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神経・筋の系統疾患

1.脳性小児麻痺(CP)

脳性麻痺は本来病名ではなく、脳発達障害児の運動障害に対する総称です。

原因

  1. 胎児期から出産直後までのあいだに生じた脳の非進行性障害によるもので、永続麻痺を残します。
  2. 出産時の仮死分娩がもっとも多く、新生児の核黄疸によるものは約10%といわれています。
  3. 患児の3割以上は出産時の体重が2500㎏以下の低出生体重児で脳の無酸素症や出産時の頭部外傷などが考えられています。

分類

    病型として痙直型、アテトーゼ型、失調型、強剛型などがあります。
  1. 痙直型 spastic:もっとも多い。大脳運動野の錐体路系障害が主体であるが、知覚障害を伴うこともあります。また、てんかんの合併もみられる。知覚障害の程度は運動障害に比例します。

  2. アテトーデ型 athetoid type:痙直型に次いで多い。大脳基底核障害による。知能低下はない。顔面、頸部、四肢の不随意無制御運動を特徴とします。

  3. 失調型 ataxic type:小脳障害により筋の共同動作が障害され、運動失調を生じます。

治療

  1. 早期発見、早期訓練が必要です。(神経生理学アプローチによるボバースBobath法、ボイタVojata法などがあります。)
  2. 整形外科的治療法として腱延長術(膝屈筋腱、アキレス腱など)や腱移行術、装具療法なども行います。

2.脊髄性小児麻痺(ポリオ)Heine-Medin病)

  1. ポリオウイルスにより脊髄前柱(前角)細胞がおかされる。
  2. 障害部の弛緩性麻痺を生じます。筋肉は萎縮し、腱反射は消失します。
  3. 知覚異常はありません。

3.進行性筋ジストロフィー

  1. 遺伝性に筋の進行性変性をきたす疾患です。
  2. Duchenne型(重症型)はもっとも代表的なものです。
    1. 伴性劣性遺伝で、男性にのみ出現します。小児期に発症し、20歳頃までに死亡することが多い。
    2. 腰部筋、次いで肩甲部筋の委縮、登攀性起立(Gowers徴候)、腓腹筋・ヒラメ筋の仮性肥大(脂肪組織の増加)などがみられます。
    3. 血清CPK値の著明な増加がみられます。

*登攀性起立(Gowers徴候):下肢近位筋の筋力低下があるために、立ち上がる際に大腿に手を当てて、ずり上がるように起立する。


4.神経性進行性筋萎縮症(Charcot-Marie-Tooth病)

  1. 常染色体優性または劣性遺伝で、末梢神経とくに腓骨神経の変性が生じます。末期には脊髄もおかされる。
  2. 5~15歳で発病し、男性に多い。
  3. 筋委縮は下肢に初発します。腓骨神経領域からはじまることが多く、下垂足跛行を呈します。後期には上肢まで筋委縮が及びます。下肢変形、脊椎変形がみられます。
  4. 進行の遅い症例では、腓骨神経麻痺に対し、腱移行術が行われます。

5.脊髄空洞症

  1. 脊髄中心管の拡大がみられます。
  2. 下部頚髄、次いで上部胸髄に多い。
  3. 脊髄灰白質が強くおかされるので、解離性知覚麻痺(温痛覚の麻痺)が特徴的です。
  4. 20~30歳に発症するものが多い。
  5. 脊柱側弯症神経病性関節破壊(シャルコー関節)がみられることがあります。
  6. *シャルコー関節(Charcot joint):痛覚・深部関節などが侵された関節に、無軌道に破壊と増殖が混在する退行性疾患。


6.脊髄癆

  1. 梅毒による脊髄後根および後索の変性病で、通常感染後10~15年して発生します。近年は極めてまれです。
  2. 神経痛様疼痛、腱反射消失、瞳孔反射消失や、知覚障害がみられます。
  3. 神経病性関節症(Charcot joint)を併発することがあります。

7.筋委縮性側索硬化症(ALS)

  1. 病理:錐体路、脊髄前角細胞、脳幹運動細胞の変性。
  2. 20歳以上の発症が多い。進行性。発病後2~3年で死亡。男性に多い。
  3. 四肢筋委縮、運動麻痺(錐体路系)、球麻痺を呈します。腱反射は初期には亢進し、筋委縮が進めば低下します。膀胱直腸障害、知覚障害はありません

8.脊髄腫瘍

  1. 脊柱管内の発生部位から髄内腫瘍髄外硬膜内腫瘍および硬膜外腫瘍に分けられます。髄外硬膜内に発生する神経鞘腫が多い。
  2. 症状:疼痛、放散痛、神経麻痺。
  3. 脊髄造影は有力な診断法です。
  4. 良性の髄外硬膜内腫瘍は摘出によりよく治癒する。髄内腫瘍を治癒させることはむずかしい。

9.脊髄損傷(脊損)

病因

  1. 脊椎の圧迫骨折、脱臼や、脱臼骨折に合併することが多い。
  2. X線写真上骨傷がみられない場合もしばしばあります。この場合、急激な屈伸による脊髄の過伸展、脊柱管壁での挫傷などで起こります。
  3. これらの脊柱の外傷のほか、脊椎・脊髄腫瘍(癌転移が最多)、脊椎カリエスなど種々の疾患に合併することもあります。

分類

麻痺の程度により不全麻痺と完全麻痺に大別されます。完全麻痺の場合には回復はむずかしい。

症状(外傷によるもの)

1.全身症状
  1. 頚髄損傷では体温調節中枢の障害で40℃をこす高熱を出すことがあり、この場合は予後がわるい。
  2. 第4頚髄以上の損傷では横隔膜麻痺のため、呼吸不能になり致命的です。
  3. 頚髄や上位胸髄損傷では肋間筋麻痺が起こり、胸部が動かなくなり、横隔膜呼吸になります。
  4. 頚髄損傷(頚損)では麻痺部以下で発汗不能となります。
2.局所症状
  1. 受傷直後は出血や浮腫などのために、損傷高位より2~3髄節上位までの麻痺症状が出現することが多い。
  2. 運動麻痺
    1. 受傷直後は損傷髄節以下の弛緩性麻痺が起こり、反射もすべていったんは消失し、膀胱麻痺がおこります(脊髄性ショック)。
    2. 受傷後24時間から3カ月くらいのあいだに脊髄性ショックは漸次回復し、損傷髄節高位の弛緩性麻痺と、それより下位髄節の痙性麻痺が起こります。
    3. 第1、2腰椎の損傷では脊髄円錐や馬尾神経の損傷が起こり、弛緩性麻痺に終始します。
  3. *弛緩性麻痺:下位ニューロンの障害では,その支配領域に筋トーヌスの低下を伴う弛緩性麻痺をきたし,深部反射は減弱ないし消失し筋萎縮を伴う。

    *痙性麻痺:痙性麻痺は,麻痺に陥った骨格筋の緊張が高まり,つっぱった状態になるもので,深部腱反射の亢進を伴い,上位運動ニューロンの障害によって生ずる。

  4. 知覚麻痺:損傷髄節以下に知覚脱失が起こります。触覚、痛覚、温度覚、深部覚などすべて同一領野でおかされ、左右もほぼ対称的です。ときには麻痺領域ことに下肢に有痛性知覚脱失が現れ、激烈な痛みがあって患者を苦しめます。

  5. 排尿障害:受傷直後より尿意の消失とともに尿閉に陥ります。ある期間尿閉が続いてから失禁に移行します。脊髄性ショックから回復し排尿筋の収縮が起こるようになると、自律性膀胱となり、一定の尿圧に反応して反射性に多少とも排尿可能となってきます。さらに仙髄排尿反射弓が健在ならば、自律性膀胱から自動性膀胱となります。

  6. 急性中心性頸髄損傷(Schneider型):頚髄損傷の特殊な型として、上肢に強く下肢に弱い運動麻痺が出現し、尿閉を主とする膀胱麻痺、障害部以下のいろいろな程度の知覚障害が現れます。頸椎の脱臼骨折を伴わない頚髄損傷にときにみられ、頚髄の中心部に主な障害があると考えられています。

合併症

  1. 褥瘡decubitus:知覚脱失、筋緊張の低下、皮膚の血液やリンパ液の循環障害などのため、仙骨、大転子、踵部のような骨突出部に生じやすい。これらの骨突出部における圧迫を避け、皮膚を清潔にし、頻回の体位変換を行います(回転ベッドを使用し、2時間ごとに体位変換)。

  2. 尿路感染:排尿障害の治療に続発し、結石を作り、腎機能低下をきたします。

  3. 異所性骨化:麻痺域の大関節周辺、とくに股、膝関節にみられることが多い。一度できると関節の動きがほとんど消失し、時期を待って手術的切除が必要になります。

治療

  1. 初期治療で全身管理もっとも重要なものは呼吸管理です。
  2. 脊椎の不安定性が存在する場合には固定をはかります(頭蓋牽引、halo牽引、脊椎固定術など)。
  3. 合併症の予防と尿路感染、褥瘡、関節拘縮の予防のための処置を永続的に行います。
  4. 急性期が過ぎれば積極的なリハビリテーションを開始します。