管拡張のため交感神経切除術を行います。

【予後】
原因疾患、とくに膠原病に起因する場合はよくありません。

レイノー病の指先容積脈波のイラスト