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運動器の基礎知識

1.骨の基礎知識

  1. 骨組織
  2.   骨組織は胎生7週頃に出現します。

  3. 軟骨性骨化と線維性骨化
    1. 前者は軟骨が最初にできて、これが変性、石灰化したのちに、ここに運ばれてきた骨芽細胞が作る骨化であり、長骨、短骨の長径成長がこれに属します。
    2. 後者は結合織細胞が直接、骨芽細胞に変わって生じる骨化で、頭蓋骨、顔面骨のほか、扁平骨の大部分はこの様式で骨が作られます。

  4. 長骨の区分
  5.   骨端、骨幹端、骨幹、骨端軟骨よりなります。骨の表面は骨膜でおおわれています。

  6. 長骨の発育
    1. 間葉細胞から分化した未分化軟骨細胞が集まって、骨の形を作り、周囲は軟骨膜でおおわれます。
    2. 一次性骨化中心:やがて中心部の軟骨細胞は肥大、変性に陥り、この時期に血管が軟骨膜を貫いて変性軟骨内に入り、ここに骨髄を伴った骨を形成します。これを一次性骨化中心といいます。
    3. 二次性骨化中心:やがて骨端部にも血管が侵入し、同じように骨組織が形成されます。これを二次性骨化中心といいます。
    4. 骨端軟骨:一次性骨化中心は次第に上下に成長し、軟骨は骨に置換されて次第に少なくなります。一次性骨化中心と二次性骨化中心にはさまれた軟骨層を骨端軟骨または骨端線といいます。
    5. 管状骨の長径成長は骨端軟骨で行われ、横径成長は骨膜で行われます。骨膜の深層にある胚芽層の未分化結合織細胞が骨芽細胞に変わり、骨膜性骨化します。

  7. 骨折の仮骨
  8.   骨折の仮骨では線維性骨化と軟骨性骨化の両者がみられます。

  9. 骨端軟骨および骨幹端における骨の形成
  10.   増殖層で骨端軟骨細胞が分裂増殖して増殖層細胞が縦に並び、次第に肥大して(肥大層)、変性を起こし、周囲に石灰化が生じます(石灰化層)。次いで骨幹端から毛細管が侵入して石灰化層を融解し、同時に骨芽細胞が一次性海綿骨を作ります。この骨は破骨細胞によって吸収され、新たに二次性海綿骨ができます。これが成熟した海綿骨です。

  11. 骨の生化学
    1. 骨の有機成分(骨基質)の大部分はコラゲン線維です。トロポコラゲンtropocollagen(3本のポリペプチド鎖がらせん状に配列する)が骨芽細胞で生成され、細胞外で重合して640Åごとに規則正しい帯状構造をもつ膠原線維をつくります。
    2. 膠原線維のうえにヒドロキシアパタイトhydroxyapatiteの結晶が形成され骨ができます。しかし、無構造リン酸カルシウムも40%存在します。

  12. 骨の解剖(構造)
    1. 骨膜、骨皮質、海綿骨、骨髄組織からなります。
    2. 関節構成部分、すなわち関節包の付着部より末端では関節軟骨が骨の表面をおおい、骨膜は存在しません。
    3. 骨皮質の組織像:中心に骨は栄養する血管を入れたHavers管があり、これを取り囲んで層板状構造をもった骨オステオンosteonがあります。骨皮質には、ほかに小血管(Volkmann管)があり、Havers管と連絡します。
    4. オステオンの同心円の軌道上に骨小腔が点在し、この中に1個ずつ骨細胞があり、これらの細胞は多数の骨細管と呼ばれる突起を介して、隣接する骨細胞と互いに結合しています。
  13. 骨の解剖のイラスト

  14. 成熟骨の代謝と血行
    1. 正常な骨では破骨細胞による骨の吸収と、骨芽細胞による骨形成はバランスを保って絶えず行われています。
    2. 海綿骨の栄養は骨幹から骨髄に入る栄養血管によります。
    3. 骨皮質は外側1/3は骨膜の血管により、内側2/3は骨髄からの血流で栄養されます。

骨の内部イラスト

2.関節の基礎知識

  1. 関節の種類
    1. 不動関節:まったく動かない骨の接合、頭蓋骨の縫合など、骨性接合。
    2. 半関節:少々動く関節。線維性接合。
      1. 靭帯接合:脛腓関節など。
      2. 線維性軟骨結合:恥骨結合、椎間板など。
    3. 可動関節:膝、肘、手指など、大部分の関節がこれに該当します。

  2. 可動関節の構造
    1. 骨端は関節軟骨でおおわれています。
    2. 関節包は膠原繊維に富む線維性関節包と、その内面をおおう骨膜よりなります。
    3. 関節内には少量の関節液(滑液)があります。

  3. 関節軟骨
    1. 関節の表面をおおう厚さ1~3㎜の硝子軟骨です。
    2. 平滑で弾力性があり、関節の運動を滑らかにします。摩擦係数はきわめて小さい(0.002)。
    3. 軟骨の主要構成成分は軟骨細胞、膠原線維、プロテオグリカン、水よりなります。
    4. 軟骨には血管、神経がなく、軟骨細胞の代謝、栄養は、関節液よりの拡散によって行われます。
    5. 膠原線維は、軟骨表面では関節面に平行に、深部では縦に並ぶ不溶性の安定した蛋白で、軟骨に弾力と支持性を与えます。
    6. 軟骨に圧力を加えると水分が関節面に圧出されて、膜を作り、関節の滑動を助けます。

  4. 関節液
    1. 滑膜のB細胞より分泌されるヒアルロン酸と、滑膜より析出する血清中の分子量の小さい蛋白、塩類などが含まれます。
    2. 正常関節液は凝固しません。
    3. ヒアルロン酸は粘性と弾性をもち、軟骨を保護し、関節の滑動を助けます。

  5. 滑膜
    1. 関節の内面をおおう粗な結合組織で、表面は2~3層の滑膜上皮よりなります。
    2. 滑膜上皮は、貪食能をもつA細胞と、ヒアルロン酸を分泌するB細胞よりなります。

  6. 線維性関節包
  7.   関節を包み、固定する。さらに靭帯によって補強されます。

  8. 関節の拘縮、強直、動揺性
  9.   関節の可動域の減少を拘縮、可動域の消失を強直と呼びます。強直には線維性強直と骨性強直があります。腫脹、浮腫、不動、筋力低下、炎症、癒着、瘢痕などにより発生します。関節の可動性が異常に増加したり、安定性が損なわれて異常な可動性を示すものを動揺関節と呼びます。関節の拡張や靭帯損傷により生じます。

  10. 関節の診察
  11.   関節の変形、腫脹、発赤、熱感、圧痛、可動域、滑動時の抵抗、軋音、嵌頓、弾発現象、運動痛、異常可動性などの有無を調べます。

関節の解剖学的イラスト

3.筋の基礎知識

  1. 骨格筋は紡錘形を呈し、その両端は関節をまたいで上下の骨に付着します。多くの筋はその一端が黄白色、すじ状で硬い腱に移行しています。

  2. 発生:筋芽細胞の細胞質が合胞体を作って、多角の筋線維細胞ができます。細胞質の大部分は筋原線維からなり、これは長軸に沿って一定の横紋構造をもちます。

  3. 筋の収縮:筋原線維にはミオシンフィラメントとアクシンフィラメントがあり、この両者がすべりあって筋の収縮が起こります。

  4. 1関節筋と2関節筋:筋の起始部と付着部が上腕筋のように1関節をはさんで付着する場合に1関節筋、上腕二頭筋長頭のように2関節をまたいで付着する場合に2関節筋といいます。

  5. 赤筋と白筋:肉眼的に赤みが強い赤筋と、白みを帯びた白筋があります。ミオグロビンの量による違いであり、赤筋は収縮は遅いが持続性のある収縮を行い、白筋は迅速な収縮をします。ヒラメ筋は赤筋、腓腹筋は白筋に属します。

骨格筋のイラスト

腱の構造と機構のイラスト

筋膜、腱鞘、滑液包、種子骨の機能的意義のイラスト

4.神経系の基礎知識

  1. 脊髄の解剖
    1. 脊髄は成人では、第1~2腰椎の高さで脊髄円錐となり、それ以下は馬尾となります。脊髄は細胞成分を主成分とする灰白質と神経線維を主成分とする白質によりなります。
    2. 脊髄の横断面のイラスト

    3. 脊髄の前・後部から左右に対称的に多数の根糸がでて、前根(運動神経)と後根(知覚神経)を形成、両者が一緒になって脊髄神経となり、椎間孔をでて末梢神経となります。

    4. 運動系の二次ニューロン細胞は脊髄前柱にあります。知覚神経は脊髄の外に脊髄神経節をもちます。

    5. 後頭骨と第1頸椎の間からでている神経節を第1頚神経と呼びます。頚神経は第7頸椎の下からでる第8頚神経まであります。第1胸神経以下は相当する椎骨の下から外へでます。例えば第5腰神経は第5腰椎と第1仙椎からでます。

    6. 脊髄をおおう薄い膜を脊髄軟膜といい、その外側に脊髄くも膜および脊髄硬膜があります。くも膜下には脊髄液が存在します。

  2. 末梢神経の解剖
    1. 末梢神経には神経上膜、神経周膜、神経内膜があり、その中に神経線維があります。

    2. 軸索:神経線維の中心にあり、刺激の伝達や、筋の栄養に重要な役割を果たします。

    3. 髄鞘:有髄神経(運動、知覚神経)では軸索の周囲に髄鞘があります。無髄神経(自律神経)は髄鞘をもちません。

    4. Schwann細胞:神経細胞は外胚葉から発生するが、Schwann細胞は中胚葉由来で、軸索、髄鞘を囲むように存在します。

    5. 軸索が損傷されると、損傷部より末梢の神経は変性に陥る(Weller変性)。その後、損傷部のSchwann細胞が末梢へのびて道を作り、その中に軸索が進入し再生が行われます。再生速度は1日1㎜くらいといわれています。
  3. 末梢神経のイラスト

  4. 神経伝導路
    1. 運動神経伝導路::脳皮質の運動野から出た運動神経線維は延髄下部で反対側へ交叉し、対側の脊髄側索を下行し(錐体路)、前角の二次ニューロンに達します。ここから出る神経線維は前根となって脊髄を出て、後根と合併し末梢神経になり、筋肉に入ります。

    2. 痛覚、温度覚、原始的触覚の伝導路:皮膚からの知覚神経は後根から、ただちに同じレベルの後角にはいり神経細胞に刺激を伝達します。この細胞の神経突起(神経線維)は温痛覚では反対側の外側脊髄視床路を、触覚はやはり反対側の前側索視床路を上行し、視床に達します。

    3. 識別性触覚(二点識別覚など)、深部知覚(位置覚、振動覚など)の伝導路は後根から脊髄に入り、同側の後索を上行して、延髄の後索核に刺激を伝えます。この細胞の線維は反対側の視床に向かいます。

    4. 神経の刺激伝導速度は50~60m/秒であり、太い線維(随意運動神経)ほど速い。

  5. 末梢神経損傷 peripheral nerve injury
    分類:神経損傷ではSeddonの分類が今日なお広く用いられています。

    1. ニューラプラキシア neurapraxia:局在性伝導障害。神経の一部のにみ一過性の脱髄、インパルス伝導不能が生じるが、損傷部以下にWaller変性は起こらず、神経線維は正常にみえるもので、軽い圧迫などにより起こりやすい。放置しても数週のうちに、伝導を失った部位が元どおりになり完全に回復します。

    2. アクソノトメーシス axonotmesis:強い圧迫、挫滅などによって神経線維内部で軸索が断裂し、損傷部以下にWaller変性を生じるが、個々の神経線維を包む神経鞘は連続性を失っていないもの。保存的療法で回復するものが多い。

    3. ニューロトメーシス nuerotmesis:神経離断。開放創に伴って、神経幹自体が離断され連続性を失っているもので、損傷部以下では当然、Waller変性(損傷部より末梢の神経が変性壊死に陥ること)をきたすもの。手術的に修復し、断裂した神経を縫合し、連続性を再建しない限り回復は望めません。